第2話 学園のルール

「嫌な偶然ね、ストーカーなの?」


「さっき大丈夫か?って話しかけただけだろ。

 ストーカー認定は早すぎるんじゃないか?

 それにこの席は学校指定だ」


嫌そうな顔で俺の隣の席に座るのは、先ほどの女学生。

まさか隣の席だとは、、


「容易く話しかけないでもらえるかしら?

 友達だと勘違いされたら困るから」


「努力する」


どうやら俺はとんでもない奴の隣になってしまったようだ。

隣の席と仲良くなるという淡い理想はすぐに消え去った。


「席に座って貰えるかな?」



ボサボサ髪の男が頭を掻きむしりながら教壇の前に立ち、そう言葉にする。

しかしその気の抜けた声は、学生たちの話し声によって掻き消される。

するとその男は口角をを上げて口を開く。


「いいからちょっと黙れや」


静かな声量であった。

しかし、クラス内にいた全員はその声を耳にした。

空気が一変したクラス内には静けさが訪れる。


「凄い魔力だな、、」


クラス内を駆け巡ったのは異質な魔力。

その魔力に話をしていた生徒の身体は震えあがり、口を開くことが出来ない。


「ごめんごめん、別に怖がらせるつもりはないよ。

 皆さん、席に着いて貰えたかな?」


笑いながら話すと、生徒たちはそそくさと自分の席に着席をする。


「全員おるな。

 俺は1-3クラスの担任の倉橋 宗や。

 よろしゅうな。

 早速やけど、この学校のルールについて説明をするから、よう聞いといてや」


眼鏡をクイっと上げると、倉橋は椅子に座って資料に目を向ける。


「この魔法教育高等学校には全学生にランキングが付けられてるんや。

 そのランキングは”学生ポイント”の多さによって決められる。

 そしてこの学園の全学生のTOP12人には名称が付いてる。

 ”十二死徒”っていう名称がな。

 その十二死徒になったら、学園内外でいろいろ恩恵を受けれることになる。

 そして十二死徒のまま卒業することが出来た学生はその特典として

 ”世界貴族”になることができ、何でも一つ世界政府が叶えられる範囲内で

 願いを聞いて貰える。

 大雑把に言えばこんなもんかな」


この説明を受け、クラス内は騒然とする。

世界貴族はこの世界の神であると言っても過言ではない。

世界政府が後ろ盾の下、すべての行為が許され、最大限の生活の保障がなされる。

人類の目標と言っても過言ではない。

そんな世界貴族にこの学園のTOP12になるだけでその称号を与えられるという

ことは破格と言えよう。

人類が喉から手が出るほどの称号である。


「みんな十二死徒になりたいやろ?

 なる方法は大きく分けて二つある。

 一つは学生ポイントで十二死徒のポイントを抜くこと。

 もう一つは”決闘を挑むことや」


そう言い終わると、学生から挙手と共に声が上がる。


「決闘というのは?」


「まぁそんな慌てんな。

 決闘っていうのは学園内の争いごとを解決するための一つの手段や。

 決闘を申し込み、相手が了承すれば決闘は成立する。

 それから、決闘を申し込んで相手に拒否された場合も、異議申し立てにより

 学園側が正当な理由として認めれば、決闘は成立する。

 何を賭けるかは自由や。

 決闘の内容は戦闘。

 つまり強い奴が決闘を制すると言っても過言ではないな。

 まぁそこらへんは頑張ってくれ。

 これぐらいやったかな。

 まぁ配布されたスマホのアプリから学園の情報を随時確認できるから、

 確認しておくように」


そう言うと、倉橋は教室から呑気に出て行く。


「期待外れね」


そう隣の女学生が呟く。


「期待外れ?」


「えぇ。クラスの反応的に大多数の生徒は今の情報を今知ったと伺える。

 この情報は事前に学校の掲示板に掲載されていることよ?」


「確かにな」


俺もこの内容については昨日の段階で確認をしていた。

クラスの反応的にも、情報を確認していない生徒は多くいる。

これだけでもクラスのレベル、学校レベルのたかが知れるという話。


「ところで、名前はなんて言うんだ?」


俺はそう話しかけるが、隣人は聞こえていないのかだんまりを決め込む。


「名前は何て…」


「何度もしつこいわね。

 無視していることがわからないのかしら?」


酷いなぁ。

しかし、話をする仲にまで発展した人の名前も知らないというのはちと不気味だ。


「さすがに隣人の名前を知らないままで居たくはないんだが」


「大友夏目よ」


「俺は神宮寺零斗。

 よろしく」








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