閑話④/アロンダイト騎士団、その2
アロンダイト騎士団本部。
エニードは、ソファに座ってブドウをモグモグ食べながら、イフリータに報告した。
「サティ、騎士団のエミネム、んで七大剣聖のフル-レ、ラスティスは南に向かって歩いて行った。ったく……クソつまんねぇ」
「ご苦労。フン……くだらんな、大方、七大剣聖二人で、サティとエミネム両名を鍛えるのだろう。来るべき、闘技大会に向けて……な」
「ケッ……真面目共が。あいつ、サティが東の平原で技の訓練をしてて無防備だったのに……ちょいと揉んでやろうとしたのを止めやがって」
エニードは、イフリータの傍に立つ少女、ロディーヌに言う。
ロディーヌは眠そうに欠伸をした。
「闇討ち、ダメ……エニード、卑怯者」
「フン。ちょっと実力を見ようとしただけだっつーの」
「サティに負けるかもしれなかったし」
「あ? アタシが、あんなザコに負けるって?」
イライラするエニード。
ロディーヌは再び欠伸をして、イフリータに言う。
「イフリータ。お父様、来るの?」
「ああ。我々七人に、訓練を付けに来る」
イフリータ、エニード、ロディーヌ。
そして、カリア、ブランゲーヌ、リン。この六人ともう一人が、闘技大会のメンバーだ。
エニードは言う。
「おいイフリータ。いい加減、最後の一人が誰か教えろよ」
「……私も知らん。お父様が連れてくるとは思うが」
「ケッ……親父のやつ、どうせ部隊長の誰かだろ。もったいぶりやがって」
エニードはつまらなそうに言う。
すると、ソファで紅茶を楽しんでいたブランゲーヌがカップを置いた。
「さっきから聞いていれば……エニード、あなたは本当に品がありませんわね。淑女なのだから、そのように足を開いたり、胸元を開けたり、みっともない格好をしないでちょうだい」
「うっせぇな。お上品なガキは黙ってろよ」
「まぁ、言われたことを理解できないあなたの方が、よっぽどお子様だと思うけれど?」
「あぁ? んだとコラ」
険悪。すると、茶を啜っていたリンが、笑いながら言う。
「はっはっは!! 仲良きことは素晴らしいかな!! うんうん、もっと喧嘩すれば、仲直りした時にもっと仲良くなれるでござる」
「「……」」
エニード、ブランゲーヌはため息を吐き、会話を打ち切った。
そして、黙々と仕事をしていたカリアが、書類の束をイフリータへ。
「あの、イフリータさん、できました」
「ああ、ありがとう。全く……お前たちも、カリアを見習って、少しは手伝ったらどうだ」
イフリータが嫌味を言うが、誰も返事をしなかった。
すると、ドアがノックされた。
「失礼します、イフリータ」
「お父様!!」
入ってきたのは、ランスロット……そして、見慣れない少女だった。
「さ、入りなさい。デボネア」
「ええ」
デボネア。灰色のショートヘアに、どこか娼婦のような露出の覆いドレスを着た少女だ。
イフリータたちを一通り眺め、イフリータに言う。
「あなたが、一番強いわね」
「……」
「ね、ここで戦えばいいの? ふふふ……」
「ここではありません。あなたが戦うのは『闘技大会』です」
「あっそ……ま、いいけどね」
どこか嘲笑うような、そんな笑みを浮かべる少女だった。
イフリータは、それが面白くない。
「お父様……彼女は?」
「彼女はデボネア。私の新しい娘で───……イフリータ、あなたと同じ『神スキル』の持ち主です」
「っ!?」
「さ、これで七人揃いましたね。では───訓練を始めましょうか」
ランスロットがそう言うと、緩んでいた空気が一気に張り詰めたような気がした。
◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇
イフリータは、ランスロットと向かい合っていた。
「本気で来なさい」
そう、ランスロットに言われた。
それだけで、イフリータの炎は燃え上がる。
「『
イフリータの炎が全身を燃やし、まるで炎の衣となる。
この状態のイフリータは、赤いジャイアントフッド以上の熱を放ち、物理攻撃をほぼ無効化する。矢が飛んでくれば燃え尽き、鉄の剣は瞬く間に溶解する。
イフリータは、自分の衣類が燃えないように調節し、愛用の大剣『カレトブルフ』を片手で持ち、ランスロットに全力の敵意を向ける。
ランスロットは、ゆっくりと剣をイフリータに向けた。
「いい闘気です。成長しましたね、イフリータ」
「参ります!!」
褒められた喜びを戦意に変え、イフリータはさらに燃え上がった。
炎が柱のように、天高く燃え上がる。
「『
炎が、神々しい神の姿へ変わり、ランスロットに向けて拳を放つ。
「『
「───……素晴らしい一撃です」
迫り狂う炎の拳───ランスロットは、剣を軽く横に薙いだ。
それだけで、炎の魔神が消滅した。
「まだまだぁぁ!!」
炎の魔神は囮。
すでに、イフリータがランスロットに迫り、大剣を振り上げていた。
ランスロットは、すでにイフリータに向けて剣を向けていた。
いつの間に───だが、イフリータはもう止まらない。
剣が燃えるのではない。
超高熱を帯びた剣は燃えず、炎を全て刀身に込めた斬撃となり、ランスロットを両断すべく振り下ろされた。
「『
下級魔族なら触れただけで溶解する一撃を、ランスロットは受け止めない。
イフリータが気づいたのは、ランスロットの剣がブレた瞬間だった。
それだけで、
「なっ……」
炎を、そして熱だけを斬った。
ランスロットの剣は、すでにイフリータの首に突きつけられている。
「私の勝ちですね」
「……はい」
「イフリータ。成長しましたね。父として誇らしいです」
「……はい」
イフリータは、少女のように頬を染め、顔を綻ばせた。
互いに剣を納め、二人はポカンとした表情で戦いを見ていたエニードたちの元へ。
「なんだお前たち、間抜けなツラをして」
「……別に、なんでもねぇし」
エニードがそっぽ向く。
すると、リンが大笑いしながら言う。
「はっはっは!! いやぁ、父上とイフリータはすごい!! すっかり呑まれてしまった。わっはっは!!」
そう、圧倒されていた。
イフリータの『神スキル』と、ランスロットの『神スキル』同士がぶつかった。
その結果、エニードたちは押され、何も言えなくなってしまった。
ブランゲーヌは言う。
「お父様は、やはり最高にして至高の騎士!! アルムート王国最強ですわ!!」
「はは、ありがとう、ブランゲーヌ」
ランスロットは笑い、ブランゲーヌの頭を撫でる。
「さぁ、みんな。闘技大会は近い……今度は全員で、かかって来なさい」
ランスロットの訓練も、ラスに負けず劣らず過酷だった。
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