セフレ
ホテルの一室に入った健太郎は、ベッドに倒れ込んで、そのまま眠ってしまった。
喉が渇いたと目を覚ますと、隣に鍋倉が寝ている。
――ウソ。あれって、やっぱ夢じゃなかったのか。
目を閉じても、イケメンはイケメンなんだな。と、つまらないことを思いながら、冷静に頭を働かせる。
昨日は、だいぶ酔って、鍋倉に対して、変なことを言った。
あれでは、俺が、鍋倉に未練があるように聞こえたのではないか? ……で……キスされた。
鍋倉の噛みつくようなキス、近くに寄せられた顔を思い出していた。
健太郎は自分の唇を触り、鍋倉の唇を見つめて、唾を飲んだ。
ふと、自分の格好が、パンツとホテルのスリーパーになっていて、驚く。
着替えさせてくれたのかよ。恥ずかしすぎる。
流石に、風呂に入っていない体が気持ち悪くて、シャワーを使うことにした。
窓の外は、うっすら明るくなり始めていて、日中の夏の日差しの強さを予感させた。
シャワーを浴びたら、そっと帰るはずだったのに、鍋倉が起きていた。
「おはよう」
そう言うと、近づいて、抱きしめてきた。
「……なに? な、なに?」
「佐々木、会いたかった」
そう言って、キスをしようとする口を押さえて叫ぶ。
「お、俺、不貞とか無理。不倫? 浮気? そういうのダメ……だと思う」
声に出して笑う鍋倉の吐息が耳元に当たって、びくりとする。
「離婚してる。もう二年くらい経つかな……結婚してすぐに別れたんだ。今はフリーだよ」
抱きしめられたまま、硬直して、鍋倉に聞く。
「な、なんで、こんな事?」
「佐々木の小説、面白いよな。好きなんだよ。ファンなの」
そんなことを言われたは初めてで、嬉しかった。
鍋倉の優しい目が見つめる。
「だから、佐々木に会えて。嬉しくて」
そういうと更に強く抱きしめられた。
鍋倉の
「な、鍋倉……あ、あの……これ」
それが、気持ちよくて、そのまま体を預けた。
鍋倉の指が健太郎の髪の毛を
キスをされるのかと思ったら、
「……はっ」
健太郎の体が
その反応に、ふふっと鼻で笑う鍋倉が、更に耳朶を攻め立て、首筋、鎖骨へ唇を這わせた。
「あ、……ふっ……ん」
こんなに丁寧な愛撫をされたのは、初めてで、恥ずかしさが込み上げる。
身に付けていたスリーパーがはだけ、あらわになった体を鍋倉の大きな指が這う。
胸の赤い突起に触れた瞬間、体が跳ねた。指で捏ねくり回され、甘い声が漏れる。
そのうち、舌先で突いたり、舐め上げ、吸い上げられ、自分でも驚くほどの矯声が出た。
「う……はぅ……ああっ……だ、だめ……んっ」
さっきまでの恥じらいが嘘のように、快楽が駆け上がり、乳首の愛撫だけで達してしまった。
その様子を見て、可愛いと言う鍋倉の顔は、興奮して赤く染まっている。
「後ろ、いい?」
こくりと頷く健太郎に深く口付けをした。
鍋倉の舌が、歯茎と上顎に触れ、口の端から、たらりと垂れた
――い、いやらしい……キスだ。
腰を持ち上げられ、そこにローションをが滴る。
つぷりと指が入ってきた。
ごつごつとした指が中を掻き回し、抜き差しされていく。
「あっ、あっ……はぅ……むん」
指が折り曲げられ、硬くなっている粘膜に触れた。
「はぁっ、あっ、ああっ……」
健太郎の腰が跳ね、そこばかりを攻められた。
そのうち、指が増やされ、広げられていく。
鍋倉のもう片方の手が、健太郎の昂っているものをもち、ゆっくりと
直接的な刺激に、健太郎は、かかとでシーツを蹴った。
健太郎の雄から出る先走りで、ぬるぬるとした感触を楽しむように鍋倉も興奮している。
「すごい溢れてくるよ」
ローションと先走りで、水気を含んだいやらしい音が、更に興奮してくる。
「もう、……ああ、もう、だめだ……から……」
鍋倉の手の中で、吐精した。
ぐったりしている健太郎を抱きよせ座ると、胡坐の上に足を開かされて向かい合うように座らされた。
「な、なんだよ。この恰好」
うろたえる健太郎の首筋にキスを繰り返す。
上目遣いの鍋倉は、
「少し、落ち着いたら、俺のも……触って」
「……もう、大丈夫」
健太郎が腰を上げ、自ら、その雄を受け入れる。
ゆっくりと。進めていく。自重で、どんどん進む挿入に声がひきつれた。
「……はぁっ、うぅ、はぁっ、あぁっ……」
全部入ったところで、体が痺れて、自ら動くことに躊躇していた。
「動かすよ」
鍋倉が、眉根を寄せて、健太郎の腰を引き寄せた。
「ひゃあっ、はぁっ……、ああっ……いや、ああ……」
下からの突き上げに内壁が締まる。
そのまま、鍋倉は下になり、上になった健太郎の両手をもって腰を揺らしている。
上から見る鍋倉の瞳は、苦しそうで、色気があり、視姦されているような感覚に陥った。
――ああ、やばい。気持ち良すぎる。
鍋倉は、起き上がり、健太郎を抱きしめ、顔や首筋に沢山のキスを降らせた。
「健太郎……好きだ」
「……へっ?」
瞬間、今度は健太郎が下になり、律動が激しくなった。
深く揺さぶりをかけられ、健太郎の顔も快楽で歪む。
さっきまで、だらんとしていた雄は昂りを取り戻し、快楽の波が押し寄せてきた。
ほぼ、ふたり同時に欲望を出した。
「なんか、ごめん。いきなり。佐々木を見てたら我慢できなくて」
そう言って、話す鍋倉は、決まりが悪そうにしている。
――好きって言った?。
聞きたいけど、聞けない。
俺も、どうしたいかわからない……。
洋服に着替えながら、頭を整理する。
鍋倉は、結婚してたんだ。
これからも、まだ再婚の可能性だってある。
俺じゃ、無理だ。
でも、また会いたい……。
「セ、セフレでいいか? 俺モテるし。恋人作る気ないんだよ。だから、セフレなら、また会ってもいいよ」
佐々木のその言葉に、鍋倉は、しばらく真顔で見つめていたが、「わかった」と頷いた。
「じゃ、また連絡するからね。今度は家に来る? それとも佐々木の家に行っていい?」
手を握り、体を寄せながら聞いてくる。
スーツについた香水の匂いに、惑わされそうにった。
「会うのは、ホテルで。家はやめよう」
触れるだけのキスをして別れた。
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