30話 自由に行動するための稼ぎ
「ヨオ。坊主ども、役に立てよ」
その男たちは、よく日に焼けた健康そうな体の色をしていた。
「さいきんよ。獣人魔族軍団の一部がここら辺でやたらと出没するようになってな。オークとかゴブリンとか。まあ、雑魚ばっかなんだが。あいつら、1匹見つけたら10匹はいると思ったほうがいいというくらいに繁殖力が旺盛だからな。お前らみたいなガキにも助力を頼むというか。戦力になりそうなのをひっかき集めて、奴らの数を減らそうと俺らも必死なんだよ」
別の日に焼けた男がそう言った。彼らは、この近隣の村の自警団の面々だ。
「お前ら、どこか行きたいところがあるんだろ? それがどこであれ、
男たちが何人かで、僕らにそう言ったことを言ってくれる。
「わたしはシスターですので。直接の戦闘力にはなりませんよ?」
パンネさんがそんなことを言ったが。男たちは豪快にわははははと笑った。
「あんたみたいなお姫様がいるとな。男連中はいいとこ見せようって頑張るもんだよ。そんなもんなんだ。まあ、それは冗談としても。あんたがシスターとして傷を治してくれることで、俺たちは思い切って戦える。あんたも気を張ってバックアップを頼むぜ」
状況を説明すると。僕らは、旅に出始めてから一か月が経っていて。手持ちの路銀が心細くなってきていたんだ。イナダールの王墳墓で稼いだお金は、確かに大きな額だったけど、それはディアナさんに預けてきてしまっている。それに。旅の最中にお金を稼ぐことも、勇者として必要な事だろうと思った僕らは、とある村に立ち寄ったときに獣人駆除の求人票に目を付けて、自警団まで出向き、仕事に使ってくれるようにと頼んだって訳なんだよ。
「それで、この森が獣人共の棲み家なのですか?」
セルファが、男たちに聞く。
「ああ、奴らの行動パターンから割り出したのは、この森だ。だが、この森は実りが豊かでな。俺たちにも大切な森なんだ。だから、獣人共ごと焼き払うってわけにもいかない。結局は、剣や斧を振るっての直接戦闘さ。で。君は何ができるんだ? 見た所、奇妙な杖を持っているようだが?」
「僕は、風と水の魔法が使えます。まだまだ、そこまで大した術師ではないですが、将来は大魔導師になりたいと思っています」
「へえ! デカい夢持ってるんだな。そういう子供は嫌いじゃないぜ。それに、魔法か。凄いじゃないか、そんなナリをしているのに。体力はなさそうだが、後衛からの援護、期待しているぜ」
「はい、任せてください」
「じゃあ、コイツを仕掛けるぜ。濃縮したテルブルの実だ。獣人はこの果物が好物でな。それを煮詰めたこの液をぶち撒ければ、匂いにつられて飛び出してくるんだよ」
自警団の男は、馬車に積んでいた樽の栓を抜くと、辺り一面にちょっとした刺激臭を含む、甘い匂いのする液体をぶちまけた。
そして、一刻ほど経つと。森の奥から何かが出てきている様子が、森の木々がごそごそと音を立て始めたことで分かってきた。
「来たか。皆、まずは弓から仕掛けるぞ。一斉射だ!!」
自警団のリーダーらしき男が、自警団全体の指揮を執る。
「! ゲアズア! ケルルゥ!!」
果実の液の匂いに釣られて、まんまと森から出てきてしまったオークやゴブリンたちは、あんまりよくない頭でも罠にはまったことを知ったらしい。急いで、後に向かって増援を呼ぶ。
そして、オークは石刀を振りかざして襲ってきて、ゴブリンは短弓を構えて矢を放ってくる。
「魔族のくせに、人間界に出てくるんじゃねえ!! 人間界は人間の物だ! お前らに魔界があるようにな!!」
自警団のみんなが、敵の獣人たちと激突する。
「『
セルファが、いままで僕らに見せたことのない砂埃を起こす竜巻を作って、獣人に突っ込ませる。その威力は結構凄くて、遥か上空まで吹き上げられた獣人たちが高空から落っこちてきて、見事に潰れて死んでいく。
「おおー!! やるじゃないか、少年魔導師!」
自警団の人達が歓声を上げる。こりゃ、僕も負けてられないぞ。
「『
僕は、接近戦で。オークとゴブリンの混成部隊に突っ込んで、連続斬撃を浴びせて、結構な数の奴らを仕留めた。
「へえ! 最近のガキは出来が違うな! 随分使えるじゃないか!!」
僕らの奮戦で、自警団は勢いを増して、獣人たちを次々と屠ってゆき、獣人たちの生き残りが逃げ出したところで、ようやく戦闘を終えた。
「よくやってくれたな。活躍ボーナスで、金貨三枚って所か。後で屯所で払うから、期待していてくれよ」
よく日に焼けた顔で、自警団のリーダーは爽やかながらも力強く笑った。
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