【異世界帰りの勇者パーティによる高校野球蹂躙劇】~野球辞めろと言ってきた先輩も無能監督も見下してきた野球エリートもまとめてチートな投球でねじ伏せます。球速115km/h? 今はMAXマッハ7ですよ?~
第7話 エースの役目、それはチームを勝たせること。異世界で魔神のどてっ腹に風穴を開けること
第7話 エースの役目、それはチームを勝たせること。異世界で魔神のどてっ腹に風穴を開けること
「素晴らしい試合だったな。先輩として、鼻が高いぜ」
ははあ、そういう路線できたか。
俺が無視したので、奴は
バシッ! とグラブで叩き落とされて、初条の右手は行き場を失った。
初条は気まずそうに咳払いをして、いけしゃあしゃあと語り始めた。
「お前達みたいな頼もしい1年生達がいれば、甲子園出場も夢じゃない。俺様達2、3年は1年生諸君の成長と覚醒を
1年生達からの冷たい視線が、初条に突き刺さる。
誰も全く信じていない。
だけど、集まっている
2、3年生は後輩と仲良くしようとしているのに、1年生達はそれを
そんな風に見られないか?
「さ~て先輩方。約束は憶えていますよね?」
俺の心配をよそに、優子は先輩達に詰め寄る。
いつの間にか、手には退部届の束が握られていた。
周囲からどう見られるかなんて、気にしないらしい。
「約束~? 何のことかな~?」
シラを切る初条に合わせて、他の2、3年生達も
なるほどね。
約束を
馬鹿な奴らだ。
退部を免れられると、思っているのか?
優子はニッコリ微笑むと、親指を打ち鳴らした。
【宣誓魔法】、発動だ。
「な……なんだ? 体が勝手に……?」
「俺達は退部なんて……。署名をする手が、止まらねえ!」
「クソッ! せっかくやりたい放題できる部活だったのに! 辞めたくなんか……ハイ、ヨロコンデヤメマス」
最後はロボットみたいな口調と動きになって、2、3年生は退部届を書いた。
うへえ。
相変わらず、恐ろしい魔法だ。
レベルの高い俺や憲正なら、
「は~い。2、3年生合わせて17名の退部届、確かに受け取りました。あとはマネージャーの私が、顧問の
【宣誓魔法】により、先輩達はすっかり大人しくなっていた。
みんな
きっちり整列している2、3年生に合わせて、俺達1年生も整列をした。
「先輩方、お疲れ様でした。
「他の部に行け」なんて言わない。
そこでまた、下級生をいびるかもしれないからな。
俺が帽子を取って礼をすると、他の1年生達もそれに
先輩達を追い出……送り出すのは、とても
○●○●○●○●○●○●○●○●○
紅白戦を終えた晩、俺は夢を見ていた。
剣と魔法のファンタジー異世界、アラミレス。
そこで冒険していた頃の夢だ。
『くくく……。小さき者どもよ!
俺達勇者パーティ4人の前に立ちはだかるのは、山ぐらいの大きさがある巨人。
筋骨隆々の体。
ヤギのような頭部。
ドスの効いた低い声は、腹に響く。
そして全身から噴き出す、邪悪で禍々しい魔力。
――魔神サキ。
アラミレスを征服しようとするこいつを倒すために、俺達は召喚された。
「おのれ! 魔神サキめ! この世界を、あなたの好きにはさせませんわ!」
金髪縦ロールヘアのお姫様が、杖を構えサキを
彼女こそ、地球から俺らを召喚した【大魔導士】。
ウィリアム王国の第1王女でもある、プリメーラ姫だ。
「【
サキの顔面近くで、爆炎が巻き起こった。
巨大な魔神は仰け反る。
だけど大したダメージは、与えていないようだった。
「今ですわ! ケンセイ様! シノブ様!」
プリメーラ姫の【
できた隙に乗じて、俺と憲正は魔神に襲い掛かった。
俺は十字手裏剣を、雨あられと投げつける。
【アイテムストレージ】という異空間の倉庫にたっぷり収納しているので、手裏剣の残弾は有り余っていた。
憲正が魔神に向かい、神剣を振るう。
刀身から光の刃が伸びて、魔神の巨体を何度も斬りつけた。
『くくく……。こそばゆいわっ! ……ぬうんっ!』
サキが気合を入れただけで、強力な魔力の波動が
俺と憲正は、吹き飛ばされてしまった。
魔神サキは、さらに追い打ちをかけてくる。
『消滅するがよい! 【グランドスラム】!』
魔神の両手が組み合わされ、大地に叩きつけられた。
黒い魔力の大波が、地面を抉りながらこちらに向かってくる。
俺、優子、憲正、プリメーラ姫の4人を、まとめて消滅させてしまいそうな攻撃だ。
「させないよ! 【セイクリッドディフレクト】!」
憲正が神剣を構えて、パーティの盾になった。
光の障壁が展開され、黒い魔力の大波から守ってくれる。
だけどこのままじゃ、防御で手いっぱいだ。
パーティの突破力を担う【剣聖】が、攻撃に参加できない。
「
「俺が? 魔神を倒せるのは【剣聖】の一太刀だと、王国では言い伝えられてるだろ?」
「チームを勝利に導くのは、エースの役目さ」
「……わかった」
俺は【アイテムストレージ】から、野球のボールと似た魔導武器を取り出した。
これは【ミーティアオーブ】。
純度の高い魔石から作られていて、魔力を無尽蔵に吸収する性質がある。
そして魔力を吸収した分、攻撃力が上昇するという代物だ。
「ピッチャー
自分で実況しながら、投球に入る。
ワインドアップモーションを取っている最中、光の粒子が俺の周囲に降り注いだ。
【聖女】優子の【強化魔法】だ。
全ステータス値が、飛躍的に向上したのを感じる。
「投げたぁ~!」
俺の左腕から放たれた【ミーティアオーブ】は、流星となって魔神の腹を貫いた。
球速はマッハ7。
アメリカ軍の研究している
『ぐ……ぐふっ! なんという威力! 人間はこんなに速く、力強く、ものを投げれる……の……か……。素晴らし……い……な……』
魔神サキの巨体は黒い霧となって、空に溶けていった。
「やりましたわ! これで世界に平和が……あら? みなさまの体が光って……」
「魔神サキを倒して、役目を果たしたってことなんだろうな。プリメーラ姫。俺達は、地球に戻されるみたいだ」
「そ……そんな! 待って! シノブ様! ユウコ! ケンセイ様ぁ!」
別れの挨拶を済ます暇もなく、俺達の姿は薄く透けていった。
「ケンセイ様……。絶対、逃がしませんわよぉ!」
意識がアラミレスから消える直前、プリメーラ姫の狂気じみた叫びを聞いた気がした。
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