第33話 戦慄の情景
業正side
俺は唖然としていた。11万もいた軍勢は俺が率いた2500を除き、全壊していた。
扇谷様たちもあの律儀さだ。万に一つも生き残るということはないだろう。
地に伏しているのは多くが足利、山内上杉の兵だ。顔見知りを見つけ、虚しい気持ちになる。
業正「大敗北だな…」
頼れるのは沼田顕泰と藤田泰邦くらいか…それくらいに山内家内で頼れる家臣は少なかった。これにて扇谷上杉家は滅亡。その家臣で太田資正、上田朝直を取り込めれば良くて五分には持ち込める…しかしあのバカ殿だ。早々に彼らを取り込み、バカ殿を隠居させ、新たに北条に対抗する勢力を作らねば…
綱成「おうおう…そこに見えるは長野信濃守殿かな?御首を頂戴いたしたい」
業正「北条左京大夫か…俺の首はそう安い首ではないぞ!」
綱成は一騎で近づき、刀を振り下ろす。
業正「若い!」
刀を弾き返し、馬を蹴る。綱成は吹き飛び、馬をなんとか立て直した。
業正「お主はまだ青い。そんなやつにこの首、取らすわけにはいかぬわ!」
経験を重ねねば名将にはならない。
実際、一騎で駆けてきた綱成は長野勢に包囲され、そう簡単に討ち取られる状況になっていた。
業正「俺と一騎打ちをしたいのならば関東に武勇を示せ!それからにしてやろう」
そうして、業正は綱成の逃げ道を作る。
綱成「フッ…粋なことをする。さらばだ!」
そう言い、綱成は去っていった。まだまだ自分より強者が関東にいる。そういうことを知り、血が湧き立ったのだ。
康邦side
空前絶後の超絶怒涛のピン芸人…じゃなくて、そんなふざけれる自分に少しホッとする。河越城の戦いはまさかな大敗北だったようだ。扇谷様と難波田殿は討ち死に。長野殿と太田殿が行方知れずか…仲良くしていただけた方たちだったが故に胸にくるものがある。
北条の大群が目の前に迫る。まだ、此処が俺の散り場所か?そう覚悟した時、あと他の書状が届いた。それをみた俺は眼前に迫った北条家に降伏を申し入れる。乙千代丸殿を養子に迎え、北条家の傘下に入る、沼田城主となる、城にいるものの全ての命を奪わない。この三箇条をもとに、沼田城は陥落したのだった。
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