第9話 強者の微笑み
「良いのか、奢ってもらっても」
「良いですよ~、神宮寺くんは加波さんのお友達ですから!」
俺たちは今、カフェに来ている。
学生で溢れるカフェは落ち着くためと言うよりも、談笑をするための場所。
「学生ポイントは大丈夫なのか?」
「大丈夫です、多く持っています!」
話によると、どうやら齋藤は十二死徒「第一席」、つまり学園のTOPの
沙耶鈴 明菜と交友関係にあるらしい。
「第一席はどういう人なんだ?」
「そうですね、、お綺麗な方ですよ!
可憐で周りの生徒を率いていく姿、カッコ良かったです!」
「一緒にダンジョンに行っているんだよな?
第一席…沙耶鈴(さやすず)先輩はどうなんだ?」
「お強いですよ!
皆さんが知っているので言いますが、沙耶鈴さんは”悪魔持ち”ですから」
なるほど、情報は全学生には筒抜け状態か。
それでも尚、トップに居続けれるのは相当な実力を持っているからだろう。
「加波から聞いたが、強いらしいな」
俺は加波に視線を送り、齋藤に問う。
「全然だよ~、なに~?そんなこと言ってくれてたんだ~」
斎藤は加波に身体を擦り寄って甘え始める。
「事実だから、、」
「神宮司くんも、困ったことがあったら何でも言ってね!!」
「あぁ、その時は頼りにする」
斎藤は満面の笑みでニコッと顔を傾ける。
これが上級生や加波にも好かれる所以だろう。
完璧な学生、強さも可愛さも、礼儀も兼ね備えている。
いい人というのは凄く疲れるだろうな、
「これはこれは、」
ふふっと品のある小さな笑いが耳に通る。
「白石さん!」
可憐で品のあるお嬢様のような女子生徒が俺達に近づいていた。
その白石に気づいた齋藤は立ち上がり、手を握る。
「すみません、お話し中に」
「いいよ!久しぶりだね!」
その白石の後ろには三人の護衛とも呼べる生徒が周りを見渡している。
「初対面ですよね、お二人とも。
1-1クラスの白石 桜です」
それに続いて俺たちも自己紹介を終える。
「すみません、齋藤さんが男子とお話ししていたので、
つい、話しかけてしまいました」
「あ、そうなんだ!
全然いいよね!?」
「あぁ、」
「うん」
斎藤は俺たちに笑みを向け、軽く頷く。
「この前A級ダンジョンクリアしたんだってね!
おめでとう白石さん!」
「もう情報が渡っていたのですね。
ありがとうございます」
これは驚いた。
入学して間もない中、早くもA級ダンジョン突破とは。
何か異様なものを感じるが、詮索はしない方が良さそうだ。
「神宮司くん、連絡先を交換できますか?」
「え?」
唐突だった。
その発言に俺の前にいる二人は硬直する。
しかし、一貫して白石は小さく笑みを浮かべて俺を待つ。
「いいが、」
「ではぜひ、」
「あ、私も交換してなかったよね神宮司くん!」
「そうだな、」
そうこうする流れで俺は二人の女子の連絡先を得てしまった。
しかし大胆と言うか、何と言うか、
この数分で白石という人物に何度も驚かされている。
「では、あまりお邪魔してもあれなので、失礼しますね。
あと、見られていますので、女性方はお気を付けくださいね」
そう白石は助言を言い残し、頭を軽く下げて去っていった。
「見られてるって、、何だろうね?」
斎藤は周りを見渡して視線を探ろうとする。
「二人とも何か感じる?」
「いえ、、私は何も感じません、」
「俺もだ」
いや、本当はここに来る前から視線に違和感を感じていた。
というより、尾行されていた。
相手は一人。
ただ、憎しみとかそういうものではない視線。
俺に向けられているものでもない。
しかしその後二人は気にすることなく談笑を再開した。
「今日はいっぱい話したね!
私ちょっと用事あるから、あとは二人で楽しんでね~」
斎藤のその言葉で俺たち三人はお開きになる。
「齋藤、随分おしゃべりなんだな」
「そうですね、、」
「どうする、このまま帰るか?」
「そうですね、」
斎藤が居なくなると、会話があまり進まない。
俺もしゃべりは上手くないからな。
「作戦は頭に入ってるか?」
「今のところは、大丈夫です」
「なら安心だな」
ただ、あのことについては聞いておかなければならない。
「魔物使いの能力は出さないつもりなのか?」
バレれば何を言われ、何をされるか分からない。
しかし、クラス対抗戦では何が起こるか分からない。
出し惜しみはしない方が得策だ。
「出来るだけ、、そうですね、」
「そうか、出来るだけカバーはする」
「よろしくお願いします、」
周りは暗く、道は街灯と月の明かりだけで照らされている。
人気はなく、心地の良い風が首元を通る。
「悪い、少し用事が出来た」
俺はスマホを取り出し、画面を確認してそう話す。
「わかりました、」
「気を付けてな」
加波は頭を深く下げて寮の方へ向かって行く。
そして俺もそれを見届けてショッピングモールの方へと歩いていく。
「緊張したけど、、楽しかったなぁ~、」
私、加波静は安堵した。
この学園に入る前から自分の能力を理解してくれる人がいるか不安だった。
でも、今は二人もいる。
それだけで不安は解消された。
斎藤さんと仲良くなれたのも嬉しかったけど、神宮司くんと仲良くなれたのは
少し、、
結構嬉しかったり、、
「いやいやいやいや、何言ってるの私!」
加波は小さく呟いて頭を抱えて顔を真っ赤に染める。
「齋藤さんも、神宮司くんもお友達だから、、」
しかし加波は神宮寺のことを思い出しては頭を熱くして湯気をだす。
「お前、魔物使いなんだって?」
ふっと笑う声がした。
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