第二十五話

 次の日の朝。居間いまに行くと慶介けいすけが食器を並べて、朝食の準備をしていた。そして、一緒いっしょに食べませんかと誘ってくれた。俺は今から小屋に戻って朝食を作って食べるのも何なので、一緒に食べることにした。


 朝食を作ろうとキッチンに行くと、すでに佳奈かなさんと伊織いおりさんが料理をしていた。俺が「おはようございます」と挨拶あいさつすると、二人とも「おはようございます」と返してくれた。何か手伝いましょうかと聞くと佳奈さんに、「大丈夫だいじょうぶです。居間で待っていてください」と言われた。でも次の瞬間、伊織さんが大声を出した。

「あ、しまった! 朝食のおかず、どうしよう?!」


 話を聞いてみると今日の朝食は和食で、ご飯とわかめの味噌汁みそしるは作っている。でも、ご飯のおかずが無いということだった。それならばと俺は軽トラで小屋に行って、ニワトリ小屋をのぞいてみた。するといつも通りに卵を産んでいたので、それを四つ持ってワーケーションハウスに戻った。


 そして今日の朝食は、卵かけご飯を食べることにした。「いただきます」と食べ始めると、三人はおどろいた表情になった。

「うわ、この卵、美味おいしいっすねえ~」

「本当に。味が濃いですね」

「美味しい! おかわりしたい!」


 俺は今回は卵を四つしか持ってこなかったので、今度ここで卵かけご飯を食べる時はたくさん持ってきますと告げた。朝食を食べ終わって後片付あとかたづけも終わると、佳奈さんと伊織さんは自分の部屋に戻って仕事を始めたようだ。俺も自分の小屋に戻ろうとすると、慶介に誘われた。

健一郎けんいちろうさんさん、またきてください。また一緒に、ご飯を食べましょうよ~」


 俺はうなづくと軽トラに乗って、自分の小屋に戻った。そして小屋を増築ぞうちくする、作業を始めた。俺はまず洗濯機せんたくきとトイレがある小屋の隣に、居間になるもう一つの小屋を作った。そして壁際かべぎわに東京のアパートで使っていた、ソファーを置いた。座ってみるとふかふかして、快適かいてきだった。そして寒くなってきたらこの小屋の中心に、まきストーブを買って置こうと考えた。


 次の日はベットが置いてある小屋の隣に、キッチンになる小屋を作った。そこに東京のアパートで使っていた電子レンジを置いて、考えた。プロパンガス会社と契約けいやくして、プロパンガスを使おうかなと。やはり電子レンジだけでは、料理しずらいからだ。それに都市ガスを使うとなると、やはりガスかんを引くことになりお金がかるだろうから。


 でもプロパンガスを使っても、やはりお金がかかるだろう……。すると、ひらめいた。そうだ、かまどを作ろう! かまどなら源治げんじさんから端材はざいをもらって、火を燃やせる。それにこの山奥の一軒家いっけんやには、ガスよりもかまどで料理する方が似合っていると思った。


 なので早速さっそく、長野市のホームセンターに行って、耐火たいかレンガとセメントを買ってきた。そしてキッチンの小屋でまず、レンガを一メートル×一メートルにいて土台どだいを作った。更に奥と左右にレンガを積み重ねて、コの字型にした。レンガはセメントで固定した。そうして高さ一メートル、幅と奥行きが五十センチの、かまどができた。ご飯もかまどで炊こうと思っていたので、羽釜はがまも買ってきていた。


 そうしているとちょうど夕方になったので、かまどで夕食を作ることにした。まずは端材を燃やして火をおこし、羽釜でご飯を炊いた。次にかまどに金網かなあみをかけて、川で釣った二匹のアマゴを塩をかけて焼いた。更にニワトリが産んだ卵で、卵スープも作った。そしてスマホで、撮影さつえいを始めた。


「えー、皆さん。ついに一軒家が完成しました。まずは、ベットがある小屋ですね。はい、ここは今でも使っています。次に、洗濯機がある小屋です。やはり洗濯機があると、便利です。そして洗濯機などを使うために、電気を引きました。水も引きました。トイレも作りました。


 えー、そしてここは、居間の小屋です。ソファーに座って、くつろぐことができます。また寒くなったら、薪ストーブを置こうと思います。そして、かまどを作ったキッチンの小屋です。これで四つの小屋が出来て、一つの一軒家になりました。それぞれの小屋はドアを開けると、できます。今、かまどを使って、夕食を作りました。それでは、いただきます」


 俺はその動画を配信はいしんしてから、夕食を食べた。自分で建てた一軒家で夕食を食べていると、感動ががってきた。ここにきて、四カ月ほどか……。まさかこんな立派りっぱな一軒家まで自分で建ててしまうとは、あの時は想像もしていなかった。そしてユーチューブの広告収入こうこくしゅうにゅうで今のところ、会社で働かなくても生活できている。会社で指示しじしたりされたりするのが苦手な俺には、それが何よりうれしかった。


 それからドラム缶風呂かんぶろに入って、今日はもう寝ようと思いベットに入った。動画の視聴回数を確認してみると、二百万回を超えていた。コメントも、もらった。『ついに一軒家、おめでとう!』、『あんたはすごい。マジですごい』、『これからも、がんばってください』など。


 次の日の朝。キッチンで朝食を作っていると、慶介からLINEがきた。

『おはようございます、健一郎さん。今日は佳奈さんと伊織さんがこのワーケーションハウスにきて、初めての週末です。なので仕事はありません。それでお昼にバーベキューをしようと思っているので、どうでしょうか?』と。


 バーベキューか……。顔ぶれは慶介と、佳奈さんと伊織さんだろう。慶介ももちろん良いやつだし、佳奈さんと伊織さんにも好感こうかんが持てる。だから人付ひとづいが苦手な俺も、彼らとワイワイ、バーベキューをしたいと思った。それについに一軒家を建てた、報告もしたかった。


 バーベキューは、ワーケーションハウスの隣にある空き地で行われた。食材はすでに慶介が用意していて、焼くためのコンロも用意してあった。なので俺は肉や野菜を焼いて、食べ始めた。ふと見ると慶介と伊織さんが、楽しそうに話をしていた。なので俺は自然に、佳奈さんと話をした。俺は、聞いてみた。

「どうですか、仕事は? ここは仕事が、しやすいですか?」


 すると佳奈さんは、笑顔で答えた。

「はい! 仕事で疲れても山道やまみちを散歩すればリフレッシュできますし、食事も新鮮な食材が安く手に入るので伊織も喜んでいます!」


 俺は、それは良かったと頷いた。だが他に、話すことが無くなってしまった。なので俺は、ついに一軒家を建てたことを話してみた。すると佳奈さんは、目を輝かせた。

「すごい、すごいです! あ、あのう、ちょっと見てみたいんですけど、見せてもらえませんか?」

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