第10話「提案」
「あったぁー、、!!」
疲れ果てたエマの声が広がる。
二時間近く探しただろうか。僕たちは倒れるように日陰のある地面に座り込み、汗を流しながら息を細かく吸って吐く。
エマが持っているのは綺麗に箱に入った金色のブレスレットとネックレスだ。どれも綺麗で、大切にしていたのがわかる。箱は傷がついているが、中身は無事で良かった。エマはバッグに箱をしまう。
僕も先生の写真を見つけた。数年前の写真だと思うが、雰囲気は全く変わってない。僕とエマはそれを見て、少し暖かい気持ちになった。
体を動かしていたというのと、雲ひとつない快晴ということもあり、僕とエマの体感温度はものすごく高かったため、僕たちはすぐ近くのカフェに入って僕は飲み物、エマは追加でパンケーキだけ頼んで涼んだ。
「そーいえば一個提案しようと思ってたんだけどさ、」
エマはパンケーキを一口頬張りながら話を始める。
「学校も無くなっちゃったし、ギルドに入らない?」
ケロっとした表情でそう言うもんだから、すこし驚く。
「ギルドって、、旅をする人を援助してくれるっていうやつだろ?俺ら学生だし、しかも四人以上じゃないとギルド登録できないじゃん…」
戸惑いながら僕は言うが、すぐにエマは言い返す。
「ならもう二人集めればいいじゃん?しかも学校無くなっちゃったから私たちは言ってしまえばニートだし。近くに学校はないしさーもうこのままギルドに入った方がある程度支援してくれるしいいんじゃないかなって!」
「やけに詳しいな…」
「いっぱい調べたもん!これからどーしようとか、いっぱい考えた結果なの!入ろうよ…?ね?」
仲間がいないのに現実的に…なんて言おうと思ったが、真剣な表情でこっちを見てくるから断りずらい…
「あーわかったよ!とりあえず人をふたりあつめればいいんでしょ?頑張ってみるよ…」
僕のその言葉を聞いた瞬間目をキラキラさせて「ありがと!!!」と、元気に言う。
「とりあえずじゃあ今から探してくるから。じゃあね。」
「うん!」
僕はそう言って会計を済ませて外に出る。
その数十分後、パンケーキと飲み物を飲み終わったエマは会計に向かう。
「すみません会計おねがいしまーす。」
「会計ですか。それでしたら先に払って行かれましたよ。」
店員の男性がそう言う。
「え、でも…」
その瞬間にハッとする。
「すごくお優しい人なんですねあの人。それでは、またお越しくださいませ。」
店員さんは笑顔でそう答える。
「あ、はい。」
エマは店員さんに歩きながら少しお辞儀をして店を出る。
「…払うなら言ってくれれば良かったのに。」
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