第12話 異次元の結界と十二神将

運命の日

一年は魔窟の森の入り口に集合させられている。

そこにはもちろん見知った顔もちらほら確認できる。


「メールで送った通りだが、軽く説明する」


学校側の教師たちが生徒の前に現れ、1-1クラスの担任がメガホンで話を始める。


「まず、今回のクラス対抗戦はどれだけクラスがポイントを稼げるかの勝負だ。

 ポイントは主に魔窟の森にいる魔物を倒し、魔石を集めて換金することで

 手に入る。

 また、この森にはいくつかのダンジョンがあり、そこに宝が隠されている。

 まぁ、察しろ

 殺しは無しだ。

 それ以外は特例を除き許す。

 クラス内で退場者が出た場合、クラスの総合ポイントから五万ポイントが引か    

 れる。

 武器、魔道具、魔法、スキル、”魔術式”なんでもありだ。

 期間は今日から一週間。

 健闘を祈る、」


時刻は九時。

クラス対抗戦が始まる時刻。

1-3クラスは各グループに固まって行動していく。


「始まったわね、」


「そうだな」


俺たちのグループも全員集まり、お互いに顔を見合って周りを見渡す。


「緊張しますね、、」


加波はそう呟いて身体を震わせる。

ここ数日あの件以降、加波はグループ内で溶け込むことが出来ている。

特に大友との仲は深まったようだ。

佐藤にも魔物使いのことを話し、理解を得ている。


「行きましょうか」


大友が先導して魔窟の森に入っていく。

太陽の日差しがあるにも関わらず森の木の葉に遮られてか、中は薄暗い。

俺はここで今回の作戦を思い出す。

俺たちのグループは道中魔物を狩りながらダンジョンを探し、攻略する。

5グループある中で、全グループがダンジョン探しに尽力するが、ダンジョンを攻略するのは俺たちのグループを含む2チームのみ。

他のグループは他クラスの動向を探り、魔窟の森内にいる魔物を狩るという役割を与えられている。

どれも危険な役割で、一人ひとりの活躍が重要だ。


「どう、地中に感知は?」


「いや、」


佐藤輝のスキル「索敵」で魔物の位置を把握することでダンジョンの位置を探る戦法だ。

「索敵」は世界的にも珍しく、重宝されるスキルなだけに活躍が見込める。


「神宮寺くん、あなたは回復以外で消耗しないでね」


「あぁ、」


大友は俺の魔力量を気にしているようだが心配は無用だ。


「ん?」


「なによこれ、、」


空が暗くなっていく。

開始時刻から一時間も経っていないが、太陽の光は消え、周りは真っ暗に染まっていく。


「おいおい、これじゃ見えねえぞ、」


誰かの作戦が実行された。

1-3のクラスにそんな作戦は無い。

つまり他クラスの作戦。


「一度身を寄せましょう!」


大友がそう声を掛けて四人は背中を合わせて息を飲む。


「火を起こすわね」


大友はそう言って手のひらに魔力を注ぐ。


「やめろ」


「え、?」


しかし神宮寺がそれを阻止する。


「なによ、」


「おかしい」


「だから何がよ」


「この結界は、」


明らかに生徒が成せる技ではない。

俺の目が脳内にそう訴えかける。


「佐藤君、索敵はどう?」


「誰か来る…」


「え、」


「凄いスピードでこっちに向かってる!!」


佐藤は頭を抱えながらそう叫ぶ。

スキル「索敵」は相手の魔力から位置を把握する。


「うえ”ぇ”ぇぇぇ」


大きすぎる魔力はそれだけで「索敵」使用者の脳を犯す。


「ちょ、ちょっと佐藤君!?」


「佐藤、索敵を解除しろ。

 大友、加波を頼む」


「え、」


「いたいた、魔物使い!」


笑みを浮かべた男が一瞬、目の前を通り過ぎる。


「なによ!?」


大友は加波の頭を身体で覆って身を潜める。

大きな金属音のような、何かがぶつかった音が森内に響く。


「ほう、俺の剣を耐えるか」


薄暗く、容姿の確認は出来ない。

しかし明らかに生徒ではない。

薄笑いと共に余裕すら感じる。


「誰だ?」


「名乗らなきゃならねえか?」


「その方が嬉しい」


「用件だけ話してやる。

 そこに居る魔物使いを渡せ」


「なぜだ」


「あん?

 魔物使いを殺すのに理由が必要か?

 そいつには人権がねえんだよ!」


男は加波の距離を詰める。


「!?」


大友諸共斬り刻もうとしていた剣が寸前で制止する。


「おいおい、マジか」


男は驚いていた。

自分の剣が素手で握られ、自由が利かないことに。

手元が一ミリも動かない。

男に一筋の汗が流れる。


「こりゃ、やべえ仕事受けちまったか?」


「大友、加波を連れて教師の下へ行け。

 こいつの、こいつらの狙いは加波だ」


「わ、わかった、」


神宮寺は剣を手放し大友たちの前に立つ。


「結界師か?

 いちいち驚かせてくれるなぁ」


普通、結界は両手で手印して帳を下ろす。

しかし神宮寺は違う。

片手で手印し、大友たちの周りに結界を張り巡らせる。


「お前何者だ?

 そんな結界を使える奴なんて、俺の知ってる限り”十二神将”か”大賢者”レベル 

 しか知らねえぞ」


「生憎だが、俺はそのレベルを知らない」


「あぁそうか、

 惜しい人材だが、死んでもらう」


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「作戦開始か、」


「こんなに早く開始して大丈夫だったのか?

 もっと生徒が疲弊してからでも、」


「上の指示だとこの森に慣れる前に実行しろだとよ」


森の各地で教師陣に気づかれないよう、男たちが結界を展開していた。


「しかし、大賢者の”孫”を捕らえろなんて、物騒なことするなぁ。

 邪魔な生徒は殺せってのも酷すぎやしねえか?」


「いいから黙って集中しろ。

 一ミリも結界を緩めるな」


結界はずっと手印をしなくてもいい。

しかし、より強力に結界を保つためには手印を結び続けなけばならない。

総勢12人が結界の手印を結び、あらゆる効果の結界を張り巡らせている。

まさにカオスな状態。


「そんな心配しなくても大丈夫だろ、

 何せ世界最強の”十二神将”がお出ましなんだから」

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