第24話
加藤さんに案内された豪邸に入った俺たち。
俺はとりあえず加藤さん・神林さん・国分先生の案内で家の全体を見て回ることにした。
他のみんなは早速仕事をしようとうっきうきで準備を始めている。
写真で見ていたとはいえ実物を体感するとその大きさに圧倒されてしまう。
これみんなに手伝ってもらうことを前提として俺が一日16時間掃除しても絶対回らないやつじゃん。
しれっと起きている時間以外を家事などに換算してしまうあたり元の時代の休日が染みついていることを感じて苦笑する。
そんなことを考えながら歩いていると、この家の中でも更に一際立派な扉の前にいた。
今までの部屋は全て加藤さんたちが開けてくれていたのに何故かこの扉だけは時間が経っても開けてくれる気配がない。
隣をちらっと見るとまるで小さな子が褒めてもらえるのを待っているような期待した三人の顔。更にその顔は乙女のように朱に染まっている。
意を決した俺は扉に手を伸ばした。
ガチャッ………バタン…
中を見た瞬間思わず扉を閉めてしまった。
俺の見間違いかな?
なんか今どこぞの王様が使うようなバカでかいベッドが見えた気がするんだけど?
しかもしかも、白とピンクのコントラストが美しいハート形だったような…?
いやいやいや、さすがにあからさますぎでしょ。ラブホでももうちょっと捻りあるよ?と思ってふと扉の上を見ると立派なルームプレートがかかっていた。さっきは扉に気を取られて気づかなかったようだ。
『種付けルーム』
ぶふぉぉッ!!!
どストレートすぎだろ!!もうちょっとオブラートに包んだ言い方あっただろ!
誰だよこの名前考えたヤツ…これ考えたヤツは頭がおかしいに違いない。うん、きっとそうだ。
ルームプレートを見て固まっている俺を見て感動しているとでも思ったのか加藤さんが自信満々に胸を張った。
「私が考案いたしました(ドヤァ)!!」
頭おかしいヤツここにおったぁ!!
「す、素晴らしいネーミングです」「まさに究極という言葉が相応しいほどのお名前ですわね」
固まる俺を他所に感動に震える神林さんと国分先生
二人もかいっ!!
この三人って多分めっちゃ頭いいと思うんだけど割とポンコ…じゃなかった、抜けてるところあるよなぁ。
こうしていても仕方ないので、諦めに頭を振ってから部屋へと入った。
部屋の中はソレ専用のようになっていて部屋に続く別の扉の先にはオシャレなバスルームまで完備されている。
「こちらが種付けルーム兼片岡様のベッドルームとなります」
一瞬思考が追いつかずフリーズしてしまう。
え…?
俺このバカでかいハートのベッドで寝るの?
いやいや、さすがに冗談だよな?
「あははは、加藤さんも冗談とか言うんですね」
だが、加藤さんの目はキリッとしており真剣そのものだ。
あの〜、その『何言ってるんだお前は』みたいな目やめてもらっていいですかね?
え…マジなの??このハートに精神年齢35歳のおっさんが寝るの?
……うん、どうやらそうらしい。
各部屋を見終え、どっと疲れた俺は準備を終えたみんなが待つ部屋へと戻った。
ガチャ……バタン…
本日二度目である。
あの部屋のできごとが衝撃的すぎて俺の目がおかしくなったに違いない。
そおっと扉を開くと先ほど見た光景と全く同じものが見えた、見えてしまった。
そこにはあのクレープ屋の店員がまともに見えるほどの衣装に身を包んだみんなという名の痴女がいた。
「お願いですから普通の格好してください」
部屋へ入るなりスライディング土下座を決めた俺は必死に頼んだのだった。
それからしぶしぶ普通の服へと着替えたみんなが戻ってきた頃、慌てた様子で娘が部屋へ飛びこんできた。
「た、大変なのよ!パパに会いたいって人が来てるんだけど…」
「パパに?誰だろ?杏ちゃん…じゃなさそうだね」
娘の様子からただならぬ気配を感じる。
「そ、それが第壱名家の
「第壱名家ってこの国で一つしかないっていうあの?」
「そう!その第壱名家よ」
「なんでパパなんかに…?」
「し、知らないわよ。とにかく対応お願い」
娘に促されてみんなで応接室の前までやってきた。
わずかに開いた扉の隙間から中を窺う。
「……………」
ほら!早く!と急かすように娘が肘でつついてきた。
「(ふぅ…あのな娘よ。
普通の村人におなべのふたとひのきのぼうを装備させてもデスタムー◯は倒せないんだぜ?)」
「(わけわかんないこと言ってないで、早く行ってきてよ)」
無理だろアレは!!どうみても!
なにあの金ピカのドレスと扇子、しかもまつ毛なっが!!15cmぐらいあんじゃん…
まぁそこは良い。ほんとは全く良くないけど10000歩譲って良しとしよう。
なんであの人髪型が金色のウン◯…じゃなかったソフトクリームなの!?誰か教えてあげて!あなたのその髪型ウン◯みたいですよって。
ふぅ…と息を調え腕で額を拭った俺はキリッとした表情をして言った。
「(よしっ!留守ということにしよう)」
「(無理だから!もういるって言っちゃったから!)」
「(そんな殺生な!せめて勇者の鎧と勇者の兜…それにギガスラッシ◯覚えてから…)」
良いから行ってこい!と娘に背中をドンと押された俺はラスボスの待つ部屋へ単身乗り込んでしまったのだった。
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