第34話 服部忍、某掲示板で話題を独占す
本日、
レクリエーションの
当然俺は、野球に参加して無双を……。
という訳にはいかない。
運動部の生徒が無双し過ぎては、他の生徒が面白くない。
レクリエーションじゃ、なくなってしまう。
なので自分が所属する部の種目には、参加できない決まりになっていた。
というわけで俺は体育館で、バスケットボールに参戦中。
「
背の高い生徒達が、
相手ゴールまでは遠い。
位置は自軍のゴール下だったりする。
それなのに、なんでコイツらが必死かというと……。
「あーっ! このチート野郎!」
相手チームから、野次が飛ぶ。
俺はいきなりシュートを放った。
後方に飛び、ディフェンスとの距離を取りながら撃つフェイダウェイ。
ボールはコートのほぼ全長を飛行して、リングを通過した。
【
バスケをやれば、コート全域がシュート
「ふざけんな! これでスリーポイント10本目だぞ!? 1人で何点取るつもりだ!」
「バスケ部が参加してくるより、忍の方が何倍もタチ悪いわぁ~」
「もう忍は参加禁止。試合にならないもん。屋上で、サボってきなよ」
なんてこった。
MVP級の活躍をしたのに、退場させられてしまったぞ。
ちくしょう。
○●○●○●○●○●○●○●○●○
「何だ? みんな追い出されてきたのか?」
俺が校舎屋上に出ると、
「オレはバドミントンに参加していたんだ。スマッシュを打ったら、ラケットのヘッドがもげた」
「僕はバレー。『ブロックが反則過ぎる高さ』って言われて、追い出されちゃったよ」
「私はサッカーよ。女子相手だと危険だからって、男子の試合に入れられてたの。なのに男子もみんな、私との
うーん。
俺達スキル持ちが、素人と一緒にスポーツするのは危ないな。
「まあいいさ。球技大会終了まで、屋上でゆっくりさせてもらおう。他競技であんまり目立つと、勧誘がウザいし」
「忍はもう、熱烈な勧誘を受けまくってるじゃない。手遅れよ」
「うっ……」
以前の野球部はトレーニングとして、他の部に混ざり色んな競技をしていた。
グラウンドが、あまり使えなかったからだ。
そうやって他の部に混ざっていると、【投擲】スキル持ちの俺は目を付けられる。
バスケでは今日のように、ロングシュート決め放題。
おかげで勧誘の嵐だ。
もっとひどいのがアメフト部。
素人の俺に、クォーターバックっていう超重要ポジションをやらせようとしている。
野球に例えるなら、乱闘から逃げ回りながらピッチャーみたいに投げて、監督も兼ねるようなポジションだ。
なぜそんな無茶ぶりを?
超ロングパスをミリ単位の精度で投げたり、自分で走って
練習に混ぜてもらった恩があるから、俺は試合の助っ人を約束させられている。
大変だけど、まあいいか。
色んなスポーツをやるのは、アスリートとしてプラスな経験になるだろう。
アメリカじゃ、季節ごとにやる競技を変えるアスリートが多い。
そんでもって野球とアメフトのプロ、両方のドラフトにかかった選手とかいるし。
「目立たないよう擬態しながら、他競技をプレーすればよかったなぁ。……そういや擬態で思い出した。優子監督。昨日の
130km/h以下のストレートだけで、完封しろという司令。
確かに球種が豊富なことと、剛速球を投げれることは隠せた。
だけどあれじゃ、目立ってしまう。
昨日は大勢の偵察班が、剛腕の
「熊門の
他校からは、そう警戒されたはずだ。
「あの指示ね。これが答えよ」
そう言って優子は、スマホの画面を見せてきた。
映し出されていたのは、インターネットの匿名掲示板。
その中でも、県内の高校野球を語るスレッドだ。
○●○●○●○●○●○●○●○●○
338:名無しの高校野球オタク
熊門の服部
ストレートだけで完全試合ってヤバくね?
339:名無しの高校野球オタク
>>338 いや5回コールドで参考記録だし
340:名無しの高校野球オタク
トルネード王子降臨だな
あいつ160km/h投げるってマ?
341:名無しの高校野球オタク
>>340 さすがにそれはデマ
あの体格で160km/hは出ない
昨日の試合もMAX128km/hだったし
341:名無しの高校野球オタク
服部ってなんで左で投げてるの?
ウチと練習試合した時は右だったよ
ナックル投げてた
342:名無しの高校野球オタク
>>340 人違いだろ?
春季大会でノーノーやった時も左のトルネードだったし
ただあの時は変化球で打たせて取るピッチングだったんだけどなぁ……
343:名無しの高校野球オタク
服部は両投げのスイッチピッチャーなんだよ
344:名無しの高校野球オタク
>>343 漫画の読み過ぎ
スイッチピッチャーなんているわけない
345:名無しの高校野球オタク
>>344 スイッチピッチャーはメジャーにもいたし
346:名無しの高校野球オタク
服部は手裏剣みたいにバックハンドで投げる
俺は見た
忍者っぽい苗字なだけはある
347:名無しの高校野球オタク
お前らいい加減なこと言い過ぎ
服部は本格派左腕の美少女
これはガチ
348:名無しの高校野球オタク
>>347 草
女が公式戦に出れるわけないだろ?
同じ部の
349:名無しの高校野球オタク
優子たん可愛い
ペロペロしたい
350:名無しの高校野球オタク
優子たんいい匂いしそう
スハスハしたい
351:名無しの高校野球オタク
優子たんにケツバットされたい
○●○●○●○●○●○●○●○●○
俺はスマホを、優子に返した。
「……これじゃ俺が、どんな
「そゆこと。2回戦も、忍にはオモシロピッチング……個性豊かなピッチャーを演じた状態で、勝ってもらおうかと考えているの。ネットで変な噂になるぐらいの」
「もう、憲正や五里川原に投げさせろよ」
ウチの部は、全員が投手要員だ。
8人とも、少ないながらピッチング練習はしている。
俺が怪我したり、週500球の投球数制限規則に引っかかると登板できなくなる可能性があるからな。
屋上の端まで行き、校庭を見下ろした。
野球部門参加者の生徒達が、楽しそうにプレーしている。
くそう、羨ましいぜ。
あっ。
俺や優子の真似をして、左のトルネードで投げてるヤツがいる。
遠くから野球部門の試合を観戦しながら、ヤケ酒ならぬヤケ牛乳をグビッとあおった。
「忍、また牛乳飲んでるの? そんなに飲んだら、お腹壊すわよ?」
「1リットルパックで飲んでるやつに、言われたくない」
優子も手には、牛乳パックを握り締めていた。
やっぱりまだ、身長伸ばしたいんだな。
優子の伸びより速く伸びろ、俺の身長。
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