第5話 【天使・モデル「ミカエル」】

”悪魔持ち”

生物には悪魔が住み着く。

大賢者や勇者ロトなど、大物たちが身体に宿している”悪魔”。

その保持者のことを世間では”悪魔持ち”と言う。

その力は甚大で、とある国では悪魔持ちが管理されている。

その絶大な力を持ち合わせている人物がいれば、百人力どころではない。


「ちょっと待ってもらえるかしら、」


そこで待ったをかけたのは俺の隣にいる大友であった。


「もし悪魔持ちが居たとして、素直に話すかしら。

 今回はクラス対抗だけれど、元をたどれば個人の学生ポイントを増やすた

 めのもの。

 言い方が悪いけれど、クラス対抗戦が終われば敵になる」


十席の座を狙う者同士であれば、相手の情報を知り、自身の情報を渡したくないだろう。

クラス対抗戦の難しい所は割り切りの部分。

リスクを負って、自身の弱点を晒す覚悟でクラス対抗戦を戦えるかが鍵となる。


「そうだね、悪魔持ちについては一旦やめておこうか。

 魔術”、スキルについても話すのはやめといた方が良いかな?」


「私は話せる人だけが話せばいいと思ってる。

 私は悪魔持ちよ」


「え、」


「まじかよ、、」


大友のカミングアウトにクラスが少しどよめく。

それもそうだろう。

悪魔持ちがいるとなれば、クラス対抗戦での活躍は期待できる。

しかしその反面、悪魔持ちと言う才能を持った学生が、同じ十席の座を狙っているという事実にもどよめいていた。


「じゃあ作戦はどうしようか、」


その後、大友を含め何人かの学生が声を挙げて議論し合い、作戦が決まった。


「今決めた4人グループに固まってくれるかな?」


クラスの人数は20人で、5つのグループが出来る。

俺のグループは、 神宮寺零斗、大友夏目、佐藤輝、加波静。

男女2、2の面子である。

佐藤輝は眼鏡をかけており、先程の討論でも声を挙げて話をしていた。

加波は静かな学生で、おとなしいという印象。


「このグループは重要な役割を任されてる。

 隠し事は出来るだけ無しにしましょう。

 もちろん無理して言う必要はないけれど」


「そうだな、俺に魔術はなくて、スキルは「索敵」を持っている。

 だから敵の把握とかは任せてほしい」


佐藤輝は眼鏡のレンズを拭きながらそう話す。


「私は悪魔持ちと言ったけれど、悪魔は【天使・モデル「ミカエル」】

 魔術は火魔法と水魔法が使えるわ。

 スキルは剣術スキルを持ってる。

 剣術レベルは7」


「すげえな、、」


佐藤輝は改めて驚愕する。

火魔法などの魔法が扱える魔法使いは珍しい。

それも二つも持ち合わせる人物は相当限られる。

それに剣術レベルが異常に高い。


「俺は回復系魔法と、付与魔法を使える」


「なんだって!?」


佐藤は大声を上げて机を叩く。

大きな音にクラスは静かに佐藤を一目して、再び話を始める。

 

「わ、悪い、、

 しかし、回復系魔法を扱えるのか、、

 それに付与魔法なんて聞いたこともない…

 本だけの魔法だと思っていた」


「大したことは無いぞ。

 直せると言っても、完全に治せるのは切り傷程度だ。

 重症だったら延命にしかならない」


「いや、それでもすげえよ、」


回復系魔法を扱う者は国で重宝される。

一国家に一人いるか居ないかのレベルである。


「わ、私は、、」


加波は口を開けるが、うつむいてしまう。

それを気にかけてか、大友は背中をさする。


「言いたくなければいいのだけれど、、」


「今は、、言えないです」


そう言って加波は黙り込んでしまう。

俺たちもそれ以上追及することなく、作戦について話し合いを始めた。

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