第32話 崩壊の音
うわーー
朝定「なんだ!」
憲重「太田が裏切ったようです!」
朝定「あの腐れ坊主が…」
さっきから悪い事しか届かない。氏康の居場所は分からず、混乱している兵を正気に戻す。
しかし…それを簡単にあの氏康が見逃すはずがなかった
憲重「左奥より奇襲!成田殿敗走!」
朝定「氏康か…皆の者!ここにいてはまずい。とりあえずは北に迎え!ここは俺が受け持つ!」
そうすると近くにいた若者が
長野吉成「長野業正一子、長野吉成麾下五百。加勢いたします」
ここにきて山内にもまともなものがまだあったか。少し安心する。しかし率いている兵は僅か五百。俺の二千八百と合わせても三千三百。足りない。
元忠「そこに見えるは扇谷上杉修理大夫殿とお見受けいたす。この多目元忠、御首頂戴致す」
そういうと相手は刀を抜く。
朝定「憲重!あとは頼んだ。俺はこいつを止める」
そう言いながら。相手を見返す。多目元忠…叶わない相手だとはわかっている。俺は幼い頃から英才教育を受けていたため戦術、戦略は得意だが、肉薄するような戦闘はあまり経験がない。
剣術の訓練は訓練だ。殺し合いをしていない俺と、北条の内で五本の指に入るほど武勇に優れている相手。単に一つも勝ち目はないだろう。只、ここで引くわけにはいかぬ!
元忠「おお。この戦場にいる敵は臆病者ばかりと思っていたが、貴方様は違うようですな」
そう笑みを浮かべ、俺をみる。
朝定「多目…五色備の黒か…」
元忠「おお、よく存じていますな」
朝定「知らぬわけがなかろ。戦場であい見えてはいないものの戦略上でお主の姿は邪魔だったわ」
元忠「そこまで過大評価していただき光栄です。ですが私も一人の人間。そこまで恐れますか?」
朝定「一人といえども、そのものが有能で、多くの配下を率いたらそれは一つの災害よ。
有能なものが多い国ほど強い。当たり前だろう?」
元忠(どうやらこの方はのちに生かしたらまずい。時が時なら北条を倒せるだけの人物だ。ここで確実に殺さなければ)
元忠「残念ながら、あなたの道をここで閉じさせていただきます。氏康様のためにも、北条のためにも!」
ガギン
朝定「やはり…叶わぬか…」
一撃で刀が折られた。すぐに背中に入れていた槍を抜き、最高速のスピードで突き出す。
元忠「槍の方が本命か…」
朝定「あいにくこっちの方が得意なものでな」
だが、ここで一人を押さえつけたとはいえ、まだまだ北条には警戒人物がいる。北条左衛門大夫を河越城から出なければなんとかなるが、山内のバカはもう逃げ出したからな…抑えれるだけの将がいない。長野殿も平和の混乱を抑えるので精一杯だろう…
(先に見えるのは崩壊か…)
そう思い、苦笑する。
次の瞬間、俺の体に槍が突き刺さった。
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