第三章 そうだ! 自分で小屋を増築して、一軒家を建てよう!

第十九話

 俺の小屋でビールを飲みながら、俺は慶介けいすけの話を聞いていた。それによると慶介は、これから一カ月かけてクラウドファンディングで百万円を集めて、をリフォームする計画だという。お金を出してくれた人へのリターンは、慶介が経営するワーケーションハウスの家賃やちんを三か月間、半額にするというものだ。ワーケーションハウスとは、観光地やリゾート地でテレワークする人に部屋をす建物だそうだ。


 俺はそんなに上手く行くかな、と思ったが慶介はやる気まんまんだった。

「それで今回は良いなと思った物件ぶっけんを直接、見にきたんです」


 慶介の話によるとその物件は俺が小屋を建てた山にあるが、住宅地に近かった。それで次に日に、俺も一緒に見に行った。それは平屋ひらや古民家こみんかで、かやぶき屋根やねだった。中に入ってみると居間いまには、床を四角く切って開けて灰をめてある囲炉裏いろりがあった。慶介は、得意そうに聞いてきた。

「ね、良い雰囲気ふんいきでしょう?」


 俺は、うなづいた。確かに囲炉裏があるハウスは、めずらしいだろう。それに風呂ふろは木製で、これも良い雰囲気だった。更にトイレはもちろんウォシュレット付きにして、キッチンもリフォームするし洗濯機せんたくきも置くそうだ。だが気になったので、聞いてみた。

「部屋は、いくつあるんだ?」

「はい、五つです。僕もここでらす予定なので最大、四人の方が住めます」


 四人か……。それで経営できるのかと聞いてみると、上手うまく行ったら家賃収入やちんしゅうにゅうめてまた、空き家をリフォームするそうだ。そうやって将来的しょうらいてきには、三つのワーケーションハウスをリフォームして経営したいそうだ。なるほど、それなら結構な家賃収入が得られそうだ。


 そうして古民家に満足した慶介は、クラウドファンディングでお金を集めながら会社をめる用意をすると言って東京に戻った。


 それから一カ月ほどぎて、九月になった。俺はユーチューブの広告収入こうこくしゅうにゅうを確認して、おどろいた。何と、十万円近くのお金が入金にゅうきんされていたからだ! だが、喜んでばかりもいられない。今回の広告収入は、小屋を建てた時の動画の視聴回数しちょうかいすうが多かった時のものだ。


 はっきり言って小屋を建て終わり、畑をつくった動画の視聴回数は少なかった。なのでどうしたら視聴回数が増えるか、なやんでいた。だが、ひらめいた。今度は、小屋を増築ぞうちくする動画を配信はいしんしようと!


 どう増築するか考えていると、アイディアが次々とかんだ。まず必要なモノを、増築したスペースに入れよう。初めに思いついたのはトイレ、風呂、洗濯機、キッチン、居間だった。やはりトイレはどう考えても必要だし、風呂も必要だ。これからは、寒くなる。いつまでも、川で行水ぎょうずいをするわけにはいかない。


 洗濯もそうだ。川で洗濯したものをテントにかけて自然乾燥させる方法も、寒くなると難しいだろう。それに洗剤せんざい無しで洗うと、やはりよごれは落ちにくい。


 そして、キッチンも必要だ。今までは外で焚火たきびをして調理していたが、冬になって雪が積もるとやはり難しくなるだろう。うん、キッチンも必要だ。それに東京のアパートから持ってきた、冷蔵庫れいぞうこも入れよう。そして小屋の中にあるのがベットだけだと、生活しずらい。やはり居間も必要だ。


 そして居間には寒さ対策、屋根の雪をけやすくするための暖房だんぼうが必要だ。俺はその暖房を、まきストーブにしようと考えた。薪なら山の中にもあるし、源治げんじさんの木材屋もくざいやから出る端材はざいを燃やしてもいいと思ったからだ。


 でもこの増築には、お金がかかる。だから今まで不便ふべんだと思っていても、できなかった。でも今は、十万円近くのお金がある。これだけあれば、小屋を増築することができるはずだ。俺は早速さっそくノートに、図面ずめんき始めた。まず今ある小屋を表す、長方形を描いた。さて、どうやって増築しよう……。まず、小屋の後ろには畑があるからダメだ。そして小屋の右側にはニワトリ小屋を建てて、ニワトリをいたいと思っている。


 そして利久りきゅうさんの家では、ニワトリ小屋の屋根にソーラーパネルを設置して太陽光発電を行っていたな。増築して洗濯機などの家電を入れて使うとなると当然、電気が必要になる。なので取りあえず小屋の右側にニワトリ小屋を建てて、屋根にソーラーパネルを設置して太陽光発電を行おう。あ、でも冬になって太陽の高さが低くなると、発電量がるんだった。するとやはり電力会社の電気が必要になるから、電力会社と契約けいやくする必要もあるか……。


 すると増築できるのは、小屋の前面と左側のスペースか……。しばらく考えて、俺はノートに長方形を描きした。小屋の前面に一つ。小屋の左側に一つ。そして小屋の左下斜ひだりしたななめに一つ。長方形の大きさは、今ある小屋と同じ大きさだ。つまり今ある小屋と同じ大きさの小屋を、三つ増築することになる。


 そして三つの長方形に、文字を書き込んだ。小屋の正面にある長方形には、洗濯機とトイレ。小屋の左側にある長方形には、居間。小屋の左下斜めにある長方形には、キッチンと。うん、これだけ決まればいいか。つまり俺の小屋は、四つの部屋ができることになる。そして、大きな長方形になる。いや、もうこれは小屋とは呼べないな。一軒家いっけんやと言ってもいいだろう。


 だが、ふと思い出した。風呂だ! 風呂をどうしよう?! うーん、洗濯機とトイレを置く部屋に作るか、ユニットバスみたいに。だが、ひらめいた。いや、せっかく大自然にかこまれているのにユニットバスに入るのは、ちょっと違う。建物の外に、屋根が無い露天風呂ろてんぶろを作ろう! そうすれば一年中、自然を楽しみながら風呂に入れるはずだ!


 春は新緑しんりょく木々きぎながめながら、夏はしずみゆく太陽を眺めながら、秋は赤や黄に色づいた木々の葉を眺めながら、そして冬は降り続ける雪を眺めながら。うん、これだ、こうしよう! 肝心かんじんの露天風呂を作る場所は、ニワトリ小屋の後ろにしよう。

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