第二章 そうだ! まずは自分で小屋を建てよう!

第十話

 二週間ほど、動画を撮影さつえいしてはユーチューブで配信はいしんした。食事の様子や自然をスマホで撮影したものを。やはり自然を撮影した動画の方が視聴回数しちょうかいすうが多かったが、食事の動画の視聴回数も増えた。おそらく自然の動画を見た人が、食事の動画も見てみようと思ってくれたようだ。計算してみると今までの動画の視聴回数の合計は、十万回をえていた。俺はふと、疑問に思った。ユーチューブの広告収入こうこくしゅうにゅうって、いくらなんだ? 早速さっそくスマホでググってみると、一万の視聴で約千円だと分かった。すると十万回視聴されると、約一万円か……。俺はここでらすのに一カ月、一体いくらかかるのかも計算してみた。


 まずは食費しょくひ普段ふだん、食べている物は、はんごうでいたご飯とおかず。おかずは主に川で釣ったアマゴの塩焼き、それとアマゴのみそ煮。それとコシアブラの葉と鶏肉とりにくの、炊き込みご飯だった。アマゴは川で釣ってるから、もちろんタダ。それと鶏肉はZ市のスーパーから買っているが、二週間で約千五百円だから一カ月で約三千円か。米もスーパーで買っているが、二週間で約二千円だから一カ月で約四千円。あと調味料は一カ月で、約千円ほどだろう。つまり食費は一カ月で、約八千円か……。


 そして買い物は軽トラでスーパーに行くので、そのガソリン代は約四千円。あとは、その他の費用。風呂ふろは普段は川に入ってませているが、週に一度はZ市の銭湯せんとうに行った。それで約二千円。服は東京のアパートから持ってきて、それを着ているからタダ。それにスマホの一カ月の料金は約一万円。タバコ代が一カ月、約五千円。それと……、あれ、これだけか? つまり食費が一カ月で約八千円。その他の費用が約六千円。スマホ代が約一万円。タバコ代が約五千円。つまりここでの一カ月の生活費は、約二万九千円か……。


 まあ、ここでテントに住んでいるから、もちろん家賃やちんは無い。電気、ガス、水道も使っていないからはらう必要が無い。ふむ、俺が一人でテント生活をするのに必要な金は一カ月、約二万九千円か……。まあ一カ月に、三万円あればいいか。なのでユーチューブの広告収入も一カ月、三万円を目指めざそう。でも今のままじゃ、ダメだろう。もっとバズる動画を、配信しないと……。


 俺は少し考えてみると、ひらめいた。そうだ、一軒家いっけんやを自分でてる動画を撮影して配信しよう! 以前、家を建てる動画を見てみたが、結構けっこうバズっていた。それは大工だいくさんに建ててもらっている動画だったが、自分で一軒家を建てる動画はどうだ? 俺は、確信かくしんした。ほぼ間違まちがいなく、バズる!


 だが待て、俺。俺一人で、一軒家を建てられるか? ちょっと考えて、あきらめた。それは、無理むりだ。俺はここが気に入ったので、ここにずっと住もうと思っている。それも、一軒家を建てて。だが、今は無理だ。俺には一軒家を建てる、技術も材料も無い。うーん、良いアイディアだと思ったんだが……。するとまた、ひらめいた。そうだ、まずは小屋こやを建てればいいんじゃないか?! 小屋なら材料の木材があれば、俺にも建てられそうだ。それに小屋を建ててから増築ぞうちくして、一軒家にすればいい。


 今はテントの中の寝袋ねぶくろで寝ているが、やはり快適かいてきではない。雨風あめかぜはしのげるが、せまくて快適ではない。小屋を建ててしまえばアパートから持ってきたベットを入れて、快適に眠れるはずだ。よし、まずは小屋を建てよう。小屋でも自分で建てる動画はめずらしいから、バズる可能性も高いはずだ。よし、そうしよう!


 そして俺は、考え始めた。小屋を建てるには、何が必要かを。まずは当然、土地とちだろう。そこでまた、考えた。山の中の土地って、どこで買えるんだ?……。考えても分からなかったので、ググった。すると、森林組合しんりんくみあいというところで買えるらしいということが分かった。Z市の森林組合の場所を調べて早速、軽トラを走らせた。


 そこは白くて、平べったい建物だった、入り口から中に入ると受付と思われる場所に、中年の女性がいた。山の中の土地を買いたいんですけど? と聞くと左手で指差ゆびさした。なるほど、左に行けばいいのかと俺は一礼いちれいして左に向かった。そこには分厚ぶあついレンズの眼鏡めがねをかけた、中年の男性がいた。俺は再び、聞いてみた。山の中の土地を買いたいんですが? と。


 すると中年の男性は眼鏡のズレを直して、聞いてきた。

「山の中の土地を買いたい? へえ、あんた若く見えるけど、いくつだい?」

「はい。二十五歳です」

「へえ、若いのに珍しいねえ……」


 そして俺は、聞きたかったことを聞いた。

「それであの、山の中の土地は、ここで買えるんでしょうか?……」


 すると中年の男性は、再び眼鏡のズレを直して答えた。

「ああ、買えるよ。で、どこの山?」


 俺は、Z市の南にある山と答えた。すると中年の男性は、山の地図を出して聞いてきた。

「具体的に、どのへん?」


 俺は少し、あせった。俺が買いたい土地は、今キャンプをしている場所だが、地図ではそこがどこか分からなかったからだ。するとふと、思いついた。

「あの、丹波道夫たんばみちおさんの家はどこですか?」


 中年の男性は、地図を指差しながら聞いてきた。

「ここだよ。ってあんた、道夫さんを知ってるの?」


 俺は、アマゴの釣り方を教えてもらったりして、お世話になったと説明した。中年の男性は、うなづきながら聞いてきた。

「なるほどねえ。すると買いたい土地は、道夫さんの家の近くなの?」


 俺は、俺の買いたい土地は道夫さんの家から、一キロほど下流かりゅうにあるとげた。


 中年の男性は指を動かして、頷いた。そして、聞いてきた。

「なるほど、この辺かあ。それでこの土地を買って、どうするつもり?」

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