第8話
シュトラウス伯爵は、ゆっくりと『氷の魔槍ジーリアス』を
ルイスは、その力には逆らわず受け流した。そして、倒れるほどに体を傾けると、シュトラウス伯爵の足を払う。
シュトラウス伯爵は、それを跳んで
ルイスは地面を転がってそれを避けると、その勢いのまま跳ねるように飛び起きた。
約2メートルの距離をおいて睨み合う二人。
先に動いたのはシュトラウス伯爵だった。
槍のリーチを生かして、
さすがに躱しきれないと踏んだルイスは、短剣で
槍が引き戻されるよりも早く、ルイスは一気に間合いを詰めようとする。
そんなルイスの腹を目掛けて、魔槍の石突が跳ね上がった。
迫り来る石突を、ぎりぎりのところで体を
その蹴りを避けようと、ルイスは後ろに跳ぶ。
だが、その距離は槍の間合いだ。
槍の穂先が横からルイスの頭
槍の穂先が頭をかすめ、ルイスの髪を数本斬り飛ばした。
伯爵は、すぐに槍を戻すとルイスの顔面目掛けて突き出した。
ルイスは、それを仰け反るようにして回避すると、そのまま後ろに一回転し距離を取った。
「ほぉ。泥棒猫にしては、やるじゃないか?」
シュトラウス伯爵は嬉しそうに口元を緩める。
「そっちこそ。
ルイスもニヤリと口の端をあげた。
「
心外だと言わんばかりに、シュトラウス伯爵の目に怒りの色が宿る。
「ふんっ。民から、その槍を無理やり召し上げた貴様がよく言う」
ルイスも怒りの滲んだ声で静かに言った。
「ああ、そんなことか。この槍、『氷の魔槍ジーリアス』は彼らには過ぎたる代物だ。私の方が、この槍に相応しい。それに、これは奪ったのではない。買い取ったのだよ」
悪びれることもなく言うシュトラウス伯爵に、ルイスの眉は吊り上がった。
「はっ、たったの50万リルのはした金で、買い取ったと言えるのか? その槍、少なく見積もっても500万リル以上はするぞ」
「ふっ、50万リルとて、彼らにとっては大金だろう。それだけ渡せば
「なんだと!」
ルイスが怒りの
「それに、私のような強いものが持ってこそ、この槍が世の中の役に立てるのだよ。彼らもその方が本望だろう?」
「ほぉ。その理屈なら俺が貴様に勝てば、その槍を持つのは俺の方が相応しいってことでいいんだな?」
ルイスは怒りを抑えると、シュトラウスを挑発するように口の端をあげて笑った。
「ふっ、私に勝てればな。そんなことはあり得ないが。見せてやるよ。この槍の力を」
シュトラウス伯爵は、再び『氷の魔槍ジーリアス』を構える。
「いくぞ!」
そう言うと伯爵の手にある魔槍が、薄っすらと青白い光を
その瞬間、周囲の温度が下がったように感じる。
「そんじゃ、俺もちょいと本気出してみるかな」
ルイスはそう言うと、両手に持った短剣を構える。両手を開くように構えたその短剣は、薄赤い光を
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