第十六話
そして
「ここで暮らそうと思ったのも、
俺は再び、
「私はその頃、
お茶を
「そこで私は久美子にプロポーズしたんですが、できれば地方の自然の中で暮らしたいとも言いました。久美子は少し考えましたが、結局はプロポーズを受けてくれました」
すると久美子さんは、
「私はもちろん、驚きましたよ。え? 自然の中で暮らす? それって会社では働かないってこと? 一体、どうやって生活するのと」
俺は当然そうなるだろうなと思って、頷いた。久美子さんは、続けた。
「でも私も疲れていたんです、東京の暮らしに。私は利久と同じ会社で働いていたんですが、雑用の仕事ばかりでやりがいも無くて……。だったら二人で自然の中で暮らすのも悪くないかなと思って三年前に結婚して、ここで暮らし始めました。二人の貯金を出し合って、この
俺は、なるほどと頷いた。やっぱり皆、都会の生活で疲れているんだろうと。すると久美子さんは、微笑んだ。
「もし今、悩んでいる昔の私にアドバイスできるのなら、したいです。絶対、自然の中で暮らした方が良いと。幸せになれるからと」
そして利久さんと久美子さんは、微笑みあった。それを見た俺は、確信した。ここで暮らそうと考えたことは、間違ってないと。でも俺には、聞きたいことがあった。
「あの、利久さん。ちょっと聞きにくいことなんですけど、聞いてもいいですか?」
すると利久さんは、微笑みながら聞いてきた。
「はい。私が答えられることなら、何でも答えますよ。何が聞きたいですか?」
俺は思い切って、聞いてみた。
「はい、あのう……。生活費のことなんです。ここで自給自足の暮らしをしていると思うんですけど、やっぱりいくらかは現金収入が必要だと思うんですが……」
するとやはり利久さんは、微笑んだ。
「はい。確かに自給自足の暮らしでも、生活費はかかります。携帯電話の料金など。なので私はここで、
俺は疑問に思って、聞き返した。
「何でも屋?」
「はい。この近くで暮らしている方は、お
俺は、なるほどと頷いた。そして俺は、自分の生活費はここでの暮らしをユーチューブに動画を配信して
「なるほど、ユーチューブですか。今ではそうやって、生活費を稼ぐことができますね」
そして俺は、できればここでの暮らしを見学したいと頼んでみた。すると利久さんは、笑顔で頷いた。利久さんはまず、家の中を案内してくれた。驚いたことにテレビはもちろん、
そして、飼っているいるニワトリを見せてくれた。これらのニワトリが産んだ卵はもちろん食べているし、食べきれない卵はZ市の
それから家の裏にある、畑も見せてくれた。横が二十メートル、縦も二十メートルほどで結構、大きかった。この畑は、空き家に付いていたそうだ。この畑を使わない手はないので、野菜を
実際に家を見せてもらった俺に、はっきりとした目標ができた。これだ! 俺がしたかった暮らしは、こういう暮らしだ! そして俺は利久さんに家を見せてもらった礼を言って、軽トラに乗った。
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