第三十八話

 少しして慶介けいすけは、漬物つけものせた人数分の皿を持ってきてみんなのに手渡てわたした。そして伊織いおりさんがキノコなべの具をどんぶりに分けて、皆に手渡した。皆の評価は、上々じょうじょうだった。

美味うまい!」

「うん、美味おいしいキノコだ」

「この漬物、いいあじ出てる~」など。


 キノコ鍋のおじやも食べ終わると、涼子りょうこさんがつぶやいた。

「ここには、こんなに美味しいモノがあったのね。知らなかったわ……」


 後片付あとかたづけが終わると、佳奈かなさんが聞いてきた。

「次は、どんな配信はいしんをしようとしているんですか?」


 正直その時には、いいアイディアは無かった。だからそう言うと、佳奈さんは微笑ほほえんだ。

「実は私、いいアイディアを思いついちゃいました!」


 まわりでは皆がまだまだ話し込んでいたので、それならゆっくり聞こうと思い、俺たちは一軒家いっけんやに移動した。だんだん寒くなってきたので最近さいきん買ったまきストーブがある居間いまでお茶を飲みながら、佳奈さんは話し始めた。


健一郎けんいちろうさんは今まで、この山の中の自然を配信していましたよね? でもZ市、いや長野県にはもっと色々な自然があるはずです! それらを撮影さつえいして、配信したらどうでしょうか?!」


 なるほど、その手があったか。確かにこの山の自然は、撮影しつくした気がする。でもZ市、長野県にもまだ見たことが無い自然があるはずだ。俺は、予感がした。それらの動画は、きっとバズる! 


 俺は早速さっそくスマホで、まずはZ市の自然の観光かんこうスポットをググり始めた。すると佳奈さんは、目をこすりながら呟いた。

「うーん……。ちょっと疲れたので、ベットで横になってもいいですか?」


 俺がうなづくと佳奈さんは、寝室に向かった。そしてその日、佳奈さんは俺の一軒家にまった。


 朝、ベットで目がめると横にいる佳奈さんは、呟いた。

「あの、出来れば、普通のお風呂ふろに入りたいんですけど……」


 この一軒家にはドラム缶風呂かんぶろしかないので、昨夜さくやは佳奈さんはお風呂に入らなかった。景色けしきが良く四季しきの自然を感じられるドラム缶風呂だが外にあるため、やはり女性は入りづらいだろう。


 スマホでググってみると、人造大理石じんぞうだいりせきの置き型バスタブを見つけた。これなら洗濯機せんたくきがある小屋に置いて、水を入れて下にかまどを作って端材はざいを燃やせば、お風呂に入れるはずだ。俺がそう説明すると、佳奈さんは『こくり』と頷いた。なので俺は、そのバスタブを買った。


 それから卵かけご飯と味噌汁みそしるで朝食をとると、俺たちは軽トラで出かけた。まずはZ市にある、川に行ってみた。そこは清流せいりゅうが流れていて、大きな段差だんさがあった。つまり川の途中でたきのようになっていて迫力はくりょくがある動画が撮影できた。


 更に林の中にあったので、その中を流れる川は、になった。また近くに川の水を利用した喫茶店きっさてんがあって、そこでコーヒーを飲んだ。やはり清流の水を使っているので、さわやかな香りがした。


 その動画を配信すると、俺たちは一軒家に戻った。それから夕飯を食べて二人でベットの中で、視聴回数を確認した。それは五十万回をえていて俺は、手ごたえを感じた。これは、イケる! 佳奈さんも、喜んだ表情を見せた。


 動画には、コメントも付いていた。『やっぱり長野県は、自然が豊富ほうふだな』、『迫力がある川だなあ』、『清流を使ったコーヒー、美味しそうだなあ』など。


 そして日曜日。佳奈さんは明日から仕事なので俺はワーケーションハウスまで軽トラで送った。それから俺は、長野県の有名自然スポットをスマホでさがし始めた。いくつか気になる場所があったので、おぼえておいた。


 この頃には俺と佳奈さんとの間に、あるパターンが出来ていた。毎週金曜日の夜になると佳奈さんは俺の一軒家にきて、土曜日に長野県の有名自然スポットで動画を撮影をして配信して、夜に視聴回数を確認する。そして日曜日には二人で料理を作って食べて、夜になると佳奈さんをワーケーションハウスに送る、というパターンだ。


 行った有名自然スポットは、北横岳きたよこだけ縞枯山しまがれやまの間にかり標高ひょうこう一、七七一メートルの山麓さんろく駅から標高二、二三七の山頂さんちょう駅まで高低差こうていさ四六六メートルを約七分でけ上がる北八ヶ岳きたやつがたけロープウェイからながめる、山岳風景さんがくふうけい遊歩道ゆうほどうを歩き高山植物こうざんしょくぶつ白馬はくばの山並みを楽しむことが出来る、栂池つがいけ自然園しぜんえんなどだ。


 クリスマスには卵をまなくなったニワトリをさばいて、チキンを食べた。佳奈さんへのプレゼントは、ネックレスを選んだ。本当は指輪ゆびわをプレゼントしたかったが、付き合って数カ月で指輪はまだ早いかなと思い、ネックレスにした。佳奈さんからは、香水こうすいをもらった。ためしに手首に付けてみると、さわやかな香りがした。


 正月には、もちろん初詣はつもうでに行った。おみくじを引いてみると、二人とも大吉だった。あまりにも出来すぎで、ちょっと引いた。その後、雪化粧ゆきげしょうした浅間山あさまやまを見に行った。


 そして、二月になった。この頃になると、ソーラーパネルを設置せっちできるほどの貯金ちょきんまった。でも冬は発電量はつでんりょうが少ないようなので、春になってから設置しようと考えた。


 そしてそろそろバレンタインデーだなと思いそわそわしていると、慶介からLINEがきた。

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