Ⅴ
自分の席に戻った久子は、感じ悪い視線を感じ、ふと頭を上げると、野島係長と目があった。係長はハッと目をそらしたが、
「どうした? 常盤君! 部長から何か
「はい、部長さんと、鹿ノ
「ウン、ウン、そうだろう。しかしそれだけかね? 他に何か言われなかったか?」
「イエ、別になにも」
「そうかい? あの厳しい鹿ノ倉専務が、叱責だけで済ませたのか? うーむ、お前何者なんだ」
「別に、何者でも有りませんよ」
「そ、そうか。そうだ、昼から係長会議があるんだ。悪いけど常盤君ここに会議の資料の原稿があるから十部コピーしていてくれないか」
「はい、解りました」と久子は係長の席まで行って、原稿を受け取ってきた。直ぐに遣ってしまおう。と考えた久子は、原稿を握りしめてフロアーのそとに出て、長い廊下を東へと歩んでいった。
すると機械室があって、その部屋の中には、コピー機やハンドドリル、青焼機械等が取り揃えられていた。久子はコピー機のまえに立つと、”最近のコピー機は便利なのよね~“と思い、コピー機のカウントと部数をセットボタンでセットすると、ホチキスの止め場所を右上にセットし、原稿をコピー機の入り口にセット後は、緑色の印刷開始のボタンを押した。ズー、ズー、と原稿が機械に吸い込まれ、左の出口から棚状態になった出口にコピーが排出され、十段に各々吐き出されたコピー用紙が重ねられていき、一部か揃うと、きっちりと重ねられ右上がホチキスでとめられていく。そして、十部出来上がると。最後に原稿が出てくる。“な~んて、便利なんでしょうと”思いながら、出来上がった十部のコピーと原稿はクリップで止めて、側にある長机にポンと置いた。”これでよし“と久子は考えたが、何故か久子はコピー機のガラス面をじっと眺めだし、何を思ったか久子は自分の顔をそのガラス面に押し付け、一部コピー機のスイッチを押した。カシャッと光が久子の顔を照りつけ、一枚のコピー用紙がピーと出てきた。そのコピーを見た久子は、自分でもウケたようで、ガハハハハッっと、大声で笑いだした。“何じゃこりゃ……。アハハハッ!”自分で出てきたコーピ用紙を指差しながら大笑いをした。鼻や目は潰れ、お化けのような影が写っていた。久子は流石に恥ずかしくなり、コピー用紙をグシャグシャと丸め込み、ゴミ箱に投げ込んだ。
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