第3話 ダンジョンエラー

ここ魔法教育高等学校の敷地内にはショッピングモールや魔道具屋に、豪華な飯屋、冒険者ギルドなど、敷地外で必要になるような施設が全てそろっている。

そしてそれはダンジョンも同じく存在し、D級、C級、B級、A級、S級ダンジョンの四つが設けられている。

敷地内にある店などで買い物をするには学生ポイントを消費しなければならない。

その学生ポイントを集めるためには

① ダンジョン内で魔物の魔石や素材、宝などを集めて換金する。

② 決闘での奪い合い。

③ 第三者による決闘の勝敗の賭け。

④ クラスポイントを稼ぐ

⑤ 商品の売買

⑥ 定期的に行われる試験にてその都度のルールによって与えられる

⑦ その他例外を含む

この七つから学生ポイントを稼がなくてはならない。

俺たち新入生は幸い入学時に20万の学生ポイントを与えられているため、数か月は不自由なく暮らしていけるだろう。

学校側の配慮だろうが、ぬるま湯につかって足を掬われることだけは避けたい。

早いうちに余裕のある学生ポイントを集めるべきだろう。


俺は魔道具店に向かい、短剣を1000ポイントで購入し、ダンジョンへと向かった。


D級ダンジョン。

階層は20階層ほどあり、適正者は冒険者ランクE~D級の者とされている。

A級のダンジョンを攻略したかったが、D、C、Bと順に攻略していかなければならない。


「入る勇気がないの?」


後ろを振り向くと、隣人の大友がこちらを鋭い目つきで見ている。

いや、鋭い目つきはいつものことだろう。


「別に勇気がないわけじゃない。

 少し整理をしていた。

 お前も行くのか?」


「えぇ」


単調な返し。

こちらに好意は無しと見える。


「よかったら一緒に、」


「いやよ」


軽くあしらわれて大友はダンジョンへと歩いて行った。

そして俺もその後ろに着くようにダンジョンへと歩いていく。


ダンジョン内は広く、石造りで出来ており、階層を下ることで攻略していくことになる。

緑色の肌をしたゴブリンや剣を装備したスケルトン。

冒険者初心者が相手にする弱い魔物がダンジョン内を周回している。


「閃光」


大友は身体を光らせると、素早い動きで魔物の首を切り裂いていく。

この様子から見ても大友は光関係のスキルを持っていると推測できる。


「随分と大技を使うんだな」


「ウオーミングアップよ。

 それと着いて来ないでと言ったはずよ?」


「そう睨まないでくれ」


どうやら相当嫌われているらしい。

しかし、このままクラスメイト、更には隣人との関係を悪化させたままには出来ない。


「頼む、一緒に攻略したい」


「人に頼むような態度には見えないのだけれど。

 まぁ良いわ。

 着いて来れたらの話だけど」


意外にやさしいのか?

そう考えがよぎったのも束の間、

大友は素早い動きで行動していき、魔物を狩り始める。


(噓でしょ、、)


大友は驚愕していた。

それもそのはず、自身のスピードに着いて来れる人と出会ったことがなかった。

そのスピードに着いて来れている零斗は息も上がっていない様子。


「ここで最後か」


最下層にて、ボス戦が待ち構えているであろう門の前で二人は居座っていた。


「あの~、、」


さて行くかという時に、女子三人組から声を掛けられる。

どうやらボス戦が不安なようで同行したいとのこと。

俺たちは軽く了承して、ボス戦の門の扉を開ける。


大きく広がった部屋。

魔物の壁画が描かれており、不気味さが増している。

そして中央には三体のオークが棍棒を持ってこちらを伺っている。


「楽勝ね」


そう大友が呟いた瞬間、大きな音と共に砂煙が俺達を襲う。


【エラー発生 エラー発生】


不快な音が脳を駆け巡る。

砂煙が引くと、中央にはオークの死体とその上に立つ巨大なオーク。

肌の色は赤黒く、普通のオークとは体格も肌色も違う。

そして明らかに空気が変わった。

部屋中にオークの魔力が走り、緊張感が増していく。


「どういうこと、、」


その圧は明らかにD級のボスには出せない威圧である。


「まさかダンジョンエラーが来るなんて、、」


大友は少し下に俯く。

明かな戦力さ。

そのことを大友は誰よりも感じていた。

同行することになった女性生徒たちは腰を抜かし、涙を拭うことも忘れている。


「まずいんじゃないか?」


「えぇ、非常にね」


大友は細剣を鞘から抜いて構える。


「グォォォオオオオオオ!!!!」


咆哮は部屋を、ダンジョンを揺らしているようだった。

そして大友の初手が鈍る。


「早い、」


オークは大友に狙いを定め、距離を縮める。

その素早さは巨体に似合わず閃光の様だ。


「くっ、!」


勢いのあるオークの拳を大友は細剣の先で受け止めるが、耐えることは出来ずに後方へ吹き飛ばされる。


「いやあああああああ!!!」


その光景に女子生徒は悲鳴を上げて目を覆う。

大友は血を吐き、膝をついて呼吸を整える。


「安心しなさい、私が何とかするわ」


しかし安心できる状態ではない。


「仕方ないか、」


零斗は小さく呟き、手のひらを大友に向ける。


今にも倒れそうな身体は口でしか威張ることが出来ない。

これが現実である。

それは一番に大友自身がわかっている。

だからこそ、驚いた。


「閃光」


無理に絞り出した技。

しかし、大友の身体は想像を凌駕する。


「グハァアア!!!」


大友の細剣はオークの首を貫き、切り裂く。

更に身体中に傷を付けていき、頭上に細剣を突き刺す。

オークは叫ぶ間もなく切り刻まれ、絶命する。


「や、やったの、、?」


大友は薄く目を開けて息を荒くそう呟くと、気を失う。


「おっと」


俺は大友の身体を支え、抱き上げる。

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