第4話 悪魔持ち

ダンジョンエラーから一日が経ち、周始めの授業が始まる。

隣では包帯を頭に巻いた大友の姿。


「大丈夫か?」


友人の様に気軽に話をかけてみる。


「お陰様で、

 借りが出来てしまったわね」


「借り?」


俺は借りなど作った覚えはないが…


「あの後私を治療してくれたと聞いたわ。

 回復系の能力を持っているのね」


「あー、まぁ借りってほどでもないだろ」


おおよそ同行していた女子から聞いたのだろう。

俺は救急隊に運ばれるまで治療し、その光景を見られていた。

あまり人前では見せたくなかったが、、


「いいえ、治療してくれなければ死んでいたと言われたわ。

 借りと言わざる負えないわ」


意外に義理堅い…


「だったらもっと仲良くして欲しいんだが。

 俺には友達がいないからな」


現状遊ぶ相手も、友達と呼んで肩を組める相手も居ない。

恥を承知で俺はNOT友達をカミングアウトする。


「そうでしょうね、、まぁ、はいじゃあ友達で、とはいかないでしょうけど。

 馴れ合わない程度で仲良くしてあげてもいいわよ」


恥を忍んだカミングアウトが軽くあしらわれた。

こいつはいつまでも上から目線だ。

まぁ気に障るわけでもない。


「じゃあ、よろしく」


しかし交友関係など、興味もないのか。

大友は続けて自分の疑問をぶつける。


「それより私が昨日オークを倒したとき、明らかに魔力が強まったのよ。

 あなた、何かした?」


「いや、なにも」


”付与魔法”のことを言っているのだろう。


「そう、なら良いのだけれど」


一昨日のオークの報酬として俺は3万の学生ポイントを獲得した。

学園の順位は159人中104位だ。

節約し、大幅な学生ポイントを一日で入手できたことが大きいが、十二死徒の席を取るには程遠い。


「はいおはような、

 ほんじゃあ、ちょっと重要なこと言うから、聞いといてなぁ」


担任の倉橋が頭を掻き、話をしていく。


「急遽やけど、一か月後からクラス対抗戦が始まる。

 学園の敷地内にある「魔窟の森」、そこで競い合ってもらうから。

 まぁ簡単な話、その森の魔物を倒して他クラスよりポイントを稼げってやつや。

 今お前らの携帯にメール送ったか見てくれ」


そう言われ、俺たちはスマホを取り出して画面を確認する。

メールの通知が一件あり、メール内に添付されたファイルを開く。


「そこに書いてある通り、3クラスで競い合う形や。

 一位のクラスはそのクラス一人当たり30万ポイントがもらえる」


「な、なんだそれ!?」


一人の生徒が目を見開いて席を立つ。


「勘吉、ちょったぁ落ち着け」


「あ、すんません」


クラスは笑いに包まれ、勘吉は席に座る。

このクラスもだれがどんな人物か分かり始め、いくつかのグループが出来ている。

今回のクラス対抗戦はクラス内での団結力が必須となる。

今のようにクラスが一つになってくれればいいが…


「二位のクラスは10万ポイント。

 最下位のクラスはマイナス10万ポイントや」


「え、、」


空気が変わった。

先程まで笑いあっていたクラスの陽気な空気は無く、

自分たちのクラスが最下位になり、自分の学生ポイントが10万ポイント減らされる可能性に怯え始め、空気が凍り付いていく。


「ちょ、それはきつくないすか?」


勘吉が後頭部を掻きながら顔を引き攣らせる。


「これは決定事項だ、俺が決めたわけじゃない。

 言うなら上のもんに言ってくれ」


しかし上に言っても無駄なことは誰でもわかる。

倉橋の話が終わると、クラスは顔を見合う。


「ちょっと良いかな、」


そう手を挙げて立ち上がったのは谷口 浩。

女子からの人気が高く、同性からも信頼を置かれている人物。

クラスを仕切るには持って来いの人材だ。


「まず確認しておきたいことがある。

 この中で”悪魔”持ちはいるかな?」

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