第53話 呼び出し(1)

「おし、帰るか」

「あっ、僕はちょっと……」


 言いよどむ僕の顔を佑が覗き込む。

 そして、「うん」と頷いた。


「じゃ、お先にな」

「また明日」


 佑は深入りしてこない。

 いつも通りのなにもない顔でサヨナラする。

 だから、僕も普段通りに振る舞える。


 さてと――。


 佑に先に帰ってもらったのは、この後に用事が控えているからだ。

 昨日、こんなDMをもらった――。




 ひでお君へ


 DMを解放してくれてありがとう。

 今までずっと伝えたい想いがありました。

 他の人には知られたくないけど、ひでお君には伝えたい。

 でも、実際に伝える勇気もない。

 一年以上ずっと悩んでいました。

 だけど、この機会を逃したら、もう伝えられない気がしました。

 だから、勇気を振り絞って伝えます。


 私は三回、ひでお君と出逢いました。


 三回目の出逢いは、ヒーローのひでお君です。

 ダンジョンでピンチを救ってくれました。

 ひでお君は命の恩人です。


 二回目の出逢いは、配信者のひでお君です。

 ひでお君の配信を観て、私も探索者になりました。

 ひでお君のひたむきな姿に私は元気をもらいました。


 そして、最初の出逢いは、同級生のひでお君です。

 入学式の日、困っていた私を助けてくれました。

 新しい高校生活への不安を、ひでお君の笑顔が振り払ってくれました。


 どれも神様がくれた偶然ですが、三回続くと――信じてみたくなっちゃいます。


 実際に会って、お礼と私の気持ちを伝えたいです。

 明日の放課後、図書室で待っています。


 小坂マヤ




 ヒーローバレする前『えつくすー』のフォロワーは二人だけだった。

 一人は佑。そして、もう一人がこのDMをくれた小坂マヤさん。


 DMに書かれている通り、彼女は配信初期からのフォロワーだ。

 ライブ配信に来てくれたり、アーカイブにコメントを残してくれたり。


 ただ一人といってもいいほど、彼女だけが僕を応援し続けてくれた。

 彼女がいなかったら、心が折れて、配信を止めていたかもしれない。


 彼女は僕に助けられたと言っているけど。

 僕も彼女に助けられた。

 彼女は僕の恩人だ。


 まさか、彼女が同級生だったとは……。

 僕の頭の中に、ひとりの女の子が浮かぶ。


 図書室。

 小坂マヤ。

 こさかまや。


 僕はドキドキしながら、図書室へ向かった。






   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『呼び出し(2)』

コロっとナっちゃって短めです。

明日更新できなかったら、ごめんなさいm(_ _)m



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