第十八話

 仕方しかたが無いので、俺は軽トラでコンビニにった。買い物を済ませた慶介けいすけは、笑顔で話した。

「やっぱり、ここはいいですねえ。自然がゆたかなのに、ちゃんとコンビニもある。ある意味ここは、天国ですよ!」


 山の中の小屋こやに向かいながら、軽トラの中で俺は聞いた。

「取りあえず、どうしてここにお前がいるんだ? ちゃんと説明してくれ」


 するとやはり慶介は、笑顔で答えた。俺のらしを見て、自分もここで暮らしたくなった。東京にはもう二年も住んで楽しんだので、未練みれんは無い。そして、考えた。ここで暮らすのはいいが、収入はどうしよう。もちろん東京の会社をめることになるので、働かなければならない。でもZ市の会社に転職てんしょくすることは、考えなかった。サラリーマンとしてもう二年、働いたので今度は自営業じえいぎょうをしたいと。そして、ひらめいた。ワーケーションハウスを、経営けいえいしようと。


 俺はさすがに、聞いた。

「ちょっと待て。ワーケーションハウスって何だ?」


 すると慶介に、聞き返された。

健一郎けんいちろうさん、シェアハウスって知ってます?」


 俺は少し考えてから、答えた。

「えーと、一つの住居じゅうきょに、何人かが暮らすハウスだろ?」

「はい、そうです。キッチン、リビング、バスルームなどが共同で、個室こしつもあります。更に、ワーケーションも知ってますか?」


 俺は、再び考えてから答えた。

「えーと、確か働きながら休暇きゅうかを取るんだろ? 観光地やリゾート地で、テレワークをして」

「はい。それでシェアハウスでワーケーションをすることが、ワーケーションハウスってことです」


 俺は、うなづいた。

「なるほど。で、経営って、どうするんだ? どこに、ワーケーションハウスがあるんだ?」


 すると慶介は、胸をって答えた。

「それは、これから用意します。Z市にある、をリフォームして」

「なるほど。確かに空き家はZ市に、たくさんあるだろうけど……」

「はい。例のプロジェクトが無事ぶじに終わったので、仕事そっちのけで良い空き家をさがし出したんですよ~」


 仕事そっちのけと聞いて、俺はツッコもうかと思ったが止めた。慶介が担当していたプロジェクトは、無事に終わったようだからだ。だが俺には、まだ疑問があった。

「でもリフォームするにも、金が要るだろう? 金はあるのか?」


 すると慶介は、再び胸を張って答えた。

「いえ、ありません。なのでこれからお金を集めます。クラウドファンディングで」


 クラウドファンディングか……。確かインターネットで不特定多数ふとくていたすうの人から、少しずつお金を集める方法だったな。俺は、更に聞いた。

「確か、お金を出してくれた人には、物やサービスのリターンがあるんだよな? それは、どうするんだ?」

「ええ、それは、購入型こうにゅうがたクラウドファンディングですね。でも僕もそれでお金を集めようと思っているので、リターンは考えています」


 俺は興味きょうみがわいたので、せかした。

「だから、それは何だ?」

「はい。ワーケーションハウスの家賃やちんを三ヵ月、半額はんがくにするサービスです」


 俺は、おどろいた。

「半額?! いいのか、そんなことして? ちゃんと経営できるのか?」

「もちろんですよ~。僕がつくるワーケーションハウスは、一度暮らしたらずっと暮らしたくなるはずなんですよ~。だから家賃を三ヵ月、半額にしても全然、余裕よゆうですよ~」


 俺はそんなに上手うまく行くかなと不安になったが、慶介がやる気まんまんだったので何も言わなかった。それから小屋に戻った俺は、ビールを飲みながら慶介の話を聞いた。

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