第7話 朝食

 わたくしはエマと共に大広間に行きました。

 そこに行くとご飯のいい匂いがする。


「ライト様、おはようございます」


 彼が座っていたので、挨拶をした。


「あぁ、おはようソニー」

 

 微笑んで答えてくださった。

 それが当たり前ではなかったので、とても嬉しいと思った。


「あら、貴方がソニーさんね?お初にお目にかかります。わたくし、ロイド・ノーツの妻であるアリア・ノーツです。これからよろしくお願いします」


ということは、ライトさんのお母様ですわね。

 昨日はお会い出来ませんでしたからね…


「はい。わたくし、ソニー・アデイールと申します。これからよろしくお願いしますわ」


 わたくしは、アリア様に向かって微笑んだ。


「綺麗な子ね。昨日は用事があってご挨拶できず申し訳なかったわ…どうぞ気軽にお話ししてね」

「はい、アリア様」

「あら、お母様と呼んでも良いのよ?」

「い、いえ。それはまだ…」


 お母様だなんて、恐れ多くて呼べませんわ…

 それに、恥ずかしいですし。

 心の準備ができたら、改めて…


「そう。呼んでくれる日を待ってるわ」


 揶揄うように微笑まれた。

 分かってて言っておられますわね…


「ほら、そこまでにしなさい。食事が冷めてしまうだろう?アリアも、ソニー嬢も早く座りなさい」

「そうね。ほら、ソニーさんも」


 ロイド様とアリア様にそう言われて、わたくしは席に座った。

 全員で手を合わせる。


「いただきます」


 テーブルマナーは一通り教え込まれたけれど、合っているかは不安だわ。

 でも、何も言われないのだから合っているのかしら?


「ソニーさん、美味しい?」

「はい。とても美味しいです」

「そう、良かったわ。うちの料理長の腕は良いのよ」

「そうなのですね。確かにこの味は好きです」


 それとも皆さんと食べているからなのかしら。

 今まで一人で食べていたから…

 って、ダメだわ。ふとした時にあの家でのことを思い出してしまう。

 忘れてしまいたいのに。

 嫌なことほど記憶に残ってしまうのね…


「ソニーさん?」

「いえ、なんでもありませんわ」


手を止めていたから、心配してお声をかけてくださった。

 わたくしは答えたあとに、食べ進めた。


「ごちそうさまでした」


 再び手を合わせてそう言った。


「お口に合ったようでなによりだ」

「そうね。ねぇソニーさん、貴方これから予定はあるかしら?」

「えっと、今からお菓子を作る予定で…」

「あら、そうなの⁈もしかして、ライトに頼まれたの?」

「そうです。けれど、自分の意思で引き受けたので、大丈夫ですわ」


 ライトさんに頼まれたからには、美味しく作りたいのは、もちろんですけれどね。

 それに、エマと作るのですから楽しみに決まってますわ。


「良いわねぇ。わたくしも食べてみたいわ」

「それでしたら、多めに作ってアリア様にもお渡しさせていただきますわ。もちろんロイド様の分も」

「本当?ありがとう」

「いえ、これからお世話になりますから」


 わたくしはそう言った。

 エマと作るのだし、多めに作っても問題はないはず。

 お世話になるお礼としては、物足りないかもしれないですが楽しみにしてくださっているのですから、精一杯頑張りますわ!

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