第4話 美海ちゃん


 4


 

 駐輪場に戻るため、再び少女の病室脇の道を通ったがベッドは空っぽだった。


 どんな病気で入院しているのか詮索するつもりはなかったが、彼女の名前が気になり窓越しにちらりと枕元を覗いた。


――― 平田 美海みう

 

(美海ちゃんか、かわいい顔してはっきり言う子だったな……)


 怒った顔と、困ったように笑った顔が同時に浮かんだ。


 なんとなく、透の顔がゆるむ。 


 そのときふわりと、頭上の風鈴が小さな音を奏でた。


 透はハッと我に返り、真っ赤になりながら足早にバイクへ向かった。


 彼女に言われたとおり、駐輪場ではエンジンをかけず病院から離れた大通りにでるまで引いていった。

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