第9話 玉露タマとのコラボ配信(?)

「それでは、今日の特別ゲストを紹介します! 殺人鬼マーダー討伐って本当? ウワサのリ美肉おじさん―――― 緋炎ヒカリくんです!」


「みなさん、こんにちわ。緋炎ヒカリです」


「あー ヒカリくん緊張しないで、あのカメラの向こう側に数十万人の視聴者がいるだけだから」


「す、数十万人ですか……」


「あはははは……萎縮しちゃってるね。今日は、ヒカリくんの話を聞きながら、ダンジョン探索とするだけだから大丈夫だよ。いつものダンジョン配信と変わらないでしょ?」


「そう……ですね」


 あの後……


 企業勢への誘いを断る俺に、興奮状態になったタマさん。


 暴れそうになってる所を秘書やら、マネージャに止められていた。 それでも収集がつかず、最終的には事務所に来ていたダンジョン配信者数名に担がれると、落ち着くまで別室に閉じ込められていた。


 しばらくして――――


「やあ! 待たせたね、ヒカリくん!」


「大丈夫だったのですか? なんか、数人がかりで拘束され、運ばれていったような……」


「大丈夫、大丈夫。あんなの日常茶飯事さ」


「そう……ですか?」と困惑した。


 あんなのが日常茶飯事なら、スカウトを断って正解だったかもしれない。


「ん~ とりあえず、コラボ配信の打ち合わせをする? スカウトの話は諦めないけど」  


「え?」と俺は驚いた。 スカウトの話を断った時点で、コラボ配信の話もなくなると思っていたからだ。


「でも確か、コラボ配信は慈善活動じゃないとか…… お互いに利益がないと成立しないとか……」


「そうよ。あなたが会社に入ってくれれば私は万々歳だったのだけど……それがなくても、あなたには十分な価値があるのよ」


「価値? 俺に? ……ですか?」


「そうよ。 あなたは何者か? 今、その答えを世界が求めているのよ」


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


 そんなやり取りもあった数日後。約束通りにコラボ配信が始まった。


 事前に10分程度の軽い打ち合わせ(そんなに短時間なのか!)を終え、本番が始まった。


「それで、今日は見せてくれるの?」


「え? 何をですか?」


「おっと、とぼけますね。決まっているじゃないですか! 女性への変身ですよ!」


「ん~ あのドロップアイテムですか。持ってきていますけど……これ使うと10時間は男性に戻れないみたいなんですよ」


「ほら、ここ」と俺は兜の内側。 鮮血で書かれたような赤い文字を見せた。


「えっと……ちょっと読めないですけど!」


「あっ、これ古代エルフ文字って言うらしいです。妹に訳してもらったのですけど」


「妹さん、古代エルフ文字の訳できるの? えっ、すごっ! ヒカリくんって高校生でしょ? 妹さんは?」


「まだ、14才です。中学生の年齢ですね」


「ちゅ、中学生!? すごっ!!! ちょっと、その子を紹介してよ」


「妹はダメです」


「ダメかぁ」とシュンとする彼女。 急に切り替わったように笑顔になると、


「それで、他には、どんな効果があるの? 性別変換だけじゃないんでしょ?」


「えっと、周囲の魔素を吸収して、腕力と素早さ、魔力の向上————あと、1つ訳せなかった一文があるから……」


 俺は「簡単に装備しない方がいいと思います」と続きが言えなかった。


 なぜなら、


「はい!」とタマさんが手にした兜を俺にかぶせたからだ。


「うわっ!」と驚く俺は、黒い煙に包まれると――――


 女性に、それも10代前半くらいの女の子の姿に変身していた。


「な、何をするんですか! いきなり、タマさん!」


「まぁまぁ、そんなに怒らないで。ほら、コメント見てください」


「え?」と俺は目に写るコメントを見た。


『幼女キタ――――!』


『ヒカリたん可愛いよ! ヒカリたん!』


『こっちが正体で、普段が男装だろ!』


 凄まじい速度で大量のコメントが打ち込まれていた。


「うわぁ、セクハラコメントだらけだ!」


「だめですよ、ヒカリくん。我々は視聴者あっての配信者なのですから!」  

 

「いや、普通にこれは訴えたら勝てますよ」


「訴えないであげて、これ私の視聴者リスナーなのだから!」


 そんなやり取りをしながら、タマさんは――――


「はい、これプレゼント」と武器を渡された。 どこに用意していたのか巨大な武器だった。


「えっと……これは? タマさん?」


「やっぱり、小さく女の子用の武器と言ったら、ハンマーと大斧のどちらか悩んだのよね」


 彼女が用意した武器は大斧だった。 戦斧バトルアックスと言うのか?


「いや、こんなに大きな武器、俺じゃ使いこなせないですよ」


「ん~ とにかく、持ってみて」


 無理やり、手渡されると――――


「軽っ! なんの素材でできてるんですか?」


「もちろん、ダンジョンで採取された希少金属よ。値段は――――秘密よ」


 おそらく、兜の効果。 腕力の向上で軽く感じているのもあるだろう。


「えっと……それだと凄い高そうなんですけど、本当にいただいても?」


「いいのよ。君が有名配信者になったら……お返しは期待しているからね」


「ありがとうございます。必ず……有名になって、お返しをします!」


 俺は流れるコメント。


『幼女にでっかい武器はよく似合う』


『でた! タマさんのジゴロムーブだ!』


『さすがタマさん! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる! あこがれるゥ!』 


 それを見ながら、感謝を続けた。  

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