第17話
加藤さんと神林さんが帰った後、俺が後片付けをしようとすると二人に「い、いいから(ですから)」と止められてしまった。
なんか必死だったけどなんだったんだろ?
二人が後片付けをしている間、手持ち無沙汰になった俺は昼にかいた汗を流すためシャワーを浴びること。ついでに今着ているシャツもボディソープを使って手洗いした。
うーん、サッパリ!!
シャワーからあがったところで、買った下着を部屋に置き忘れてしまったことに気づいた。
「パ、パパッ!!なんて格好で!シャツや下着は!?」
「あわわわわ、だ、男聖のそれも神に等しい方の、は…はだか、、、もうダメ…」
美里ちゃんはその言葉を最後に後ろ向きに倒れてしまった。
「シャツは手洗いして濡れてるし、下着は部屋に忘れちゃってさ。
それに、基本パパのお風呂上がりはシャツとパンツだったの忘れちゃったの?
あったあった。これだ」
「ここで着替えないで!!美里ちゃん泡吹いて倒れちゃったじゃない!」
そういうもんか?この時代でも男の裸などに何の価値もないと俺は思うのだけど。
仕方ないので脱衣所へ行ってパンツを履き、バスタオルを首にかけて戻ると娘が倒れた美里ちゃんの額に氷枕を当てていた。
ちょうどその時、外から声が聞こえてきた。
「美里〜、美里どこなの!?もうどうなってるのかわけがわからないの…ほんとお願いだから出てきて…」
きっと美里ちゃんのお母さんが帰ってきて娘がいないことに驚いているのだろう。けど、その声に鬼気迫るものを感じるのは気のせいだろうか?
娘も気づいてはいるのだが、倒れた美里ちゃんの介抱で手がはなせなさそうだ。
「ちょっ!!パパっ…まっ…」
玄関を開ける直前に焦った様子で娘が俺を止めようとしたが時すでに遅し。既に玄関は開かれていた。
アパートの廊下には娘に呼びかける30代後半の女性。
相当焦っている様子で声だけでなく顔にも鬼気迫るものが感じられた。
「あっ、美里ちゃんのお母さん。
美里ちゃんなら今うちの家に…います…けど?」
話しかけられたお母さんはこちらを向き、俺の姿を見て目をこれでもかというほど見開き「へぁぁぁ」と言ったあと後ろ向きに倒れそうになった。
このまま倒れたら頭を打ってしまう!
慌てて駆け寄って倒れる前に彼女を抱きとめた。どうやら気絶してしまっているようでぺちぺち頬を叩いても起きる気配がなかったためとりあえず家へと運んだ。
「だからッ、待ってって言おうとしたのに!ファーストコンタクトが男聖の裸なんて気絶して当たり前よ!」
ぷりぷりと怒りながら気絶した二人の介抱をする娘
「いや、ほんと面目ない…つい昔の調子で」
パーカーを羽織りながら謝った。
しばらくした後、先に気がついたのはお母さんだった。彼女は頭を押さえて起き上がる。
「い、今一瞬裸の男聖が見えたような…?き、きっと気のせいね。
そんな幻見ちゃうだなんて疲れてるのかしら…」
「あっ、どうも。
多分もうすぐ美里ちゃんも気がつくと思うんで」
起き上がった彼女にしゅたっと手を上げて言葉をかける。
「やっぱり幻覚が…まだ少し頭もクラクラするような」
そう言って再度横になり目を閉じてしまった。
数分後、美里ちゃんが目を覚ました。
彼女はしきりにご迷惑をおかけしてしまいとぺこぺこ謝っていたので気にしないよう伝える。
「あのさ、美里ちゃんのお母さんも倒れちゃったんだけど…一度起きたんだけど幻覚がどうたらってまた」
そう言われてはじめて彼女は自分の隣に母が寝かされていることに気づいたようだ。
「お母さんっ!起きてっ!男聖の前で失礼でしょ!」
お母さんの頬をバチンッバチンッと叩いている。
あっ、いやそれ起こす時のパワーじゃないよね…お母さんの頬だんだん腫れ上がってるよ?
「あっ!美里、良かった!!今男聖の幻覚が二度も見えたのよ。しかも最初は裸だったの、お母さん欲求不満なのかしら?
はっ!それよりも美里あの噂はどういうことなの?あなたが男聖と手を繋いで帰ったって職場はその話題で持ちきりよ。お母さんわけがわからなくて…」
「お母さんは正気だから安心して。幻覚でも欲求不満でもないの。そこにいらっしゃるから」
「いらっしゃるって誰が?」
「男聖が」
ギギギと顔をこちらに向けたお母さんにしゅたっと手を上げてこたえた。
「みさとっ!あなたって子は!
……ふぅ、自首しましょう。今なら未成年だし少しは罪も軽くなるかもしれないわ。お母さんもついてくから。
それに攫ってきた男聖をこんなところに…少しは片付け、、、
ってあら?ここうちじゃない?」
なんだか盛大な誤解をしているらしい。
そこで俺は彼女に説明しようと試みる。
「あ、あのですね。別に攫われて…」
「ほんっとうに申し訳ございません!!
お金なら全財産といっても大した額ではありませんが差し上げますっ!私を煮るなり焼くなりお好きにしていただいて大丈夫ですから、どうかどうかお許しください」
俺が言い終わらぬうちに額を地面に擦り付けて許しを乞うお母さん
「あっ、いやですから…」
「パパが出張ると収拾がつかなくなるからちょっとあっち行ってて!」
娘に台所へ行くように言われてしまった。
仕方ない、ここは二人に任せた方が良さそうだ。
そう思った俺は大人しく台所へ引っ込んだのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます