第2話 どこが冷たいんですの?

「では、ソニー嬢。改めてお聞きします。

 我がノーツ家の長男、ライト・ノーツとご婚約していただけますか?」

「えぇ、もちろんですわ」


 わたくしはにっこりと微笑んだ。

 この縁談を受けなければ、わたくしにはもう帰る家がございませんもの。


「これはなんと嬉しいことか…我が息子は婚約をしようとすると、断られてしまうことが多くてですなぁ」

「そのようなお話は聞いておりますが、気にしませんわ」

「ありがたきお言葉。ほれ、ライトもご挨拶しなさい」


 そう言われたライト様が立ち、わたくしを見られました。


「先程も名乗ったが、私はライトだ。

 よければ呼び捨てで呼んでくれ」

「では、ライトさんとお呼びさせていただきますわ。わたくしのこともソニーでかまいませんので」

「あぁ、ソニー。これからよろしく頼む」


 彼は微笑まれた。

 美形なのでとても似合いますわね…

 思わずドキッとしましたわ。


「では、私は去りますので、あとはお二人でごゆっくりと」


 そう言われノーツ家の当主様が出ていかれました。

 どうしましょう…


「ソニー」

「はい、どうされましたか?」

「とりあえず、座らないか。立っているのも疲れただろう?」


 彼はこの部屋に置いてあるソファーを見ながら言う。


「はい、お気遣いありがとうございます」


 わたくしはソファーに腰掛けた。

 彼もわたくしの反対側にあるソファーに腰掛けた。


 すると、侍女が入ってきた。


「失礼いたします。紅茶をお持ちいたしました」


 わたくし達のテーブルの前に置かれた。


「ありがとう」


 そのあと、侍女は去って行きました。

 前を向くと、彼が驚いた顔をしていた。


「どうされたのですか?」

「いや、君は侍女にもお礼を言うのだな」


 この方は言っている方を見たことがないのでしょうか?


「?えぇ、わたくしはそれが当たり前だと思っているので」


 彼は微笑んだ。


「ふっ、そうか。君は優しいんだな」


 優しい?そんなこと初めて言われましたわ。

 嬉しいですわね…

 今まで無視されることが多かったですから、こうやって誰かと話すのは楽しいですわ。


「ライトさんは随分噂とは違いますのね」

「噂、か。その話は私の耳にも入っている。私は自分では分からないが容姿が良いらしくてな、顔だけを見た女性が寄ってくるのだ。だが、顔だけではなく内面も見てほしい。だからわざと冷たくあたっているんだ」


 そんな理由が…

 やはり噂だけで判断してはいけませんでしたわ。


「安心してください。わたくしは、少ししかお話ししていませんが、貴方が本当はお優しいのだということがわかった気がしますわ」

「ありがとう。君になら、私は本音で話せそうだ」

「こちらこそ、ですわ」


 わたくしは笑った。

 いつもの微笑みではなく、自分がしたいと思ったから。

 わたくしも彼になら本音で話すことができるのではと思ったから。


 少しずつでも彼とお互いのことを話せていけたら良いですわね。

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