第18話

激動の一日の翌日、俺は今大阪に戻ってきていた。隣には緊張した面持ちの加藤さんと神林さん、それとは対照的にリラックスした表情の国分先生がいる。


なぜこうなったのか順を追って説明しよう。


二人が美里ちゃんのお母さんへの説明が終わった後彼女らは自宅へ帰った。

その後、暇になった俺は何気なくテレビをつけた、いやつけてしまった。


ちょうどニュースの時間だったようで事件や事故、経済などが流れていく。この時代のことをよく知る良い機会だと思い集中して見ていると『本日のマル秘特集コーナー』なるものが始まった。


うまいラーメン屋でも紹介してくれるのかな?元の時代では朝のニュースには視聴率確保のためよくこの手の話題が盛り込まれていたよな。

娘の淹れてくれたお茶を啜りながら見ていると今日の話題が派手な演出とともに発表された。



『熊本に謎のイケメン男聖現る!!』


ぶふぅ!げほごほっ…ちょっ…

おそるおそる隣を見ると案の定おキレになられた娘様が鎮座しておられた。


「パ、パパッ!?今日だけで二つも問題起こしてんじゃないのよッ!!

しかも、姿まで見られちゃってるじゃない!どこがトラブル回避マスターなのよ、これじゃ逆にトラブル起こしマスターじゃない!」



娘の怒声は凄まじかった。隣へ帰った美里ちゃんやお母さんが心配で訪ねてきたレベルだ。

二人は怒り狂う娘と正座する俺を見て「だ、男聖神を叱り飛ばすなんて……最恐の女性現る」などと呟いていた。


慈愛神の次は男聖神、どんどん追加されるなあと呑気に思っていたら娘の特大お説教が再開された。


「ーーーーーーパパはほんとっにこの時代では異端なんだから、わかってるの!?」


ピピピピッ


たっぷり一時間後、救いの音が鳴り響いた。

当然だが、娘もVoltを所持していてそれが着信を告げているのだ。


「ーーーーーいや、ちょっとそれは…

ーーーはい、私もそう思います。わかりました」


????

突然娘からパパにと言ってVoltを手渡される。

そこには神林さんが映っていた。

いつの間に連絡先交換したんだ?


「お助けくださいっ!!」


開口一番意味不明なことを言われて頭が混乱する。


「加藤が、加藤がっ……

勧誘失敗の責任と男聖を不快にさせた責任を取って腹を召すなどと申しておりまして私に介錯せよと。

もはや住んでいただきたいとは申しません。一度だけでもお越しになっていただきたく…」


腹を召すって…戦国時代かな?


「私も住まないにしても一度くらいはE区を見ておくべきだと思うわよ」

横から娘が口を出す。


「まぁ見るくらいなら構わないですけど、、、」


「ではっ、早速迎えをご用意いたしますので!」


「えっ…今からですか!?それはちょっと…夜も遅いですし、シャツも乾いてないし」


「あっ、いえ。こちらは今から待機しておきますので片岡様は明日の朝、車に乗っていただければ」


「待機今からするんですか?朝までまだ八時間以上ありますけど…」


「大丈夫ですっ!男聖をお待ちするのであれば一月や二月ぐらい徹夜できます!」


それは無理だろ…あとそんなことされるとこっちが気を使うからやめてほしい。

だが、満面の笑みで答える神林さんに何も言うことができず通話を終えた。


「はぁ…明日は美里ちゃんの様子見に行こうと思ってたんだけどな」


「これ以上問題を起こさないでっ!」

娘の怒声が家中に響きわたったのだった。

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