5つ目
「そこでここにいるみんなにちょっとお願いがあるの。」
蓮の代わりに藍花が言った。周りの人たちは視線を蓮から藍花に移した。
「お願いってなんだ?」
慎一が聞いた。蓮の親友である陸や、蓮の命の恩人ともいえるような存在の原嶋は涙を流していた。小さいころに家が近所ということもあってよく遊んでいた徹はただ茫然としていた。今この場で冷静かつ必要最低限の質問が出来る人物は慎一のみだった。彼も自分自身でそれを察していて、自ら聞きにいった。
「とある女の子が僕の絵が好きだと言ってくれたんだ。ずいぶんと昔の話だけどね。でもその一言で僕は救われたんだ。『ああ、僕の絵でも好きでいてくれる人がいるんだ。僕は絵を描いてもいいんだ。』って思えたんだ。美術の楽しさを教えてくれたのは原嶋先生だけど、その女の子は僕に美術をやる権利を与えてくれたんだ。その子に僕は恩返しをしたい。僕なりのやり方でね。」
今度は蓮が答えた。少し落ち着いたようだった。
「具体的に俺たちは何をやればいいんだ?」
慎一が再度代表して聞いた。依然として陸と原嶋は泣いていた。徹はその時にはもう我に返っていたが、彼の経験から、ここは慎一に任せた方がいいと知っていたため、何も言わずに聞くことにした。
「僕の作品の一部を持っていてほしい。」
藍花を含んだその場にいた全員が驚きの声を上げた。
〝作品の一部を持っていてほしい。〟
この言葉の意味を一瞬では理解できなかったからだ。
「作品の一部を持っていてほしいってどういうこと。しかも作品じゃなくて作品の〝一部〟って。もしかしてできた作品を壊して持っておくってこと?」
驚きすぎてそれまで冷静に行動していた藍花が聴いた。
「少し違う。でも半分くらいあってる。」
ますます一同の疑問は深まった。その疑問を晴らすために、蓮は説明する。
「さっきも言ったけど、僕の病気はもう末期まで進行していて、いつ死ぬのか正直わからない。美術を続けたいけど、もしかしたら卒業できないかもしれない。もしかしたら三年生になる前に死ぬかもね。だから僕は残された時間を使ってパズルを作る。そのピースを一つずつみんなに持っていてもらいたいんだ。」
やっと言っていることが理解できた。だが、そんなことをして何になるというのだろうか。その疑問に耐えきれなくなって泣いていた陸が聴いた。
「それがどうしてその女の子のためになるんだ?蓮の絵が好きならばピースをわざわざ俺たちが持っていない方がいいんじゃないのか?」
「きっとその子はピースを探してくれると思うんだ。だからピースを求めて来たときに僕がどんな人物だったかとか、彼女のおかげで僕がどれだけ救われたかを話してほしいんだ。きっともう彼女に会うことはできないから。」
「ふざけんな。」
陸が声を出した。その声は悲しみでではなく、何か燃え盛るような感情によって震えていた。
「ふざけんなよ。きっともう彼女に会うことはできない?どうしてまだ生きているのに死ぬことを想定しているんだよ。父親を警察に突き出して治療を受ければお前は助かるかもしれないだろう?たとえその可能性が一パーセント未満だとしても、お前はその可能性に掛けてみるべきじゃないのか?文字通り命がけでよ。」
陸は感情に任せて言った。感情に任せて口を動かし、行動していた。気づけば蓮の胸倉をつかんでいた。蓮の胸倉から手を離すように周りは止めたが、陸の言葉を止めようとすることは言わなかった。蓮も何も言わずにただ聞いていた。何も考えずに聞いているのではなく、言葉一つ一つをちゃんと飲み込んで脳で処理するように聞いていた。
「どうして最初から生きることを諦めているんだよ!」
陸は最後にそう言った。怒鳴るように言った。心の底からの叫び声だった。
周りが離すように促しても離さなかった手を、ゆっくりと離した。陸が蓮から手を離した時に、蓮はうつむきながら口を開いた。
「そうだよね。確かに僕はもう生きるのを諦めていたよ。それも結構前の段階でね。陸の言う通りだ。」
そう言って蓮は顔を上げた。
「でもね。もうわかるんだ。自分が死ぬことくらい。これで死ぬってわかるんだよ。そう思っているんじゃなくて。わかるんだ。」
蓮の顔は希望に満ちているようなものではなく、目の前にある絶望を受け止めることしかできない悔しさを孕んだような顔だった。
陸はすべてを察した。だが人間というのは頭ではわかっていても、感情が付いて来てくれないという生き物だ。
「俺は認めない。」
認めざるを得ないことはわかっていた。それでも認めたくなかった。認めないとしても何も変わらないというのは知っていた。
「俺はお前が死んだときのための願いなんてのは聞かない!」
そう言って陸は美術室から走り出した。
「山内君!」
とっさに藍花が陸の後をついていった。
場は修羅場と化していた。一人は死を受け入れ、一人は自分の大切な教え子がもう死ぬと知り、他は自分の友人が死ぬと知った。そのうちの一人は何も知らなかったのにいきなりその情報を知って混乱し、一人は友人の死を受け容れず、一人はそれをなだめるためについてった。
その修羅場で一人の人間が声を放った。
「それで、蓮が恩返ししたい女の子の名前は何なの?」
蓮はゆっくりと言う。
「藤崎千尋」
「山内君。」
陸は美術室から走って校舎から外につながる扉の前にいた。その扉は掃除のときにしか使われないため、人が寄り付かないということを陸は知っていた。
陸は扉の前で体育座りをして泣いていた。
藍花はかける言葉が見つからなかったが、ひとまず彼の名前を呼んだ。
「情けないな、俺。本当はあいつが一番辛いってこと嫌でもわかっているのに。頭ではわかっているのに、感情が、心が付いて来てくれない。感情に任せちまって行動して。あいつにあんな顔させちまった。」
泣いている顔を腕で隠すようにしていた。藍花は陸の隣に座り、黙って聞くことにした。
「自分が死ぬってわかっている人間に生きるのを諦めるなよなんて残酷なことを言っちまった。一番本人が諦めたくないはずなのにな。なんて無責任なことを言ってるんだろうな。」
嗚咽が垂れ流れる。止めようとしても湧き出る。
「俺、あいつにどんだけ謝っても謝りきれないことをしちゃった。」
遠くから子ども遊ぶ声が聞こえる。誰かが泣いていても誰かは笑っている。所詮世界なんてものはそんなものだ。
「謝って済ませるのがおかしいのよ。」
藍花が口を開いた。できるだけ優しい口調で言った。
「どうして謝れば罪は消えることになるの?その罪を犯したという現実は消えやしない。謝って罪が消えたって思うよりも、謝らずに自分の罪を背負う方がよっぽどいい。もちろん一番いいのは謝ったうえで自分の罪を背負うことだけどね。」
外は夕日がもう沈みかけていた。太陽がなくなりそうな世界は寒く感じた。藍花は寒さを覚えて腕をこするように撫でる。
「それに死ぬ人間の心なんてものは死ぬ人間にしかわからない。いくら考えたところでそれは生きている、生きていく人間の心なんだよ。死ぬ人間の心をこれからも生きていく人間がわかるはずがない。想像したところで無駄。」
その言葉を言っているうちに夕日は沈みきった。世界が一瞬で暗くなった。
「私ってば慰めるの下手だね。ごめんね。」
藍花は微笑んだ。その微笑みはいつものよりも下手な微笑みだった。ぎこちないような照れているような。
「いや、変に『元気出して』とか生臭い言葉をかけられるよりはましだよ。ありがとう。」
「藤崎千尋」
その名前を聞いて徹は驚いた。自分の妹だったからだ。
「徹。君の妹に僕は救われたんだ。君の身内だから君が大きな役割を果たす可能性が極めて高い。面倒なことも任せてしまうかもしれないけど、それでも引き受けてくれるかい?」
「ここまで来たら何でもやってやるよ。」
徹は覚悟した。どれだけ面倒な役回りだとしても、やってやると。
「でも、俺の妹なら今すぐにでも会えるけど、どうしてもう会えないと思ったんだ?」
「なんか会っちゃいけない気がするんだ。会ったら何か嫌なことが起きる気がする。」
「それは蓮の思い込みじゃないのか?」
「だといいんだけどね。何であれ僕はもう千尋ちゃんに会う気はないよ。」
*
「そのあとどうなったの?」
「蓮は千尋には会わないと言っていた。でも、結果的に千尋に一回だけ会うんだ。千尋は覚えていないだろうけどな。」
兄の言う通り覚えていなかった。
私が小野蓮に会ったことがある?どこで出会ったのだろうか。
「どうして私は覚えていないの?」
兄は衝撃の事実を言った。
「千尋。お前が事故にあったからだ。」
*
蓮が友人に頼み事をしてから数日が経った。
ある日蓮は徹に呼び出された。
「千尋が事故に遭った。」
そう言った時、蓮はひどく取り乱した。
「いつ?どうして?何があったの?千尋ちゃんは無事なの?」
蓮は無意識に徹の肩を力強くつかんでいた。ふと我に返り、ごめんと言って肩から手を離す。
「昨日の夕方。友達と遊びに行った帰りに乗用車にはねられた。幸い一命は取り留めたらしいけど、まだ意識が戻ってない。」
そう言った瞬間、蓮はかなり安心したようだった。
「よかった。生きてはいるんだね。」
「ああ。でもまだ意識が戻ってないんだ。もし蓮さえよければ近いうちに見に来ないか?たぶん蓮のことだから千尋の様子を見たいだろうし。それに、意識がない状態だったら、久しぶりに会って蓮のことを覚えてないって言われることもないと思うぞ。」
「うん。じゃあ、明日にでもお見舞いに行くよ。それにしてもよくわかったね。僕が何を恐れていたのか。」
「ああ。蓮は忘れられているのが怖いんだろう?美術をやる権利を与えてくれた人が自分を忘れていたことによって美術が出来なくなることを恐れているんだろう?」
「うん。そうだよ。それと単純に忘れられるのが嫌なんだ。」
次の日、ちょうど土曜日ということもあって、徹と蓮は千尋が入院している病院に行った。
「藤崎千尋の兄です。」
ナースステーションで徹がそう言った。
「そちらの男性はどのような関係ですか?」
そういって看護師は蓮の方を見た。
「彼も千尋の兄です。僕たち年子なんですよ。あまり似ていないって言われるんですけどね。」
そう言うと看護師はわかりましたと言った。
「ではこちらに必要事項をお書きください。」
そう言って看護師は紙を二枚渡してきた。そこには名前や住所、連絡先を記入する欄があった。
蓮がどうしようかと戸惑っていると、徹が真っ先に自分の分を書き始めた。蓮も少し遅れて書きだした。名前を藤崎蓮と書き、住所と連絡先を徹の書いているものと同じものにする。
「お願いします。」
徹と蓮は紙を看護師に渡した。
「ありがとうございます。それではこの面会証を首にかけてアルコール消毒をしてからご家族のところに行ってください。」
蓮と徹は面会証と書かれた紙が付いている紐を首にかけた。次にアルコールを手のひらにのせ、手全体に塗り広げた。
徹についていくようにして蓮は歩いた。
「あそこで家族じゃないとわかると、面会させてもらえないんだ。だからとっさに嘘をつかせてもらったよ。」
蓮は何も言わずに黙って聞いていた。
藤崎千尋と書かれた札が貼ってある部屋に入った。
「千尋。入るぞ。」
返事はないが、徹は扉を開けた。
扉の向こうにはベッドの上で目をつぶって横になっている千尋がいた。スースーという音とともに体を小さく動かしている。呼吸器に繋がれてはいたが、呼吸は安定しているようだった。
徹と蓮は千尋の横に行って、静かに見ていた。
しばらくした後、徹が口を開いた。
「もし意識を取り戻して、何らかの記憶障害があった場合。記憶喪失で千尋が蓮のことを覚えていなくても、お前は美術をやる権利を持ったままだぞ。これだけは言える。」
蓮は何も言わなかった。何も言えなかった。目の前に広がる光景を、ただ受け容れるしかないと思った。
「不思議だよね。僕、自分が死ぬのは平気なのに、大切な誰かが死ぬのは耐えられない。死ぬというわけではなくても、辛そうにしているのを見るのだけでも耐えられない。」
「それが普通だよ。大切な誰かが死ぬと自分は残される。それを思い込んだら寂しくて苦しいと感じるんだ。だったらいっそのこと自分が先に死んだ方がいいと思う。一見他人のことを思っているようで、本当は自分のことを思っている。不思議なことにそれが美しいと思われるんだ。こう言っている俺自身もどうしてもそれを美徳だと考えてしまう。」
再び沈黙が生まれた。太陽はその勤めを終えて帰ろうとしていた。まだ夕日があるころに徹が口を開いた。
「俺はトイレに行ってくる。この病院は広いから迷子になるかもな。もしかしたら五分くらいは帰ってこないかもしれない。」
そう言って徹は病室を出た。廊下に足音が響いているのが聞こえる。
廊下から足音が消えたころになって蓮は行動を起こした。
「久しぶりだね。千尋ちゃん。覚えているかな?もしかしたら覚えてないかもね。最後に会ったのはもう何年も前だからね。」
小さな声でそれでも聞こえる声で言った。
「いろんなことをしたよね。花で冠を作ったり、一緒に花を見たり。それと、よく丘の上に行ったよね。覚えてる?丘の上には一本の木があって、その下でよく僕は絵を描いていたんだ。あるときに千尋ちゃんは僕の絵を好きだと言ってくれた。それが僕にとってとても心の支えになっていたんだ。僕の絵を好きでいてくれる人がいる。僕は絵を描いていてもいいんだって思えたんだ。」
聞こえていないとわかっていても言葉を続ける。
「ほかにも嬉しかったことはたくさんあるよ。千尋ちゃんは僕の話をよく聞いていてくれた。純粋な眼差しでね。それが嬉しくて僕はいろんなことを千尋ちゃんに教えた。花の冠の作り方もそうだけど、ワスレナグサの悲しいお話とか、ネリネとリコリスの花言葉とか。もう忘れちゃったかな。忘れちゃったかもね。」
外は夕日がもう完全に沈み切っていて、世界を暗くした。
「今は忘れていてもいいよ。でもいつか必ず思い出してほしいな。」
蓮は持っていた鞄の中から封筒を取り出した。その封筒を千尋の手に握らせた。
「この中にパズルのピースが入っている。でももしかしたら千尋ちゃんは何かと思って捨てちゃうかもしれないからね。端っこに穴をあけてストラップにしたよ。捨てないで鞄とかに付けてほしいな。千尋ちゃんが十六歳になる前に、きっと君のお兄さんからパズルをもらうと思うんだ。そのパズルはピースが六つ足りない。それぞれ僕の信頼できる人に預けてあるんだ。千尋ちゃんはその人たちに会ってピースを受け取ってほしい。そしてパズルを完成させてほしいんだ。それが僕からの最後のプレゼント。受け取ってくれるかな。」
千尋の手に封筒を握らせ、両手で千尋の手を握りながら言った。
「それとあの時の返事もまだしてなかったね。」
蓮は顔を千尋の耳に近づけた。遠くの方から足音が聞こえた。徹が戻ってきたらしい。
蓮は返事をするのを諦めて代わりに千尋の額にキスをした。
「ごめんね」
そういって顔を離した。ちょうどその時に病室の扉が開いた。
「もう行くか?」
蓮は徹の方を向き、うん、と短く言った。
*
兄はわざと五分病室からいなくなると言った。小野蓮が私に伝えたいことがあると知っていたからだ。さらに彼が伝えやすいように遠くに行ったように見せかけるために足音も作った。私の病室の前を通りかかった人に少し大きく足音をたてて行き、五分後くらいにここに来るようにと頼んだのだ。
「どうしてお兄ちゃんはその場に残って小野蓮が伝えたかったことを聞いたの?」
もし本当に小野蓮に伝えたいことを伝えさせるためだけに病室から出たのなら、病室のすぐそばに居なくてもよかったのではないのだろうか。
私は兄の性格を知っている。兄は時間を無駄にすることが嫌いだ。そのため兄が何の理由もなしにただ病室のすぐ近くで待っていたとは思えない。兄ならば他の場所に行って──例えば自販機に行って何かを飲んだりとか──時間をつぶすはずだ。それなのにそうしなかった。
「俺には蓮から頼まれたことがあるから。」
兄はただそう言った。
「もしかして小野蓮がどういう人物なのかを私に言う役目?」
兄は頭を横に振った。
「それも役目の一つだが、それは俺だけじゃなく俺を含んだ五人の役目だ。蓮は俺に他の人には頼んでいないことを頼んできた。」
*
陽が沈み切って真っ暗な道を蓮と徹は歩いていた。別に街すべてが暗いというわけではない。街灯が点いていて明るい道だってあった。でも二人はまるで暗黙の了解のように人気がなく暗い道を選んで歩いていた。
「ちゃんと伝えられたか?」
徹が二人の間に会った沈黙を破って言った。
「伝えられてはいないけど、言えたよ。半分だけ。」
静かな夜の中に二人の足音だけが響く。道の先から街灯が見えた。
「君に一つ謝らないといけないことがある。」
蓮が言った。二人の歩く速さは変わらない。徹が蓮の方を見た。
「なんだ?」
蓮は微笑んだ。真っ暗であまり周りの様子はわからないが、蓮が微笑んだのはしっかりと徹にも分かった。
「君の妹にキスをした。もちろん口にではないけどね。額にキスをした。これだけは君に言っとかないとね。」
「どうしてそんなことで謝るんだ?俺は千尋の兄だが、親ではない。だから蓮が俺に謝る必要はないぞ。それにもし謝る必要があったとしても、蓮が俺に言わないとわからないことだぞ。それなのにどうしてわざわざ言ったんだ?」
「それもそうだね。君は僕の話していることを聞いていただけで、見てはいなかったね。」
街灯の横を通る。二人だけが光に照らされた。
徹は目を大きく開いていた。蓮は依然として微笑んだままだった。
「バレていたのか。いつから気づいていた?」
「最初から。廊下に響く足音が一人分だったんだもん。病室の前を通る人の足音は徹が病室を出るときから遠くから聞こえていた。その足音が千尋ちゃんの病室の前で少し止まった。何秒かしてからまた足音が聞こえ始めたけど、その足音は一人分だった。もし徹が本当にトイレに行ったのだとしたら、足音は二人分になるはずだ。」
徹は蓮の観察力に驚いた。
「さすが蓮だな。昔からお前は観察力に優れている。」
「それはどうも。」
再び沈黙が生まれた。二人は家のある方へと歩いて行った。二人が歩く道は街灯がある道へと変化していった。
一定の明るさを保って道は伸びていく。周囲の家々からは夕餉の香りがしていた。香りは目に見えないが、二人に食欲を覚えさせるには十分だった。
二人の腹が食欲をそそる匂いに耐えきれず、同時に鳴る。可笑しな偶然に二人は笑いをこらえきれずに失笑した。
「同時に鳴ったな。」
「あはは。すごい生きているって感じ。」
生きている感じ。蓮はいつまで生きられるのだろうとふと徹は思った。本人は卒業まで生きられるかもわからないと言っていた。となると彼はもしかしたら死ぬ準備を着々と進めているのだろうか。
「徹。どうかした?」
顔に出ていたのだろう。蓮が変化に気づいて徹に声をかけた。少しためらったが、考えた結果、正直に言うことにした。
「いや、この前蓮が卒業するまで生きていられるかわからないって言ってたからさ、蓮はその、覚悟とかが出来ているのかなって思って。」
できるだけ死という言葉を避けて言った。本人に死という現実を突きつけないためだ。
「ごめん。言わなきゃよかったな、こんなこと。言おうか迷ったんだ。でも言わなくても蓮にはバレているかなって思って。でもやっぱり言わない方がよかったな。」
徹は下を向いた。自分がやったことをひどく後悔した。これから死ぬかもしれない人間にこんなことを聞くなんてあまりにも残酷だ。仮にバレていたとしても、それを口に出さなくてもよかった。むしろ口に出すべきではなかった。
「徹は」
蓮が口を開いた。その声には怒りや悲しみは含まれていないように感じられた。
「死ぬのが怖い?」
いきなりの質問に徹は驚いた。
「僕は怖い。」
徹の答えを聞かずに蓮は言った。声はそのままの調子で言葉を紡いでいく。
「僕は死ぬのが怖い。でもそれって当たり前なんだよ。だって死んだ後の世界って未知の世界だもん。そりゃあ怖いよ。でもね、そんな未知の世界に行く人っていうのはみんななんだ。僕もそうだし徹も。僕らが知っている人も知らない人も。みんないつかは死ぬんだよ。だから病気の人が可哀そうとかはないんだ。もしかしたら病気の人は余命宣告されてもそれより長く生きるかもしれない。逆に健康体の人が事故に遭ってあっけなく死ぬかもしれない。生きている限り死は必ず来るんだ。生きるというのは致死率百パーセントなんだよ。」
生きるというのは致死率百パーセント。確かにその通りだ。だがその時の徹には、蓮はそう思い込むことで死というのを受け容れようとしているのではないのだろうかと思えた。
「ねえ、徹。一つ聞いてもいい?」
「なんだ?」
「徹はどうして病室の前で盗み聞きしていたの?いつもの徹なら、本当にトイレに行ったり、自販機でジュースを買って飲むとかしていたはずなのに。」
徹の足が止まった。つられて蓮の足も止まった。蓮が徹よりも若干前にいる状態で徹は口を開いた。
「蓮の本当の気持ちを千尋に知らせるためだ。病室に二人きりにすれば、蓮の気持ちを言うと思ったからだ。この前俺にだけみんなと違う頼みを追加しただろ?」
「千尋ちゃんに僕の気持ちを伝えるってやつ?」
「そう。頼みの内容を聞いた時に何を伝えるのかは聞いたが、それだけが本心だとは思えなかったんだ。だから今日なら心にあること全部を言ってくれると思ったんだ。まあ、結果的に最初からバレていたから意味がなかったのかもしれないがな。」
「意味なくなんてないよ。あの時に僕は本心を言ったんだから。」
蓮は再び足を進めた。徹も蓮に続くようにして歩き出した。
「蓮。お前は千尋のことを自分の妹みたいな存在として好きなのか?それとも…」
そこまで言ったところで蓮の家の前に着いた。
「じゃあ、僕の家に着いたから僕はここで。」
蓮が家に入ろうとしたのを徹が腕をつかんで止める。
「待てよ。質問に答えてくれ。」
徹は真剣なまなざしをしていた。まるで獅子が獲物を狩るときのような目だった。
「蓮。お前は俺の妹を、千尋をどう思っているんだ?ちゃんと答えてくれ。嘘偽り、誤魔化しなしで。」
蓮は徹の目を見た。誤魔化しは本当に効かないと悟ったのだろう。
「好きだよ。」
「どういう好きだ?」
「一人の人間としても。一人の女の子としても。」
蓮は目を細めた。
「本当は僕が千尋ちゃんにちゃんと伝えたかった。でもそれはもう無理なんだろうな。」
蓮は空を見た。空には星があった。徹は蓮の目元がうるんでいるのを見逃さなかった。
「あー。やっぱ怖いな。死ぬのって怖い。未知の世界に行くってのも怖いけど、大好きな人に会えなくなるってのが一番怖い。どうして死ぬときって一人で死ぬんだろうね。どうしてみんな一緒に死ねないんだろう。」
蓮は空から目を離した。
「っていうのをね、昔千尋ちゃんに聞いたんだ。そしたらなんて返ってきたと思う?『一度お別れするから、また会えるんだよ』って言ったんだ。いやあ。子どもってすごいね。僕はそんな風には考えられなかった。でも今はそういう風に考えるように努力しているんだ。」
努力している。つまりそう思えないけど、無理やりにでもそう思おうとしているってことだ。
「蓮。無理に強がらなくていいんだ。弱音を吐いたっていいんだ。泣いたっていいんだ。弱くない人間なんていないんだから。」
蓮は目を大きく開いた。それからにっこりと笑った。
「ありがとう。でも、千尋ちゃんのお兄さんの前では弱いところは見せたくないな~。」
そう言って蓮は家へと入って行った。
*
いくつもの情報が一度に入ってきた。まず兄は小野蓮について知っているということ。それも親密な関係で、兄にしかしてない頼みもあったということ。それと、小野蓮を私は知っているということ。正確には知っているはずだということ。それと小野蓮は私の初恋相手だということ。
どうして小野蓮という名前を聞いても思い出せなかったのか。その理由ははっきりとしている。おそらく私は兄が話していた事故によって記憶を一部なくしているのだろう。事故のことははっきりと覚えている。記憶に損傷があるということも知っている。だが記憶の損傷はあくまで一部にしかすぎず、近所に大好きだったお兄さんがいたというぼんやりとした記憶は残っていた。
「私は事故で記憶をなくしたの?」
「ああ。断片的にな。家族のことは覚えていたが、それ以外は覚えていなかった。でもだんだんと思い出していったんだろう?」
兄の言う通り私はだんだんと思い出していったのだ。ずっと私の想像でしかないと思っていた。だがそれは仮想ではなく現実だったんだ。
答え合わせがされていく。忘れていた記憶を思い出すようにではなく、瞬間的に残っていた記憶が繋ぎ合わされるように。
そう。まるでパズルのように。
それでもまだわからないことがあった。
「どうして今まで近所にお兄さんがいないって嘘をついてきたの?」
これだけがどうしてもわからなかった。本当にいたのなら素直にいたと言えばいいものを、どうして嘘をついていないと言ったのか。それも嘘をついていたのは兄だけではない。私の両親までも嘘をついていたのだ。事故の後に退院してから数日して私は近所のお兄さんついて家族全員に聞いた。その時はみんながそんな人はいなかったと言ったのだ。
「千尋が意識を取り戻した次の日に蓮が死んだからだ。」
兄が真剣な表情で言った。
「え」
私は驚きを隠せなかった。
*
「本当に?千尋ちゃんの意識が戻ったの?」
電話の先で蓮の心から喜ぶ声が聞こえた。本当に千尋のことを大事に思っているのだろう。
「ああ。明日から面会もできるらしい。もし明日蓮が良ければ様子を見に来てやってくれないか?」
「もちろんだよ!明日の一時頃でもいい?」
「ああ。じゃあ、俺は病院の前で待ってるからな。」
蓮はわかった、じゃあねと言って電話を切ろうとした。俺は慌てて伝えなきゃいけないことを伝えようとした。
「あ、待って。千尋の意識は戻ったんだけど、やっぱり頭を強く打ったらしい。そのために脳の記憶をつかさどる器官に損傷があるって医者が言ってた。だからもしかしたら、蓮のことを忘れてるかもしれない。」
「わかった。とりあえず千尋ちゃんに僕のことは内緒にしててもらえるかな?もし僕のことを忘れていた時、僕自身で千尋ちゃんに思い出させたいからさ。」
そうして俺たちは電話を切った。
次の日、俺は一足先に千尋のもとへ行った。千尋は元気そうだった。これなら蓮も安心するだろうな。十二時五十分ごろに俺は飲み物買ってくると言った。千尋は何の疑いも持たずに「行ってらっしゃい」と言った。
病室を出て病院を出る。病院の出入り口で蓮が来るのを待った。
蓮のことだから十二時前には来るだろうなと思っていたが、十二時半になっても蓮は来なかった。
何か用事でもできたのだろうか。でもそうだとしたら連絡をしてくるはずだ。とりあえずこのまま待っていることにした。
蓮が来るのをずっと待っていた。腕時計を見てみると、二時半を指していた。さすがに遅いなと思い、電話をしようと携帯電話を取り出した。その時、救急車のサイレンが聞こえてきた。サイレンが聞こえなくなってから電話をかけようと思った。
サイレンはどんどん近づいてくる。救急車はこの病院で止まった。
嫌な予感がした。試しに蓮に電話をすることにした。三コール目でガチャっと鳴った。
「蓮。お前今どこにいるんだよ。」
「小野蓮さんのお知合いですか?」
はきはきとした物言いの人が蓮の代わりに出てきた。
「小野蓮さんは今救急搬送されています。病院の場所を教えるのでご家族などにご連絡を取っていただけますか?」
そうして聞いた病院はこの病院だった。電話を出た人に家族に連絡してほしいと言われたが、少しためらった。
蓮の父親は連絡したところで、こいつのために仕事を中断してまで病院に駆けつけてくれるのだろうか。そう考えたのだ。
きっと父親は来ない。それに俺は蓮の父親の連絡先を知らない。だったら今やることは一つだ。
俺は蓮の様子を見に行くことにした。
病院に入り、受付の人に場所を聞いた。走ってその場所へと向かう。
蓮がいるという部屋に入ると、いろんな管に繋がれた蓮がいた。
「彼は今非常に危険な状況です。」
話を聞くと蓮は交通事故に巻き込まれたらしい。事故に遭った時に意識を失って倒れたままだったらしい
。
「事故による損傷よりも、彼の持病の肺ガンの方がまずいです。もしかしたら下手すると今日中に蓮さんは…」
「徹…」
蓮が意識を取り戻した。弱弱しく俺の方を向いた。
「蓮!無理するな。」
蓮は左手を上げようとした。身体がもう生きることを諦めているようだった。左手はゆっくりと挙げられていく。俺は蓮の左手を支えるように両手を添えた。
「千尋ちゃんに僕のことは内緒にしておいてほしい。」
蓮はかすれた声で言った。
「どうしてだ?」
「仮に僕のことを忘れていたとしても、思い出した時に僕がもういないって知ると、千尋ちゃんは悲しむだろうからね。」
どんどん声が小さくなっていく。身体のあらゆる器官が機能を停止しようとしている。
「でも、僕のパズルを千尋ちゃんにあげるときにはもうすべてをばらしてしまっていい。」
「わかった。」
そう言うと蓮は儚く微笑んだ。そして力なく左手を落とした。
蓮は笑ったまま、動かなくなった。
*
「蓮に頼まれて俺は嘘をつき続けることをした。母さんや父さん、慎一や原嶋先生にもそのことを言った。」
兄は小野蓮のために、私のためにずっと嘘をついていたのだ。残酷で優しい嘘を。
兄はベッドから立ち上がり、机の引出しをごそごそといじり始めた。そして何かを取り出し、引出しを閉めた。
「これで俺が預かっていた言伝はすべて伝え終わった。あとは千尋。お前がどうするのか決めろ。」
そういって兄は私にパズルのピースを渡した。
原ちゃん。慎一さん。山内陸さん。藍花さん。そして兄。今までで集まったピースは全部で五つだ。小野蓮は六つのピースが足りないと言っていた。だが私は六つ目のありかを知っている。
「もしかしたらピースが足りないかもしれないけど、最後の一つがどこにあるのかはもう知っているんだろう?」
私は頷いた。兄からピースを受け取り、兄の部屋を飛び出ようとした。兄の部屋を出る前にふとあることを思い出した。
「お兄ちゃん。」
「なんだ?」
私は扉の方に向いていた身体を、兄の方へと向き直して聞いた。
「お兄ちゃんが昔からよく歌っていた歌なんだけど、小野蓮、お兄さんに教えたりした?」
すると兄は少し驚いたような顔をした。
「教えたことはないけど、気づいたら鼻歌を歌っていたっていうのは高校生の時にはよくあったからな。もしかしたらそれを聞いていて、知っているっていう可能性はあるかもな。」
階段を駆け下り、玄関に置きっぱなしにしていた鞄を持つ。家のドアを開けて学校へと行く。
全力疾走でするのはこれで今日二回目だ。私は肺を鞭打つように動かし、足を動かす。
口の中で血の味がした。肺が痛い。足が上手く動かない。腕ももう振れない。息が上手くできない。汗が出る。それでも私は走った。途中で躓いて転んでしまった。膝から血が出ていた。それでも私は走り出す。怪我に構っている暇なんてない。
外はもう暗かった。まだ学校は開いているとは思うが、もうすぐ閉まってしまう。一刻も早く学校に行かなければ。
私はひたすら走った。
学校に着いた頃、まだ門は開いていたが部活で学校に残っていた生徒がぞろぞろと帰路についていた。校庭には下校時刻を知らせる音楽が響いている。
帰っている生徒を無視するように私は校舎に入り、廊下を走った。階段を駆け上がり、美術室へと向かう。
美術室の前に着いた時に一度止まって呼吸を整えた。血が体中に巡っている感触が生々しく感じられた。膝に手をついて肩で息をしていた。
呼吸を整えるために肩で息をしているときに、美術室の扉が開いた。出てきたのは浦上先輩と橋本先輩だった。
「千尋ちゃんどうしたの!そんなに息を切らして。」
事情は説明せずに、とりあえず美術室に用があるから美術室の鍵を渡して欲しいと伝えた。息を切らしながら切れ切れな言葉だったが、先輩たちは理解してくれた。
「それじゃあ、美術室の鍵は頼んだよ。何をするのかは知らないけど、あまり遅くならないようにね。学校も閉まっちゃうし、外ももう暗いから女の子一人だと危ないよ。」
私はわかりましたと言って橋本先輩から鍵を受け取った。
美術室に入って、私はパズルを置いている棚の方へと向かった。パズルを棚から取り出して、棚に立てかけるようにした。
私はさっき兄からもらったピースを開いている箇所にはめ込んだ。
*
「うん!お兄ちゃんと一緒にお花の冠を作るの大好き!」
「ほかにもたくさん楽しい遊びはあるよ。」
少年が優しい声で言った。
「でもお花の冠をお兄ちゃんと作るのが好きなの。」
少女の口角が上がる。
「上手にできたらお兄ちゃんが褒めてくれるから。」
少女が無邪気に笑って言った。
「お兄ちゃんはチヒロと遊ぶの好き?」
少女が首をかしげながら言う。無邪気だからこそ聞けること。無邪気で何も恐れないからこそできることを少女はした。少女はその通り無邪気だったのだ。
「好きだよ。」
少年がまた優しく言った。その言葉が嘘だと疑いもせずに少女はキャッキャと喜ぶ。いや、少女は疑うということを知らなかったのだ。だが、少年の言葉を疑う必要もなかった。少年もまた、嘘をつくという概念を持っていなかったのだ。
「やった!」
少女は両手を口元に持っていって言った。
そして少女は両手を自分の口元から少年の耳元へもっていった。
「あのね。お兄ちゃんに私の秘密を教えてあげる。」
いつもよりも少し小さな声、それでもはっきりと聞こえる声で少女は言った。
「あのね、チヒロ、お兄ちゃんの事好き。」
そう言うと少女は恥ずかしそうに、再度口元に両手をもっていった。
少女の心を聞いた少年は驚いた表情をしていた。
「ありがとう。僕も千尋ちゃんのこと好きだよ。」
そういって少年は微笑んだ。微笑んで突然何かを思い出したようにズボンのポケットを漁り始めた。
「千尋ちゃんはお星さま好き?」
「好き!大好き!」
少年はポケットから何かを取り出した。それはヘアピンだった。真っ白なヘアピンでその表面には微かに光沢があった。
「見た目は千尋ちゃんの知っているお星さまみたいじゃないけど、こういうお星さまもあるんだよ。流れ星って言うんだ。ほかのお星さまと違ってじっとはしていないんだ。空を走ってすぐに消えてしまうんだ。でもその光は他のお星さまには負けないんだ。」
そういって少女の手にヘアピンを握らせた。少女は小さな声で綺麗と言った。
「気に入ってくれた?」
「うん。とってもきれいで好き!」
「それはよかった。そのヘアピン僕がお母さんと一緒に作ったんだ。」
「お兄ちゃんが作ったの?」
少女は驚いた表情をした。
「うん。最初はただのヘアピンだったんだけど、そこにレジンっていう液を垂らしたんだ。レジンはおひさまの光で固まるんだ。いろんな色があるんだけど、ヘアピンの形を見た瞬間に流れ星にできるかなって思ったんだ。上手くできたから千尋ちゃんにあげる。」
少女は早速ヘアピンを頭に付けた。
「似合う?」
「うん。似合っているよ。」
少女はえへへと笑い、ありがとうと大きな声で言った。
「そうだ。お礼にお兄ちゃんにお歌を教えてあげる。」
「歌?」
「そう!チヒロのお兄ちゃんがよく歌っている歌なんだ。特別に教えてあげるね!」
そういって少女は歌い始めた。
たとえ声がなくても、聞こえなくても
届いてほしい。願った。
世界に見放されても、笑われても。
あなたが認めてくれる。
それだけでもういいんだ。
ところどころ音程が外れていた。それでも少年は笑顔で聞いていた。
少女が歌い終わると少年は拍手をした。
「歌うの上手だね。」
少女はえへへと照れながら喜んだ。
「チヒロのお兄ちゃん、いっつもこの歌を歌っているんだ。いつも歌っているのに他の人には内緒だよっていうの。だからお兄ちゃんも内緒だよ?」
「うん。内緒にする。」
少年が微笑みながら言った。
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