第34話 佐野滅亡
真に辛い。あの後、長野殿から「失望した」との手紙を送られ、心を抉られた。そりゃそうだ。一戦もしていなかったから。包囲されただけで降伏する臆病者になってしまったから。
しかし、そんな俺もそこからは獅子奮迅の勢いで、さまざまな戦に参加し戦功を挙げた。これが今の俺の誇りとなり、自信となった。だからこそ、河越の時の落城は俺の中での禁忌となっている。
また、これは別の話だが、二人の息子が謀反
を起こしたのは心を痛めたが、結局は徳川殿に仕えていると知り、一安心した。
そして。
あの時味方としてあい見えたものと今関東をかけ、大戦をしていた。複雑な心境ながらも、苦々しく目の前の敵を見定める。
宝衍「なんだ?冗談も通じないのかw勢い余った若武者と同じぞ?戦功者とは思えぬなw」
康邦「冗談?じゃ、俺がお前を殺しても冗談で済むのか?」
宝衍「うむ…難しいところじゃな」
康邦「真面目に考えてるんじゃねぇ!」
宝衍「ま、儂がお主に負けるなんてことはあり得ないんだかな」
宝衍は大きく振った刃をかわし黄ばんだ歯をこっちに見せつける。少しウザい。
康邦「はっ!てい!えぁ!」
めった斬りにするも、それは藁人形で、宝衍はすでに遠のいていた。
宝衍「儂はお館のとこに行かねばならんでな。んじゃ、そういうことで」
康邦「チッ!」
苛ついた俺は周りの兵を斬り、他のものを少しでも楽にさせようとする。宝衍は何故か他人を斬らない。だからこそ、俺はこっちを優先した。目の前の青年を庇い、敵を撃つ。
そのうち、朝昌と名乗った青年と行動をするようになった。俺が騎馬で敵を突き落とし、文昌がとどめを指す。朝昌がピンチの時は俺が文昌を助けた。
扇哉朝昌「助かりました!」
しかし…彼は…どこだったか…誰かの面影がある。誰だろうか?
そのようなことをしているうちにだんだん
と佐野の本陣へ近づいていく。本陣では、苛烈なまでに二人のものが一騎打ちをしていた。そして、一人の武者がもう一人の武者の喉元を貫く。
血みどろになりながら立っていたその武者はまさしく赤鬼に見えた。
設定裏話
お察しの方もいるかも知れませんが、文昌は朝定の孫です。
河越夜襲時に彼は妻と娘を城に残し、出陣。討ち死を遂げた後、妻は自刃し、娘は家臣に託され、山中は逃げ出しました。娘に似た事故で死んでいる子供を残し、去ったおかげで、娘は死んだものと思われ、
扇谷の血を残すことに成功。その助けた家臣の息子と彼女は結婚し、産んだ息子が朝昌です。扇谷の誇りを持つ彼女は扇の字を残し、息子にも朝の字を継がせました。
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