第63話 工芸神様の部屋にて

ここは工芸神様の部屋


〖ふふ、ふふふ⋯楽しいですねぇ。色々試せますね。ふふふふふふ〗


怪しい笑い声が⋯


〖怖ぇよ、工芸神〗

『不気味だな、おい』

『こんな主人は嫌です』

その姿を武神様、龍様とグリ様が遠巻きに見ています。


〖おや、そんな所で見てないで入ってらしたらどうです?〗

〖入り辛ぇわ。お前が連れて来いって言ったんだろうがよ〗

『あまりの怪しさに恐れを成してんぞ』

『主人があんなですみませんね。入って下さい』


『『は、はい。お邪魔いたします』』


入って来たのはエルフのご夫婦


〖ああ、お呼び立てしてすみません。どうぞお入り下さい〗


『『は、はい』』

エルフさんたち、緊張でカチンコチン。


〖お呼び立てしたのは、他でもありません。あなた方の装備についてです〗


『装備ですか?』

『私たちの?』


〖そうです。幸い、魔石が大量に手に入りましたからね。色々できますよ〗うきうき

困惑するエルフさんたちに引き換え、工芸神様は実に嬉しそうです。


〖まあ、まずはマジックバッグですね。これはご家族全員に一つずつ。皆さん弓をお使いになるのですからウエストポーチにしましたよ〗

『こ、この様な貴重な物を』

『『ありがとうございます』』

〖いえいえ、それは目くらましの言わばダミーですしね。そちらには盗まれても代わりが効くものを入れて下さい。まあ、個人認証と、触れる者に制限をかけますので、万が一、盗まれても手元に戻りますけどね〗にこり


『『それは、既に国宝級では⋯』』

ダミーとおっしゃいましたよね?これだけでも既に頂くことなど出来ないと、伝えようとしたその時


『甘いわっ』

と、どこからか割り込む嵐を呼ぶ声が⋯っ


『『え?』』ギョッ

〖ゲッ!レイ!〗

『なんでここにっ』

『工芸神が呼んでいましたよ』

〖『なんでだよっ』〗

武神様たちでさえ思った!呼んじゃダメなやつだろ!と⋯


〖甘いとは?〗

『盗んだヤツに何もないなんて!捉えるとか、電撃食らわすとか、何か対策しないと!』

〖ふむ。確かに、悪者を野放しには出来ませんね〗

『そうでしょ?』

〖それは武器にも必要ですね〗

『そうよ!昔見たアニメには、武器の属性に合わせて、敵の手に渡らないようにしてたわよ。水だったら、水になって崩れ落ちるとか、風だったら重くなるとか、火だったら炎に包まれるとか!』

〖ほぉ、それはおもしろいですね〗

『でしょ?』

〖『ふふふふふふ』〗


何やら物騒な方向に盛り上がる二人⋯


『『あ、あの、普通でっ』』

ぽんっ

〖ありゃ無理だ〗

『諦めろ⋯』

『主人がすまん』

首をフリフリ、哀れみが籠った顔と声が⋯

『『ええ⋯』』

〖『諦めろ』〗ぽん

『すまん』

『『⋯』』

ダメ押しされた。だがしかし、これはまだまだ序の口


〖それでですね、メインのインベントリはこちらです。指輪やバングルも考えたのですが、弓や剣の邪魔になってはいけませんからチョーカーにしました。この中央の石、こちらがインベントリになってます。時間経過もありませんからね、色々入れ放題ですよ。ついでに、両脇の石は片方が魔力タンク、もう片方が念の為の結界魔法を付与してあります。呪いや魅了など跳ね返して倍返ししますのでご安心くださいね〗にっこり

『もちろんこれにも』

〖ええ、もちろん。それにこちらにも先程の捕縛機能など付けますよ〗

『そうこなくっちゃ』

〖『ふふふふふふふふふ』〗


わあ、さっきよりもひどいことに⋯


『『⋯ああ』』ふるふる

〖『諦めろ』〗ぽん

『まだまだだぞ、きっと』

『『え?』』


そう。まだ、言うなれば収納問題だけ。エルフであることの問題と言えば


〖悪どいエルフが居なくなったとはいえ、まだ人間がいますからね〗

〖確かにそうだな。エルフの神罰を見て、人間も今は大人しくしてるだろうが、危険がなくなった訳ではない〗

〖そうです。ドワーフや、獣人族など他種族が多く所属するギルドがあるようですので、そこでしたら大丈夫かもしれませんが、それ以外ではまだまだエルフ達は狙われるかもしれません。なので、姿を変えるアイテムを作りました。これです〗


『『これは?』』

コロンっとエルフさんの手の中に渡した物は


〖イヤーカフと言うものです。ピアスと違って穴は必要ないそうですよ。まずはあなた方に試してもらおうと思いまして〗

『あなた方も、子どもたちの前にご自分たちで試された方が安心するでしょう』


工芸神様なりの気遣いのようだ

『『あ、ありがとうございます』』うる

思わず感動して、涙が⋯


〖他にも試して頂くものがありますしね〗にっこり


『『え⋯』』

涙は引っ込んだ⋯


☆。.:*・゜☆。.:*・゜


お読みいただきありがとうございます

遅くてすみません。

感想や応援など励みになっております。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る