第三話「基地」

 Side リオ


 ジエイタイ達の言う基地に辿り着いた。


 元々は拠点だった場所に居着いて要塞化が進んでいるようだ。


 更には上空を空飛ぶ乗り物が飛び回っている。


 ヘリと言う乗り物だそうだ。


 陸には戦車や装甲車、車両などの乗り物が並んでいる。


 強固な陣地だ。


 これだけの勢力にも関わらず、パワーローダーや戦闘ロボットを一台も保有してないと言う。


 末端の兵士の武装も貧弱。


 ヴァイパーズとの戦いになった時、大丈夫なのかどうか分からなくなってしまう。


 一先ず私とパンサーはこの基地の代表者に案内される事になった。



 基地の代表者、五籐 春夫 陸将


 叩き上げの軍人と言う物はどう言う物かは分からないが目の前の人間のような人物を言うのだろう。


 ここに至る部屋も清潔。


空調が効いていて快適。


 執務室のソファーもそうだ。


 身嗜みもしっかりしていて今迄遭遇した事はないタイプ。

 

 水も綺麗で冷えていてとても美味しかった。

 

 もしかするとここの人達は何時でもこれが飲めるのだろうか?


 装備といい、信じられないぐらいに豊かだ。


 五籐 春夫と言う人物の傍には補佐官らしい水島 静香 一尉と言う女性がいた。

 黒髪のショートヘアーで髪もキッチリと整えられていて身嗜みも私も比べて抜群に良い。

 

 私と五籐と水島さんの三人で一先ず会話が進む事になった。


「まずは我々の部下を救って頂き感謝を申し上げたい」


 と、五籐と呼ばれる男が挨拶した。


「こう言う時、どう言えば良いのか分かりませんけど・・・・・・私は助けたかったから助けただけです。この世界は残酷ですから」 


「それでもです」


「で? 用件はそれだけでしょうか?」


「内容は要相談ですが、我々と協力して欲しい」


「これだけの力を持っているのに協力ですか?」


 交渉事は苦手だ。

 私は本音を叩き付ける。


「……こうは言ってはなんだが、この世界で我々の無力さを痛感した。既に多くの自衛官が犠牲となり、それどころか死体に鞭を打つような真似までされている。そのためなら何でもやるつもりだ」


「五籐陸将――それは――」


 ここで黙っていた女性ジエイカンの水島が制止に入る。


「いいんだ水島君。今の地位を捨ててでも部下を守らねば大勢死ぬ事になるだろう。勿論そちらの要求は可能な限り通すつもりだ」


 そして頭を下げた。

 水島と呼ばれた女性も頭を下げる。


 私はどう判断してよいか悩んだ。


 一度パメラに相談した方が良いのかも知れないが――


 だがそれよりも話しておかないといけない事がある。


「恐らくこの基地は大規模な襲撃を受けると思います」


「報告に上がっていたヴァイパーズの事かな?」


「はい。彼達は間違いなくこの基地に襲撃を仕掛けてくると思います。軍備や戦い方を見た限り、負けはしないでしょうけど勝った時には多大な被害が出ると思います。直ぐにでも軍備を強化する必要があります」


 私は相手に提案した。



「で、リオ? アナタ勝手に仕事を引き受けたの?」


 基地の中、トレーラーの外。

 周囲には遠目から人集りが出来ている状況。

 想像通りパメラに怒られた。


「まあいいじゃん。飯や水も出してくれるそうだし、ここの連中も無力な市民を守れってワケでもないっしょ?」


 パンサーは楽天的だ。


 黒髪のポニーテール。

 黒い肌。

 大人っぽい目つきに唇。

 大きなバスト。

 胸の谷間丸出しのライダースーツと言う衣装のせいで。

 男の兵士達の視線が注がれている。

 

「確かにパンサーの言い分も一理あるわね。だけど本当に変な軍隊ね。これだけ立派な軍備なのに末端の部隊はメチャクチャ弱いし、パワーローダーや戦闘ロボットを一台も持ってないなんて・・・・・・別世界から来たなんて話も間違いじゃないかもね」


 とパメラは言う。

 

「うん。衣装や髪の毛が綺麗過ぎるもんね。靴もピカピカだし。武器は貧弱だけど、力入れるところ間違えてないかな?」


 などとパンサーは言ったがそこは私も同意見だ。


「ともかく私が再度交渉しにいくわ」


 そう言ってパメラはこの場を後にした。



 Side 佐伯 麗子


「幕僚長殿、本当に鹵獲した武器を実戦投入するんですか?」


 私は耳を疑って思わず尋ねてしまった。

 幕僚長直々に基地の纏め役が並ぶ中でそう提案がなされたのだから。


「正直私としても遅すぎたと思うがね」


「上はなんと?」


 次に水島一尉が声を掛ける。


「……許可は降りた。自衛隊の死者数が多すぎてようやく政治家達も尻に火がついたのだろう」


 と言う後ろ暗い内部事情を暴露した。


「安心したまえ、責任は私が取る。この後、パメラさんと契約内容の確認と防衛計画について相談するつもりだ」


「今からですか?」


 この基地の纏め役の一人、近藤 信也 三佐が尋ねる。


「砲台代わりの戦車などはそのままだが、問題は防衛戦を突破されて白兵戦に突入した場合だ。化け物相手に何時までも小銃だけでは前線で戦う兵は心許ないだろう」


 五籐陸将は「それに」と言ってこう続けた。


「水島君には話したがこの決断に至るまで多くの自衛官が死にすぎた。前線に働く自衛官に対しては決して許される事ではないだろう。それを肝に銘じて取り組んで欲しい」

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