第49話 池袋東口ダンジョン(2)

「最低でも四刀流、それ以上に挑戦したいと思いますよね?」


”は?”

”え?”

”なに言ってんの?”

”ちょっとなに言ってるかわかんなかった”

”耳から入った音を脳が拒むwww”


”少ないってそっちの方w”

”いや、四刀流とか不可能だろw”

”フィクションだから三刀流できたわけでw”

”それ以上に挑戦www”

”アシュラマンかな?”

”さすがにひでおでもそれは……”


「一番簡単な四刀流として、クアッドスケルトンみたいに腕が四本あれば誰でも出来ますよね。ですが、人間は腕を増やせないのです」


”そりゃなw”

”「まずは腕を生やします」じゃなくて良かったw”

”ひでおにしては普通の発言で逆にビビったww”


「そこで、ヒーロースーツにそんな機能を付けられないか助けるマンに訊いてみたのですが」


”なんかそんな配信者を見たことある”

”ガジェットで義手みたいなので腕四本にしてた”

”ひでおもそのパターンか?”

”助けるマンなら作れるだろうしな”


「助けるマンの答えは『出来なくはないけど、それ必要?』でした」


”助けるマン的確すぎるw”

”バッサリ切り捨てられたww”

”ヒーローに関係ないしwww”


”そして作ろうと思えば作れる助けるマン”

”頼んだら、一日で作ってくれそう”

”助けるマン、俺の彼女を作ってくれ!”

”↑出来なくはないけど、それ必要?”

”草”

”www”

”wwwww”

”酷くない?”


「たしかに、その通りですよね。完全に僕の趣味ですし。それに腕を増やすという解決法にも問題が残ってます」


”ふむふむ”

”ああ、そうそう”

”あれか!”

”↑絶対に分かってないw”


「それは腕を増やす方法だと、腕の数までしか剣を握れないということです」


”そりゃそうだ”

”いたって普通の発言だな”


「指の間に複数本挟めば刀を複数持てますが、それなら鉤爪バル□グでも装備した方がよっぽどマシです」


”学校で鉛筆を挟んで真似したなあw”

”カーテンよじ登って飛んでみたw”

”ヒョーー”

”俺の世代はウ○ーズマンだったな”


「腕を増やす方法では、五刀流、六刀流と増やすには、その度に腕を増やさなきゃならないので非効率ですよね」


”おっ、おう”

”まあな”

”四刀流をしようとしてるヤツが非効率とか(笑)”


「そこで、二本の腕で四刀流を実現するにはどうすれば良いか、考えて、練習して、なんとか使えるようになりました」


”考えて、練習すると、なんとか使えるらしい”

”それでできたら誰も苦労しない”

”ひでおだからなあ”

”まず、四刀流をやりたいという時点で間違っているし、出来る方法を考えるのもおかしいし、練習するのもわけわかんないし、使えるようになるのが意味不明”

”常人とは歩む道が違うんだよな”


「それが嬉しかったので、皆さんに見てもらいたいというのが、今回の配信です」


”渾身のニッコニコ笑顔”

”癒やされる~”

”こんな笑顔見せられたら、コッチまで幸せになるわ”

”やろうとしてることクレイジーだけどなw”


「今日、使うのはクアッドスケルトンが落とした四本の剣――『死骨剣』という名前だそうです。四刀流を試そうと思ったのは神保町ダンジョンでこれをゲットしたからです」


”ああ、あんときの縛りプレイw”

”↑縛りプレイって?”

”↑剣を壊さないように敵の攻撃全回避で腕を砕いた”

”クアッドスケルトンってそんな方法で勝てるんですか?”

”そもそも、ソロで勝てる相手じゃない”

”『十二騎』の五人でも、まったく相手にならなかった”

”本当にそんなことできるんですか?”

”ひでおだから”

”ひでおだから”

”ひでおだから”

”ひでおだから”

”ひでおだから”

”あり得ないと思ったら、アーカイブ観れば良い。答えはそこにある”


”もし、ドロップが6本だったら、六刀流を狙ってたんだろうな”

”あり得るw”

”普通にやりそうw”


「それで試す相手ですが、できれば同武器のクアッドスケルトンが良かったのですが――」


”クアッドスケルトンが練習台w”

”クアッドスケルトン「えっ、ボク?」”

”これ以上、クアッドスケルトンを虐めないでwww”


「クアッドスケルトンはエンカウント率が低いので、ライブ配信には向かないんですよね」


”練習台のために狩られるクアッドスケルトン”

”イレギュラーってなんだっけ?”

”そんなにぽこぽこエンカして堪るかwww”


「そこで、活きの良いモンスターを用意しておきました。こちらです――」


 配信端末を反転させ、そのモンスターを映す。


「はい、ギガントオーガです」


 額に2本のツノが生えた鬼。

 体長は2メートルとさほど大きくはない。

 その分筋肉は分厚く、四本の腕が生えている。


”こわいこわい”

”画面越しに殺気が伝わってくる。”

”おちっこ漏れそう”

”もう漏れた”

”クアッドスケルトンより強くね?”

”ギガントオーガなんて聞いたことない”

”オーガの最上位種か?”


「こいつも四本腕の四刀流。クアッドスケルトンの上位互換ですね」


”いやいやいや”

”サラッととんでもない発言”

”こんな強いモンスターが配信されるの初めてじゃね?”

”本題の前にとんでもないことやらかすのがひでお配信”

”ここ切り抜きだけで軽く百万再生越えるだろw”

”また協会からなんか言われそう”


「ええ、今は鎖で縛っているので、動けません」


”ホントだ”

”ガチガチに縛られてる”

”まったく動けないな”

”唸り声上げてるだけ”

”その声だけで、鳥肌が凄いことになってる”

”俺も怖くてディスプレイから離れた”

”気持ちはよく分かる”


「やっぱり、皆さん、おわかりですよね。この鎖も助けるマンが作ってくれました」


”知ってた”

”またまたとんでもないガジェットを”

”助けるマンなら余裕”

”助けるマン「仕事の合間に作っておいたぞ」”

”二人ともサラッととんでもない化け物だよな”


「ギガントオーガも四刀流なので、丁度いい対戦相手です」


”×対戦相手 ○練習台”

”ギガントオーガに同情するわ”

”腕が四本あるだけで目を付けられてかわいそう”

”ギガントオーガ、ジャイアントキリングを見せてくれ!”

”ひでお配信はモンスターを応援したくなるよね”


「本来は深層中部に生息するモンスターです」


”深層中部?”

”ソロで深層中部w”

”むちゃくちゃレアな配信じゃん”

”ガチ勢も注目してるだけある”

”どうりで誰もギガントオーガを知らないわけだ”


「ただ、深層中部は結構モンスターが出るから、ジャマされて撮影に向かないんですよね」


”撮影に向かない深層中部www”

”モンスターがジャマだからwww”


”深層中部で全力狩り動画観たい!”

”そういう無双動画も観てみたよな”

”ヒーローも良いけど、ガチバトルも観たい”


「なので、ここ深層入り口付近まで引っ張ってきました」


”意味不明w”

”理解不能w”

”深層でやることじゃないwww”

”モンスター釣りもテクニックだけどさあ、言葉の使い方絶対に間違っている”

”モンスター釣りってなんですか?”

”一人が囮になって、モンスターを戦いやすい場所まで引っ張ってきて、数人でボッコする戦術”

”ひでおの場合は鎖で雁字搦めにして、引きずってきたんだろうな”

”ひでお「物理で引っ張ってきました」”

”やっぱり、かわいそう”


”でも、この場所だってモンスター出るだろ?”

”安置か?”

”ひでおだから余裕そうにしてるけど、深層は浅いところでも油断したら即死”


「あっ、それは大丈夫です。ここら辺のモンスターは間引きしておきましたので、1時間くらいはモンスターが出現しないです」


”深層で間引きw”

”大量虐殺だろw”

”あいかわらず意味不明で草”

”他の探索者、今がチャンスだぞ”

”誰か見に行ってくれ”

”いや、そんな気軽な場所じゃないしwww”


「というわけで、さっそく四刀流を試してみます」






   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『池袋東口ダンジョン(3)』


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