2体験目_枕元の女性
みなさん、私の1つ目の体験談はもう読まれただろうか?
何か身の回りでおかしな出来事は起こっていないだろうか?
私があれだけ注意喚起したのだから何が起きてても恨みっこ無しだ。
さて、今回も私の身に起こった不思議な体験をみなさんにお話ししようと思う。
楽しんで聞いていただければ幸いである。
これは私が小学生の頃に体験した話である。
私の父親は、休みの日になると私を遊びに連れて行ってくれた。
公園でキャッチボールをしたり、ドライブに連れて行ってくれたり、おもちゃを買いに行ってくれることもあった。
私は、父と過ごす休日がとても好きで毎週土日が来るのを今か今かと楽しみにしていた。
ある時、父が私にある提案をしてきた。
それは今度の土日に自転車旅をしないか?というものであった。
もちろん私は、「行く!」と即答した。
こうして私と父の親子自転車旅開催が決定したのである。
この自転車旅は目的地を隣県に設定していた為、土曜と日曜の2日間で行われた。
1日目は隣県に入ったすぐの場所で1泊し、次の日に目的地に着く計画だった。
ちなみに帰路は、母が車で迎えにきて来れることになっていた。
そして待ちに待った土曜日になり、親子自転車旅が開催されたのである。
1日目の自転車旅は順調そのものだった。
天候にも恵まれ、何事もなく夕方にはその日の目的地であるホテルに到着した。
その地域では人気のあるホテルで外観も新しく、ロビーや部屋も綺麗だった。
さらに繁華街に建っていたこともあり、周りも賑やかでゲームセンターなどの娯楽施設もたくさんあった。
「すげー!」
私は部屋の窓から街の様子を見ながら、ワクワクする気持ちを抑え切れずにいた。
もし私が子犬なら、尻尾がちぎれてしまいそうになるくらい振っているだろう。
そんな姿が見えたのか、父は私に向かってニコリと笑いかけ、
「よし!ご飯行くか!」
と一声かけてくれた。
私も元気よく「うん!」と返事をしホテルの部屋を後にした。
私たちカウンターの寿司屋に行き、心ゆくまで寿司を堪能した。
その後ゲームセンターに寄り、ホテルの大浴場で一日の旅の疲れを癒した。
明日も朝早くから出発するということもあり、二人とも夜10時ごろにはすでにベッドに入ろうとしていた。
その頃、私がまだ小さかったという事もあり、2人で1つのベッドで眠ることにした。
暗くなった部屋にスースーという父の寝息が聞こえてきた。
いつものベッドではないからか、私は寝付くまでに少し時間がかかってしまっていたが、
1日中自転車に乗っていた疲れもあり、段々と意識が薄れていき夢の中へと引き込まれていった。
もう少しで眠りにつけると思った時、私の全身が奇妙な感覚で支配された。
どれだけ身体に力を込めても動くことができないのである。
いわゆる金縛りである。
私は全身に力を込めたがぴくりとも動かない。
さらに体が動かないだけでなく、声も一切発することができなかったのだ。
[どうしよう。何もできない]
私は一気不安な気持ちに襲われて、唯一自由に動かすことのできた目を父に方に向けた。
しかし父は何事もないかのように眠っていたのである。
するとその瞬間、コンコンと誰かが部屋の扉をノックしたのである。
[こんな時間に誰か来た…?]
おかしい…、こんな時間にホテルの人が部屋に来るはずがない。
小学生の私でもすぐにそう思った。
その一方で、[この音で父が起きて、様子のおかしい私に気づいてくれるのではないか!]
という淡い期待も同時に持っていた。
しかし、その淡い期待はすぐに砕け散ってしまった…。
ノックの音が止まらないにもかかわらず父が一向に目を覚さないのである。
[自転車で疲れて気が付かないのか….]
そう思った瞬間、今度は勢いよくドアがドンドンドンと叩かれた。
誰が聞いても明らかに異常なほどの強さであった。
[これはホテルの人が叩いているのではなく、別の何かが扉の前にいる…。]
私はそう確信し、再び父の方を見た。
しかし、父は微動だにせず横たわったままであった。
[どうして気がつかないんだ…?こんなに大きな音がしているのに。]
私はどうしたらいいのかわからなくなり、恐怖で泣き叫ぼうとした。
しかし金縛りのせいで私は泣くことさえできなかった。
[もうどうする事もできない…。]
私がそう思った時、ドンドンと扉を強く叩く音がスッと無くなった。
[なんだったんだ…。まさか小さい時に夢で見た奴が何かしたのか…?]
私は今までずっと忘れていた夢のことを思い出していた。
[もし今夜の出来事に奴が関係するのなら、これから先も同じような体験をするのではないか。もしそうなら今後どうすればいいんだろう…]
急に不安になって横で寝ている父を起こそうとしたが、体が全く動かない。
それから何回か起きあがろうと試みたが全く体が言うことを聞かなかった。
先ほどの金縛りが解けてなかったのだ。
[なんで…、扉を叩く音は鳴り止んだのに体が動かないんだ]
予想もしていなかった展開にパニックになってしまっていた私の顔に白いカーテンのようなものが覆い被さってきた。
[なんだ?白いカーテン?なんで?]
パニックで何も考えることが出来なくなった私は恐る恐る視線をあげた。
その時、私は気が付いていなかったのである。
この部屋には白いカーテンなんかついていないことを…。
私の視線の先には、白い顔の髪の長い女の人が立っていた。
そして私に一言だけ言い放った。
「ツギハ、ツカマラナイデネ」
私はその言葉を聞いた瞬間気を失ってしまった。
再び目を覚ました時、あたりは明るくなっていた。
父は起きた私に気が付いて「昨日はよく寝れたか?今日はもうちょいでゴールだからな!」
と言っていた。
私はすぐに父に昨日の夜の出来事を話した。
すると父は大きな声で笑い、それは夢だと言ってきた。
私は父に本当だと反論したい気持ちでいっぱいだったが、それよりもその部屋から早く出たかった。そのため反論することをやめ急いで支度をしてそのホテルを出発したのである。
自転車旅自体は何事もなく終了した。
私は車で迎えにきてくれた母親にも昨日の夜の体験を話したのだが、相手にされなかった。
そこで私は決心したのだ、今後、私の身に何が起きても誰にも言わないでおこうと…。
大人になった今もあの夜のことは忘れられない。
そう…、忠告してきた枕元の女の人の楽しそうな顔を…。
今回の体験談はどうだっただろうか?
この夜をきっかけに私への奇妙な体験は指数関数的に増えていったのだ。
それはまた今度にでも話をしよう。
今でもあの女の人は、『本当に忠告してくれていたのか』それとも『狩りを楽しんでいたのか』どちらかわからない。全てが謎なのである。
ただ一つ言えることは、そのホテルはまだどこかにあるということだ。
みんなもホテルに泊まる時は気をつけた方がいいかもしれない。
[ツカマラナイヨウニ]
ではまた次の話でお会いしよう。
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