036:小鳥骨
ある日、クラスの軽音部員、
図書室で調べたい本があるから、手伝って欲しい。図書委員の
放課後は時間があるからいいよ、なんて答えて、私は昼休み、部活仲間に今日はいけないと伝えた。
そして一日の授業が終わり、私と棗井さんは一緒に一階に下りて、渡り廊下の先にある図書室に向かった。
棗井さんはふわふわの金髪をミディアムにした、色の白い、比較的小柄な美人だ。妖精さんみたい。
でも、その棗井さんから聞いた話は――。
「え、軽音部一年のバンド、解散したの?」
重かった。
「そーなのよー。前の……あれでみんなビビっちゃって、軽音部抜けるって言い出したの」
この間のあれ。軽音部で起きた事故について、ここで触れないでおく。
「棗井さんはどうするの?」
「羊日でいーわよー。他人行儀な」
「じゃあ、羊日」
「まー……」
棗井さん改め、羊日はにこりと笑って、十数センチ高い私の方を見上げた。
「私がMASKWORDを超える名曲を作ってメンバーを勧誘するわ」
滅茶苦茶可愛らしい笑顔だが、羊日はメンバーが抜けた事を大分気にしているらしい。こめかみに四つ辻が浮かんでいる。
「そう……それで、探し物って?」
「あ、そーね! 魔女狩りについて書かれた本! 次の曲の資料にする!」
前に羊日が持ってきたデモテープでも結構過激な内容を歌ってたけれど、羊日って案外ダークな世界観が好きな人なんだろうか……。
「魔女狩り……あるかなあ……」
「あるでしょー! 人類史の一大事よ!」
「それはそうだけど、ここは中等部だし……」
「とにかく探すのよ!」
「うん……」
一体何故、羊日は魔女狩りとか曲の資料にするんだろう……考えると怖い。
「あら? 何か落ちてる」
「え?」
図書室前の渡り廊下で、羊日が立ち止まってしゃがんだ。思わず私もしゃがんで、それを見る。
小さな骨だった。
立ち上がる。
深呼吸。
羊日の手の中にあるそれをよく見る。
細くて折れそうな、何かの骨だ。
「何これ……」
「猫か何かが持ってきたのかな……」
私と羊日は二人してその骨を見た。見た感じに人間の骨ではないと思う。
「珍しい組み合わせだな」
その時、後ろから女子にしては低い声がかけられた。
振り返ると――短く纏めた黒髪、中性的な容姿、高い身長を持つ
「あ、黒絵ー。こんなの落ちてたんだけど、知ってる?」
羊日は薊間さんにその骨を見せた。
「……
「何よそれ」
「不意に落ちている物で、拾い主に幸運が訪れる。ただし骨を失くすと神隠しに遭い、骨を折れば死ぬと伝わる」
「処分する方法知ってる?」
羊日は青い顔になって薊間さんに尋ねた。まあどう考えてもヤバいアイテムだもんな……。
「この手の呪物を供養する手段は
「怖いから一緒にいってぇ~?」
「私は週末までやる事が詰まっている。いくなら一人でいけ」
「はくじょーものー!!」
「あまり強く握ると骨が折れるぞ」
「ひょいっ」
薊間さんの言葉で、羊日は慌てて骨を確認した。
私は羊日の手の中の骨を覗き込んだけど、見た感じに損傷はない。
「羊日……大丈夫?」
「捨ててもダメ……って事よね?」
「
校内歩いてていきなりこんなトラップに出くわすとは思わなかった……羊日も気の毒に……。
「こんなのすぐ折れるわよぉ……」
羊日が泣きそうになっている。
「財布にでも入れておけばいいだろう」
「折れて死んで終わりよ!!」
「ま、まあ何か、保管する方法考えよう?」
薊間さんがマイペース過ぎて喧嘩になりそうなので、私はとりなしにかかった。
「二人で考えろ。私は調べ物がある」
「薊間さん……」
「前言撤回。
「こんちきしょー!!」
薊間さんに無理矢理腕を引っ張られ、私は(身長では勝ってるのに)腕力で負けて図書室に連れ込まれた。
その後、薊間さんの探し物を手伝う事になったけど、羊日は骨をどうしたのか、図書室に入ってきた。
薊間さんの調べ物はそれ程時間がかからなかったので、私は羊日の方も手伝った。
……骨の供養、上手くいくといいんだけど。
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