第8話 過去

順慶side


血に塗れ、されども其奴はここに立っていた。


順慶「どうしてここまで…」


ザシュ


目の前にいたものが斬られる。気づいたら配下はほとんど地に臥していた。


順慶「お前は…一体」


ザシュ


長月side


ものすごい悪寒が急激に背に走った。

それこそ父が死んだ時と同じくらいの。

気づいたら私は走り出した。

木を蹴り川を飛び越え自分を呼んでいる方へ走る。

立ちはだかる武者どもを蹴り飛ばし走る。

長月「ハァハァハァハァ」

小高い丘の上の城を見つけ、駆け込んだ。

もの凄い死臭がする。

死体の山ができている。

その先にのは















見るも無惨な姿に成り果てていた豊前だった。

長月「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぁあ」

そう叫んでいた私の後ろに一人の老人が現れる。私は剣を抜く。


丹波「待て!長月」

長月「どうして私の名前を?」

丹波「豊前殿に最後にお前たちのことを託されたのだ。豊前殿は最後までお前たちを思っていた」

長月「どういうこと?」

丹波「豊前殿は愚者、筒井順慶に騙され襲われた。豊前殿は手向かい、順慶めの首を落とそうとした時、後ろから松倉右近に切り殺されたのだ。それでもワシがついた時はまだ空きがあったが、死ぬことはわかっていたのであろう。ワシに同じと葉月のことを託され、この世をさったのじゃ。確かにワシがもう少し早くついて居れば斯のようなことにはならなかった。すまん」

そう言った丹波の表情は悲壮感を漂わせていた

長月「それで最後になんと言ってたの?」

丹波「最後まで見てやれなんだ、すまんとのことだ」


それを聞くと私の目からは涙が溢れていた

丹波「伊賀に来い。長月」


これが私と丹波様の出会いだった。


そこからの日々は大変だった。

忍びのことを何も知らない私たちにとって、一から知るということは大変で、辛いことも多々あった。


長月「ハァハァハァ」


そして、そして、そして


丹波様に拾われてから半年、眼下には梅鉢の家紋筒井家の軍勢がたなびいていた。


長月「よく来たね…豊前様、仇を必ず!」


そう呟き、筒井の陣に夜襲をかける。


長月「まずは松倉右近!やつを殺せば順慶は動くことはできない!」


右近の陣の幕を切り、松明を蹴り飛ばす。

右近の兵が動いてきたが、手裏剣を投げ、動きを止める。

しかし右近も気づいたようで右近は刀を抜こうとするも、その前に右近の脇腹を脇差で斬る。


松倉右近「くっ、豊前めの娘が…」 

向こうはこちらに気づいたようだが関係なしに刀を構え、切ろうと刀を振り翳した瞬間、私の眼前に一人の騎馬武者が飛び込んできた。


右近「左近殿!」


現れた騎馬武者は豊前の息子、島左近だった。



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