私の卒業旅行

 私は今、朝日が差し込む釧網線に乗っている。

 北海道を回る旅は、ただひたすら列車に乗り続けるものになっているが、私はそれが楽しかった。

 水平線の際に立つ朝日を見ながら、私は目を細めた。


 私は、卒業旅行に北海道を回る計画をたてた。

 誰も一緒ではない。私一人だ。

 そもそも、こんな何の見どころもない日にちだけがやたらかかる旅行に知り合いを連れていけない。

 この旅行に、特に意義などはない。

 ただ私が、北海道の中で行ったことが北海道の地を回っておきたかったというだけだ。

 私は、四月から本州の企業に就職することになった。

 だから、北海道を離れる。

 北海道を離れたら、北海道を訪れづらくなるだろうことは予想できた。

 だって、逆に北海道から本州に行くのはとても大変なのだから。

 この北海道にいる今北海道の地を回らなくて、いつ回れるというのか。

 そういう思いが沸き上がってきたら、あとは勝手に行動していた。

 乗車券を買った時に、札幌→札幌となったのには、さすがに驚いた。

 こういう券もあるんだな、と妙に感じいっていた。

 その切符を改札に通した時、旅が始まったのだとワクワクした。

 しかし、それで始まったのは、非常に長い鉄道乗車に耐える旅でもあった。

 さすがに、四時間以上車内に座りっぱなしなのはきつかった。

 ほぼ車両に誰もいないので、貸し切りのような気分を味わえたのはとても良かったが。

 だが、そんな工程を経て得たこの景色は、最高のものだった。

 この景色は、きっと一生忘れないだろう。

 そう思って、進んで三時間強の後。

 無事に目的地である網走に着いた。

 流氷が見たくて、能取岬へ向かった。

 タクシーに乗って来る途中から、雲行きが怪しいとは思っていた。

 タクシーから降り立つと、一面真白の世界だった。

 吹雪で、全く周りが見えない。

 冬の北海道の天気は変わりやすい。

 それはよく知っていたが、何もこんな時にタイミング良く変わらなくても……。

 私は呆然と立ち尽くしていた。

 少し待ったからと言ってやみそうもない。

 だが、私は少しの間、そこから離れられなかった。

 もう、せっかく来たのに、なんでだよー。

 私は泣きたくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る