ある日の遅いハロウィン日記 番外編

ある日、天界樹様の畑にて⋯


『うふふ。美味しそうね~♪やっぱり秋の味覚は格別よね。さつまいもに、里芋に、かぼちゃに⋯かぼちゃ?』

何か忘れているような?なんだったかしら?


『ん~⋯⋯あっ!かぼちゃといえば、ハロウィンじゃない!すっかり忘れてたわ』がくぅっ

私としたことが⋯


『レイ?そんなところで這いつくばって何をしておるのじゃ?』

〖また何か魔法で実験してるんじゃないでしょうね?〗

『天界樹様、魔神様、いえ、やりたいのは山々ですが、違います』

〖やらないで!?〗ガクガクっ

『やめてたもっ』さめざめ

『あ、あらあらまあまあ⋯』

そんなに信用ないのかしら?私⋯


『私としたことがハロウィンを忘れていたのよ⋯ああ、孫に可愛い衣装作りたかった⋯でも、美味しいご飯ならいける?』

〖ああ、たしかに!愛し子の可愛いコスプレ見たかったわ!〗

『コスプレなんて言葉まで仕込まれたのね?魔神様』

〖ええ!面白い文化よね!何しろ可愛いし!あっ!天界でもやればいいじゃない!エルフの子とか、保護した獣人の子とか、喜ぶんじゃない?〗

『それは良いの。辛い思いをしてきた子らじゃ。あまり贅沢を覚えてしまっては大変じゃが、たまの祭りだと思えば良いのではないかえ?』

『あらあらまあまあ!そうね、いい考えだわ!それじゃ、さっそく支度しないと!』

『『『わたくし達、お針子も参加しますわ!ご指導くださいませ!』』』スチャっ

『きちちっ』しゅしゅっ

『天蚕様もやる気ですわっ』

『ワハハハ!俺も忘れちゃ困るぜ!料理なら任せろ!』ドドンッ

『キキッ!』ぴっ!


『え!?あらあらまあまあっ』どきどき

び、びっくりしたわ。どこから湧いたのかしら?


〖みんなが参加してくれるなら助かるわね〗

『そうじゃの。天蚕もたくさん糸を出してくれるようじゃの』

『そうね。それじゃ、子供たちのために頑張りましょう!』


〖『『『『『おー!』』』』』〗


と、言うわけで


『ねぇ?獣人の子たちは、元の素材を生かす?それとも、全く違う風にする?あのもふもふは隠したらもったいないと思うけど、いつもと違うものになれる日でもあるし』

どうしたら喜んでもらえるかしら?


『ふむ。とにかく色々作って選んでもらったらどうかの?じゃが⋯』

『ん?じゃが?』

『あんな色気入らぬのじゃ。可愛い一択なのじゃ』じとー

『くっ!それは当然よ』


〖う~ん、攻めすぎかしら?〗

『そんなことございませんわ!お似合いですわ!』

『真っ黒なビスチェに剥き出しの引き締まったお腹!ピッタリとした真っ黒なミニスカート!眩しい太もも!』

『そのつけ牙も、襟の立ったマントも、膝までのその編み上げブーツも!ヒールで踏まれたいですわ!』

『主神様を悩殺ですわ!シア様の弟か妹がお出来になるかも!』

『『『『『きゃーっ♪』』』』』

〖そ、そうかしら?〗

お針子さんたちにきゃっきゃされてるヴァンパイアコスの魔神様⋯


『くっ!うらやまけしからんボディを持ってるからって~』ぷるぷるぷる

あれじゃヴァンパイアじゃなくてインキュバスじゃない!?

『堪えるのじゃ!レイ!(今、あの姿の魔神様に飛びかかったら大変なことになるのじゃ!)ほれ、女神様の清楚なマントドレス、こんな感じでどうじゃ!?』

『え、ええ。魔女っぽくていいんじゃないかしら?』

『そうかえ?良かったのじゃ。ところで、レイが今作っているのは⋯』ヒクヒク

『ああ、これ?これは天界樹様の衣装よ。花魁風のお着物、お似合いになると思うのよ』にこにこ

『わ、妾はそこまで色気は求めてはないのじゃが⋯』ヒクヒク

『ええ?絶対似合うわよ~』

『『『はい!お似合いですわ!』』』

『せ、せめてもう少し控えめに頼むのじゃ⋯』シクシク

なぜ、魔神はダメで妾は良いのじゃ!?

『レイは何を着るのじゃ?』

『あら、どうしようかしら?黒猫にでもなろうかしら?』

『き、着ぐるみかえ?せめて猫耳ドレスとかにしたらどうかえ?獣人の子らとお揃いに見えるのではないかえ?』

『そうね⋯あ、なら、冒険者風に中に黒の短パンを履いて、ドレスの前側を足が見えるようにスリット⋯ん~それとも前開きのシャツドレスみたいにするとか⋯』

『それなら素足を出さずともレザーのパンツでも良いのではないかえ?』

『おお~それもいいわね』

色々楽しめるわね~


『エルフさんたちの巫女服というのはこんな感じでしょうか?』

『天狐様をお見本にお耳としっぽもお付けしてみましたが』

『まあ!もふもふ!可愛いわ!』

『妾も花魁よりそちらが良いの~』

『『『ご用意いたします!』』』

『ええ~じゃあ、お色直しってことでこっちも着てね』

『やはり着なければならぬのか⋯』シクシク


そんなこんなで


『『うわ~あ』』

『『『『きゃーっ』』』』

『『『『すごーいっ』』』』

広間に集められた子供たち。

魔神様と工芸神様たちがめちゃくちゃ張り切ったみたいで、広間を薄暗く、オレンジ色に光るジャック・オー・ランタンをそこかしこに浮かべ、リアル蜘蛛の巣のみならず

『うわぁ大きな蜘蛛さんっ』

『ガイコツさんも踊ってるよっ』

『なんで妖精さんたち黒い服きて箒で飛んでるの?』

『コウモリの羽つけてる子もいるよ!』


風もないのに黒いカーテンがバタバタと⋯何もかもがすごいわ。まあ、子供たちも大喜びしてるからいいかしら?


子供たちも、着ぐるみだったり、魔女だったり、狼男だったり、海賊だったり、みんなでキャーキャーいいながら衣装を選んでるのも可愛かったわ。エルフ家族も、キツネのもふもふ巫女さんで可愛いし

『ご両親、美しいわね』

『ほんにのぉ』

特にご主人、神主じゃなくて巫女さんなのに

『違和感ないわ』

『美しいのぉ』

究極のジェンダーレス?


『さあ!席に着け~飯だぞ!』

『『『『『わ~いっ♪うわぁっ?』』』』』

『『『こ、怖い~』』』

『『『僕らが食べられちゃいそう~』』』

喜んでたはずが、一転、阿鼻叫喚


『あらあらまあまあ⋯』

『やりすぎではないかの?』

そう。料理長が持ってきたのは大きなかぼちゃを器にしたグラタンなんだけど⋯


『グツグツしてる~』

『グラグラじゃない?』

『にたぁって笑ってるよぉ』

『なんかゆらゆらしてる?』

正直いって不気味すぎて食べられる気がしないわ⋯何故そこまでおどろおどろしい物に?


『まあまあ、待てよ。これをな、最後の仕上げに追いチーズをして、火魔法で、よっ!と⋯』ぼっ


『キシャーっ!』


『『『『『『ギャーっ!』』』』』』

だから、演出が怖すぎるわ⋯あら?


『ほら、見てみろ』ニッ


ぱああっ


『『『あ、あれぇ?』』』

『『『にっこり笑って』』』

『『『可愛くなった?』』』


『な?』ニッ

『『『『『うん!』』』』』

やるわね!料理長。ニコニコして取り分けてるわね。


『『『わ~いっ♪』』』

『『『とろとろ~♪』』』

『『『美味しい~♪』』』


『そりゃあ良かった!他にも色々あるし、デザートもあるからな!』

『『『『うん!ありがとう!』』』』


うんうん。喜んでもらえてよかったわ。


『ところで、あれって大丈夫かしら?』

『さてのぉ』


〖お父様しっかりなさって!〗

〖う~ん〗ぐふぅっ

〖あら?そんなに刺激強かったかしら?〗

〖お母様!もう少し慎みを持ってください!〗

〖ええ?似合うでしょ?〗

〖そういう問題じゃありません!〗


『あれって教育にも悪いわよね?』

『そうじゃの』

『なんでビスチェの胸元編み上げに変わってるの?』

普通のビスチェだったわよね?

『うむ。ゴリ押しされてのぉ』

『谷間すごいことになってるわよ』

『うむ。女同士でも目のやり場に困るのぉ苦肉の策のレース追加だったんじゃが⋯』

『天界樹様は花魁着てくれないし』

『あれも教育には良くないと思うぞえ?』

『せっかく作ったのにぃ。後で着て見せてね』

『⋯子どもらがいない時にの』

約束ですからね?


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

お読みいただきありがとうございます。

ハロウィン、我が家は無縁なのでうっかりしてました⋯

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