第2話、コンビニ定員の八村さん

私がお隣の坂本さんが出てこないことを気にして、

坂本さんの家の前にいると、


「すみません。警察です。山田坂本やまださかもとさんがいないとの事なので調査に参りました」


え?

混乱している私に警察が説明する。

「山田坂本さんが自宅から出てこないと、通報がありました。それも5件。一件目は体調不良だろうと見過ごしましたが、2件目、3件目と来るうちに、本当だと信じるしかなくなってしまって…」


悲しい顔をする警察が家の中に入ろうとしたとき、

「すみません。坂本さんがこの家から出てこない事って、と関係してるんですか?」

「…その可能性はないとも言い切れません。ですが、今日は、10/1。あの事件の犯人は出てこない日です。」

「確かに…」



私たちが話ているというのは、

ヴィランと名乗る人物が、殺人事件と強盗事件。この二つを9/1~9/31まで、毎年繰り返した』

という噓ともいわれている事件の事。

現在では童話ともいわれ、絵本にもなっている。



「はぁ。はぁ。はぁ。」

疲れた声とともにやってきたのは八村さんだ。

「どうしたんですか?!八村さん!八村さん!」

周りから人が集まってくる。


八村さんとは、コンビニ定員で、この町のアイドル的存在だ。

「ヴィランだ。ヴィランが来た!」

信じられない八村さんの言葉に人が離れていく。


「本当なんだ!信じてくれ!あっ」

八村さんが言葉を放った瞬間、八村さんが消えた。


しばらく沈黙が続いた。


「どういうことだ。ヴィランの時の事件と全く同じだ。誰か!はっきりと覚えている方!動画を取っていた方!」

警察が数人で叫ぶ。

「わ、私取ってました!」

女性が言う。

「お、おれも!」

男性が言う。

「じゃあその動画を見せてください。」

「い、嫌だね。俺の動画だ。個人情報だ。訴えるぞ!」

「わ、私も嫌だ。個人情報だ!」

そうだそうだ!という声が少なくない。

どうすればいいんだ。ヴィラン。なぜ10月にこの町へ来た?

なぜ!教えてくれ!ヴィラン!

心の中で誰もが叫んだだろう。だが、

ヴィランがその真実を教えてくれる日はきっと一生来ないだろう。

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