第38話

諸外国要人の招待当日の朝、俺たちは彼女たちを出迎えるために例の噴水広場へとやってきていた。


後ろを振り返ると横一列に並んだガチガチに緊張しまくったみんなの姿が見える。

この話が決まってからというものずっと不安そうに過ごしていたみんなの緊張も今やピークに達しているようだ。そんな彼女たちを見ているとまるで歓迎会前の自分を見ているような不思議な気分になってくる。



彼女たちの様子に苦笑しながら前を向くと、壁の上にはいつも警備してくれているライフルを手にした軍服姿の女性と、それと同数ぐらいいるであろう警官の姿も見えた。要人が来るとあって警備も普段の2倍増しのようだ。



しばらくすると、入場手続きを終えた一団がこちらへ歩いて来るのが見えた。きっと彼女たちに違いないと思った俺は歓迎するため手を広げてこちらからも近づいていった。

すると、俺に気づいたのか一団の中の一人が猛ダッシュでこちらへ向かってきた。



え…?ちょっ、はやっ!どうしたら、、、



この一瞬の迷いが間違いだった。

やっぱ避けようと思った次の瞬間にはスピードを全く落とすことなく思いっきり飛びこんできた人物によって地面に押し倒されてしまっていた。



いてて……目の前が真っ暗?頭打ったのかな?けど、この顔に当たるぽよんぽよんの感触は?ちょっ待って!息が…!!


「カーズヤーッ!

会いたかったデス!!ワタシまた会えると信じてマシター!」


ものすごい力で顔にナニかを押し付けられ息ができないでジタバタしていると次は後ろから複数の声が聞こえてくる。


「ちょっと!!あなた離れなさいッ!!」「なんやねんあんた急に」

「許可なく超越神様に抱きつくなど万死に値する」

その声が聞こえた後、そのナニかが少し緩んだのを感じた俺は全力でそこから抜け出した。



ぷはッ!!!窒息死するかと思った…

視界が開けた俺が状況を確認すると、地面に押し倒された俺の上に跨るエミリーさん。そして、近くにはたわわに実ったおっぱ…げふんげふん。ぶどうが垂れ下がっていた。

俺の上ではまだ言い争いが続いているが、とりあえず声をかけることに。



「エ、エミリーさん、先日以来ですね。私もまた会えて嬉しいです。

けど、今はちょっとどいてほしいかも」


「ホラ!カズヤもワタシに会えて嬉しい!!何事もノープロブレムデス!問題ありまセーン!」


むぎゅっ!

両手で頭を抱えられて上半身のみ起こされた俺の顔はまたも豊満なおっぱ…ぶどうに押し付けられていた。

すると、後ろからコツコツと不穏な足音が近づいてくる。何か嫌な予感を感じた俺が咄嗟に振り返るとダメな方の目をした美弥さんがゆっくりと、だが確実にこっちへ向かってきていた。


「ちょっ…!ストーーーップ!!!」


もはや人間を超越したスピードで起き上がった俺はきょとんとするエミリーさんと邪悪なオーラを纏った美弥さんの間で手を広げて叫んだ。


「と、とりあえず紹介するね。

こちらはアメリカ代表のエミリーさん」


「エミリーデース!」

笑顔で元気よく手を上げて答える彼女を睨むうちの面々(優子ちゃんを除く)


「それでこっちが一緒に住んでる、美弥さん・優子ちゃん・咲希さん・桃華さん・杏ちゃん・美里ちゃんとお母さん」


紹介された優子ちゃん以外のみんなは今にも『夜露死苦ゥ!』と言いださんばかりの様子だ。


そんなみんなの胸の辺りをしばらくじっと見ていたエミリーさんはおもむろに自分の胸を持ち上げたかと思うといきなり原爆級の爆弾発言を投下した。


「カズヤはこういうのがタイプデスカー?

………ワタシ決めマシター!アメリカ帰ったら吸引しマース!!」



ピシッ



一瞬で場の空気が凍りついたのがはっきりと感じられた。

と、次の瞬間軽くジャンプした後、ファイティングポーズを取った美弥さんがその場で左ジャブ・左ジャブ・弱右キック……ってそれー!瞬獄殺のモーション!!!

左膝を上げながら滑るように移動する美弥さんを必死に押し止める。

ぜぇぜぇと既に疲労困憊の俺にとことこと近寄ってきたのは優子ちゃんだった。



「ねぇねぇかーくん。あの人おっぱいおっきーね!

かーくんもおっきーおっぱい好き?」


「あ、あのね、優子ちゃん。色んな大きさの胸があるから良いと思うんだ。

だから、僕はみんなの胸が大好きだよ」



「そんなっ!ダーリンこんなとこで恥ずかしいやないか」

「超越神様が私ごときの胸を褒めてくださるなんて」

「ずっと気になってました。私の貧しい胸で満足されてるのか」

「ふふふふふ、ちゃんと聞きましたか?アメリカ産のホルスタインめ」



優子ちゃんのナイスアシストのおかげで氷点下だった場の空気が急速に溶けていくのを感じる。

さすが優子ちゃん素晴らしい!!でも、でも…



「みんなってことはかーくんは私のおっぱいも好きー?」


その質問はやめて欲しかったー!

キラキラとした目で俺を見上げる優子ちゃん。

見たことないけど好きって言ってあげたい。けど、それを言ってしまうと人として終わってしまう気がする。



「ねー?好きー?」


これは何か答えないと永久に聞いてくるやつだと感じた俺は悩みに悩み抜いた末、一つの素晴らしい答えに辿りついた。


「優子ちゃんがおっきくなっ成長したら答えようかな?」


「…………わかったー!」


優子ちゃんはしばらくじぃっとエミリーさんの胸を凝視した後で元気よく答えた。



その後、今までのやり取りを少し離れたところで見守っていたカサンドラさんや他の要人たちをみんなに紹介した。

そうしてようやく家への道を歩き出した。



なんか色々疲れた…もう寝てもいいかな?

そんなことを考えていると前から昔テレビで見たまんまのピッチリしたミニワンピースのボディコンに身を包んだ国分先生がモデル歩きで近づいてきた。しかも、その胸は不自然なほど膨らんでいる。



通りすがった際になんか色々変ですよと教えてあげると、彼女はその場で膝をついて崩れ落ちていったのだった。






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