第7話 夏の祈り


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 『明後日が手術で、あとは経過を見て退院。たぶん、8月の末くらいには太鼓判をもらえるはず。

 あっ、お見舞いには来なくていいからね。

 寝てるとこなんて、あんまり見られたくないもの』


 そういわれたが、手術の翌日に透は見舞いに行った。

 本当は、美海の言葉どおりにしたほうがいいのかとも思ったが、あつ子に『男だったら、花を買って持っていきなさい! なんだかんだ言って女の子はうれしいんだから』と、はっぱをかけられたのだ。


 乙女チックなケーキ屋でケーキが買えたのだから、花くらい買えるさと透は自分自身言い聞かせ、病院近くの花屋で声を裏返しながら、かすみ草と小さなバラのかわいらしい花束を買うことができた。

 見舞いに行くと、美海は寝ていた。

 眠っている彼女は病のせいか色白でとても儚く見えた。


(白雪姫みたいに、このまま眠ったままなんてことないよな……)


 美海がいなくなったら……不意にそんなことを考えた透は、あせりで鼓動が早くなる。

 今さらながら、透は神に祈った。


(俺の無駄な体力を分けてやって、どうか彼女を元気にしてあげてください)

 

 


 それからというもの、あんなに嫌いだった風鈴の音が鳴るたびに、ひどく切なくなった。

 美海からの連絡が待ち遠しくてたまらないのだ。


(夏が終わってしまう。

 早く元気な姿を見せてくれよ)


 透は、いつでも美海を乗せ出かけられるようにバイクを磨き続けた。



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