6話 迎撃戦
「伝令です、ディアナ殿!!」
1騎の騎士が、私が一人ぽつりと立っている石敷きの街道に現れた。掲げている旗を見るに、味方の物である。
「何事か?」
私は短く聞く。
「敵方ガエルド軍は、軍勢を3手に別れさせて、要塞を出撃。現在、国王陛下率いる騎士団及び、アクエス魔導師団長の魔導師団と交戦中であります。いずれここにも、数千の兵が攻め寄せてまいります。重々お気をつけてください!」
ふむ。敵は、下策をとったな。賭けに出ず、3道を同時に攻めれば、それだけ1道当りの兵数は減る。一点突破して一気に王都を降すのが上策であったのに。私はそんな事を考えて、薄く笑った。
「承知した。この道は私が踏ん張る。国王殿やアクエス殿には、奮迅の働きをしていただきたいと告げてくれ」
「畏まった。では、私は戻りまする」
「うむ、任せて置け」
伝令兵が去った後。私は魔眼を使って前方を見てみた。うむ、見える。多くの人間が、こちらに向かってきている様子が。凡そ3000と言ったところか。行軍速度は相当に早い。兵種は重装騎馬兵のようだ。
「さて、やるか」
私は久々の戦いとなるので、軽い柔軟運動をして、魔力を発現させた。
よし、衰えはない。自分の体にみなぎる力に、不動の自信を持って。私は敵軍を待ち構えた。
「将軍! 前方に女が一人見えます!」
「? 女だと? ここは戦場だぞ?」
「とにかく、道の中央に立ちふさがって、こちらの行軍を妨害するつもりのようです」
「気でも狂ったか? 構わん、叩き切って進め」
「はっ!!」
そのようなやり取りが、
「大いなる炎、その姿、その形無き形を力にて
私の詠唱に従って、周囲から魔力が急速に集まる。その集まった膨大な魔力は、私の両掌に収束し、後は呪文を発効するだけの状態となる。
私はその状態でしばらく待機した。
「どけ、女っ!!」
「馬で踏み殺すぞっ!!」
「それとも、刃にかけてほしいか?!」
最早肉眼で見える距離にまで迫った敵軍。私はそこで、魔法を発効した。
「『
敵軍の足元に、円形の巨大魔法陣が発生し、そこから天めがけて巨大な炎柱が吹きあがる。
悲鳴のるつぼが湧き上がり。凄まじい高温を放つこの魔法をまともに喰らった敵軍の装甲騎士団は、そのほとんどが溶けて消えた。
「さて……。まだやるか?」
生き残りの、百人にも及ばぬ敵兵に向かって私は凄みを効かせて問いただした。
「ひ……ひぃっ!!」
「ななな、何だこの女!! 冗談じゃない! 殺される……!!」
「……貴様らは、国に帰れ。私は、このまま要塞攻めに参加する。そこでも私に立ち向かうようならば、今度こそ貴様ら生き残りも消し飛ばすぞ」
「は、はひぃ!!」
敵の残兵は、馬首を転じて要塞の方に向かっていく。まあ、隣国と我が国の間は、あの要塞を通らねば交通は出来ないのだから当然といえば当然だが。
私は、空中飛行の魔法を使って空からその敵騎士たちの後をつけ、要塞まで向かうことにした。
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