第12話

ひとしきりみんなが喜んだ後、冷静になった署長さんが言った。


「ですが、やはりE区に住む恩恵とここに住む問題点を考えると…」


ふむ、確かにそれはわかるんだけど。心情的にはみんなと一緒がいい。


「署長さん、先程言いかけていた『厳密に』の続きを教えてもらえませんか?」

娘が署長さんの方を見て訊ねた。他のみんなも気になるようだ。


署長さんの話では、E区に住まなければならないのは戸籍がある男聖なんだそうだ。だから俺は大丈夫らしい。


「あの〜、ちょっと良いですか?」

みんながどうしたものかと頭を捻る中、愛莉ちゃんが手を挙げた。


「男聖が少なくなってから人口は減り続けてますよね?でも、人口は減ってるのにE区は例外としても大都市圏の人口が減っていないのはみなさんご存知だと思います」



ここまで言われれば愛莉ちゃんの言いたいことはわかる。でも…


「確かにトラブルは起きないと思いますけど人数的に厳しくないでしょうか?」

誰もが思ったことを美弥さんが口にした。


「ですから、そこに住んでくれる方を募集するんです」


ああ、なるほど。面白い案かもしれない。愛莉ちゃんの言いたいことを理解した俺は頷いて言った。


「そこで、私の出番ってことだね?」

愛莉ちゃんも頷き返す。


「はい、動画で『こんな感じで開拓してます。一緒に開拓してくれる方を募集してます』といった感じで呼びかければ…」


だけど、そこで咲希さんが反論した。


「それだと本末転倒ちゃうか?ここに住んだら男聖ってことで大騒ぎになるってことやったんやし」


「それは庶民区に男聖がいるわけがないと思っているから大騒ぎになるんじゃないでしょうか?最初からわかっていれば大丈夫だと思うんです。

それに片岡様という絶対神が居られるので纏まりも大丈夫だと思います。

だから、最初は三人でもなんとかなると…」


愛莉ちゃんがそこまで言ったとき、他のみんなの目がピクッと動いた。


「「「「三人とは…???」」」」


どこか不穏な空気が漂う。優子ちゃんまで…

そんな空気を察せずに愛莉ちゃんは笑顔で答えた。


「はい、片岡様と古賀さんと私の三人です。他の皆さんはそれぞれの生活があると思いますので。

あっ、ときどき遊びに来てくださいね!歓迎しますので」


「ほ、ほう。良い度胸だ小娘…一度痛い目にあわなせなければなるまい」

署長さんのこめかみに怒りマークが見える。


「痛い目では生ぬるいですね。ミンチにするぐらいでないと…」

すっと目が鋭くなった美弥さんの意見に優子ちゃんがうんうんと大きく頷く。


「せやなぁ、大阪湾に沈めるくらいせなあかんなぁ」



いや、みんなほんとにやりそうだからやめて。

このままだと気づいたら愛莉ちゃんが暗殺されてましたってなことになりかねない。プリコジ◯みたいに…


「と、とにかく今すぐ決めれることでもないよね?ゆっちゃんや愛莉ちゃんだって仕事明日やめまーすなんてできないでしょ?」


さすがの愛莉ちゃんでもヤバいと感じたようで「そ、そうですね」と納得して引き下がる。


「でも、面白い案だと思う。ちょっと考えてみるよ。

そうだ!今日の記念にみんなで写真撮らない?明日になったら四人は大阪に帰っちゃうんだしその前にどうかな?」


俺が提案すると同時に隣を狙ってみんなが一斉に動き出した。その速さは残像が残るんじゃないか?というほどだ。飛影かな?


うん、あとみんなくっつきすぎじゃないかな…もう少し離れてもいいんだよ?とは言えない雰囲気なので黙っておく。


「はいチーズ」


咲希さんがVoltを持って自撮りの感じで撮影した写真はこの後みんなの宝物になったのだった。




※リアルが忙しかったため昨日更新できませんでした( ; ; )

今回も短くて申し訳ありません。

来週からまた頑張ります!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る