久子は早速総務部長に呼ばれた。側には、鹿ノしかのくら専務も立っていた。

「常盤君。ダメだよ会社内で暴れて貰っては。注意しておくれ。私は君のお父さんに頼まれているんだよ。『どうか、うちの娘を宜しく』ってね。何故君がうちの会社に入ったのか、お父さんから聞いてるだろ? 『数年はよその釜の飯を食わせないと駄目だから』って、私はその話を聞いて、君を受け入れたんだよ。暴力は辞めてくれないか」と鹿ノ蔵専務が言った。久子は、

「でも、あの野暮な係長が、私にセクハラ発言をしたから……。」

「野島係長の事かね?」

「そうです。あのハゲチャビンです。」

「また、そんな上司に対して悪口を言う! 君が私の知り合いのお嬢さんだから、注意で済まそうとしているのに。そうでなかったら、厳重処分物だよ」

「はい、解りました。申し訳ありませんでした」と久子は専務と部長に対して、ペコリと頭を下げた。

「もう良いよ。職場に戻りなさい」

「はい、解りました」と久子は自分の席に戻っていった。そこで、総務部長は不思議な顔をして、専務に問い掛けた。

「あのー、鹿ノ倉専務❗ 彼女は一体何者なんですか? うちの会社の入社試験が一番だったし、大学からの内申書も良かったから入社してきたものと思っていたのですが?」

「あぁ、君にはなにも言ってなかったね」と専務は部長のとなりに椅子を持ってきて座ると、ひそひそ話を始めた。

「実はね、これは社長も承知の事なのだがね、常盤君は、実はね常盤グループの娘なんだよ」

「えっ、あの九州最大の常盤グループですか? そして、あの娘が、そのグループの社長令嬢なのですか? どうしてまたわが社にきたのでしょう?」

「先程も一寸言ったがね、彼女の父親、つまり私とは友達なんだが、グループの社長に頼まれたんだ。何でも、近い将来グループに化粧品会社を設立する計画があるらしいんだ」

「だ、だからわが社で……」

「まぁ、そう言うことだ、後は頼んだよ部長さん。このビルだって、常盤グループのビルの一つなんだよ」

「いやぁ~、そんなことですか。後が恐いですな~、あんなじゃじゃ馬娘は、私に大丈夫かな~」

「そんな弱気をはかないでくれよ」と言って、鹿ノ倉専務は片手でヒラヒラと手を振りながら、総務部の部署を離れていった。後に残された総務部長は、両手で頭を抱え込んだ。

「はぁ……」出るのはため息ばかりだった。

「あの娘がね~、はぁ……」何で私のところに、配置したのかね……。

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