第7話 学校でのひととき

「竜馬も大部慣れてきたんじゃないか?配信者として固定のリスナーもできただろう?」


昼食中、いつものごとく凛太郎と飯を食ってると、俺が配信するダンチューブの話題になった。


どうやら俺の配信を見てくれているらしい。


「いや、俺の感覚としては只々リスナーとだべってるだけなんだが・・・。」


正直、配信といっても何か特別なことをしているわけじゃなく、いつものように探索して・いつものように鍛えて・友人と話すように配信しているだけである。


「それが竜馬チャンネルの持ち味だろ?アイドル売りみたいに、大勢の視聴者相手はできないかもだけど、ハマる奴はハマる。多分固定のリスナーはつくぞ?」


(そういうものだろうか?)


凛太郎の話を聞いて疑問に思う。


とはいえ、こいつは結構いろんな知識を持っており、探索者でこそないものの配信にも詳しい。


知識面においては信頼できる友人である。


(と、そういえば。)


ここまでのやり取りで、俺はふと自分の配信を思い出した。


「見てくれるのはありがたいが、配信中にお前のものらしきコメントを見たことがないんだけど?個人の配信なんだから、気にせずからめよ。」


先にも言った通り、こいつの知識量は結構なものがある。


探索にあたっての直接的な助言は期待できないだろうが、こいつの何気ない意見は俺のイメージに貴重な刺激をもたらすと思う。


ダンジョン探索において、いてくれるとありがたい存在なのだが・・・。


「俺はそういうのには絡まない。物語に登場したくない。第三者として、壁として、俯瞰してみることを信条としてるんだ!」


・・・・・・・・・・・そうだった。


こいつは頭がいい。


顔もそこそこいい。


いろいろな知識も豊富に持っている。


しかし、それら良い部分を打ち消すほどに




「そうだった、こいつ”変人”だった。」


「失礼だなこの野郎。」


変わったやつなのである。


・・・・

・・・

・・


「それはそうと竜馬。お前、探索中にスマホでコメントを確認してるだろう?」


弁当を食い終わりのんびりとしていると、再び配信の話に戻る。


「ああ、他の人がどうしてるのかは知らないけど、普通に配信機能を作動させるとそうなるからな。」


俺の配信は、当初にこいつがしてくれた設定のままだ。


人気ダンチューバーともなれば、色々な機能をドローンに持たせたり、オプションパーツをそろえているらしいが、残念ながらその手の知識は持ち合わせていない。


「最低でも読み上げ機能くらいつけとかないと、探索しながらじゃ厳しくないか?」


まあ、考えたことはある。


今までの攻略では、リスナーのコメントがきっかけとなり、危機的状況を乗り越えられた。


しかし、肝心のコメントを確認する方法がスマホのみだと、戦闘はおろか移動中にすら確認できないことがある。


「また家の倉庫をあさって、なんか使えそうなもんでも見つかれば、渡してやるよ。」


とはいえ、この手のことはよくわからない。


現状、凛太郎に任せるしか方法がないのである。


「悪いな、また配信のことで何かあったら相談さしてもらうy「ねえ!今配信って言った!?」うえ?」


教室にいる女生徒がいきなり声をかけてきた。


俺は唐突な乱入に面を食らってしまったが、凛太郎は見えていたのだろう。


「ああ、こいつがな。数カ月前から探索者見習いになって、数日前にダンチューブで配信を始めたんだ。」


上手く返答できない俺に代わり、即座に対応してくれた。


「へえ~!如月くんって探索者だったんだ!ダンジョンで見かけたことなかったから知らなかったよ~!」


元気よく絡んできた女生徒は、椎名 香里。


クラスきっての陽キャグループであり、あの人気ダンチューバー遠崎 未来のパーティーメンバーである。


「知名度なんて無いに等しいからな。椎名さん達みたいな配信は俺には無理だよ。」


遠崎 未来のパーティーメンバーはグループとしてだけではなく、メンバー全員が配信しており、椎名のチャンネルも遠崎ほどではないにせよ、相当なフォロワー数を誇っていた。


「ははは!うちはグループとしての活動が強いからね♪ 機会があればコラボしてみる?」


「勘弁してくれ。」


人気のダンチューバーと知名度ゼロの初心者がコラボする。


どう考えても地獄でしかないだろう。


「まあ、竜馬のチャンネルは方針自体が椎名さんのチャンネルとは違うからな。仮に竜馬チャンネルが有名になってコラボしても、あんまり旨味がないだろう。」


凛太郎のフォローが入る。


「それに、竜馬の配信はソロ探索っていう珍しさで見られてる部分もあるからな。パーティーを組む事自体がちょっとしたデメリットになるかも。」


その通りだ。


最も椎名自身、冗談10割で言ってるんだろうが、グループとしての探索自体、出来る気がしない。


「・・・・ソロ?階層をは何処まで進んでるの?3階層を攻略して次回が4階層!?へえそうなんだ・・・」


椎名の声色が固くなる。


(ん?今一瞬、椎名の顔から表情が消えた気がしたが。)


一瞬浮かんだ椎名の顔に疑問を覚えた。

・・・しかし、


「いずれにしても、同じクラスに配信者仲間がいるのは嬉しいよね!今度またお話しよ♪」


次の瞬間には、いつもの笑顔で話しかけてくる。


(気のせいか?)


ちょっとした違和感を覚えたが、それが何なのかが分からないまま、昼の時間は過ぎていった。




「椎名のやつ、探りを入れにきたな・・・」


「ん?凛太郎何か言ったか?」


「いや、何でもない」


「?そうか?」


何が何だか、よくわからない。


・・・・

・・・

・・


「如月のチャンネル・・・竜馬チャンネルって言ってたよね・・・。」


暗い部屋に女性が一人、パソコンに向かってつぶやいている。


「マジでソロじゃん!!ゴブリンやウルフの連携を一人でさばいてる。」


・・・椎名香里は自身の部屋で、如月竜馬の情報を集めていた。


「でも、うちのチャンネルとは毛色が違う。競合はしないかな。まあ、絡んだ所で利点もなさそう・・・。」


・・・動画を見るその視線は


「チェックはするけど、それだけかな?・・・・排除する必要もないか。」


・・・・・・・・・・・とても冷たいものだった。

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