第14話
単独部隊。そこは部隊とは名ばかりの、個人で任務を受ける国家の雑用係である。
戦陣を切っての突撃はもちろん、要人の護衛から他国への諜報までやる、所謂、暗部だ。
波動術者であり、死なない私には前々から誘いはきていたが、理事長が私のような小娘がやるようなことではないと断り続けていたのだ。
だけど私は自分でここにくるのを選んだ。孤独でもなんでもいい。逃げられないなら戦う。
もう、仲良くなった人の死を見たくはない。
これからも学園からは成績優秀者が選出されて、戦場に送り出され続けるだろう。
私はこれまでそこに立ち合っていたが、そこから逃げ出したのだ。
これは逃げだろうか? ずるいだろうか? それでも、もう私の心はもう耐えられない。
単独部隊ではエクシードは装備しない。私はいつもの装備ではなく、黒いスーツ姿だった。
銀色の長い髪は邪魔になるから、編み込んで頭の中央でお団子にしている。
今は夜の街を駆けていた。ビルの狭間を駆け抜けて、一人の人間を追い掛けている。
他国の工作員らしい。この国に入り込んでテロ行為を働いた疑いが掛かっている人物だ。
仲間と合流するか、次のテロ行為に走るまで泳がせるはずだったが、セキウリウヲ共和国人だと悟った警察が職務質問したところを発砲して逃走したため、この状況に陥った。
白銀の髪の洋服を着た二十代くらいの男性が、ビルの狭間を走っているのを見つけた。
私は全身に纏った波動を少しだけ強化して身体能力を向上させ、男性との距離を一気に詰めた。私に気付いた男性が振り返って発砲してくるが、すべて私が纏っている波動で弾け飛ぶ。
「くそっ! 術者か!」
男性が低く唸りを上げたがもう遅い。私の蹴撃が男性の左頬を蹴り上げた。
「こちら鴉、目標の捕縛に成功」
私は波動で男性を拘束すると、無線に向けて告げた。鴉というのは私のコードネームだ。
中学生女子に鴉なんてつけるなんて、センスがないなと私は思った。
「こちら鶯。ご苦労。すぐに使いを出して引き取る。おまえは自室で待機してくれ」
「鴉、了解。自室に戻ります」
今回は殺さずに済んで良かった。あの人にはこれから拷問が待ち受けているだろう。
ただ、私の手を汚さなかっただけのことではあるが、それを喜ぶのは卑怯だろうか?
いや、私は私の仕事を完全に達成した。それ以上のことは考えないことにしよう。
私は、それ以上の思考は閉ざして、国から与えられた臨時の自室に戻った。
指令書は封書によって、用意されたこの部屋に送られてくる。
単独部隊に入ってからは他の隊員と会ったことがない。私が望んだ通りの場所だ。
私は封書を開けて中身を読むと封書は燃やした。
これは秘密厳守が義務つけられている、単独部隊の決まりの一つだ。
「護衛……か……」
私は任務の内容を繰り返した。本当は誰とも関わりたくない。
私が失敗したら死なせてしまう護衛なんて持っての他だ。だけど、そうも言っていられない。
これが私の選んだ道であり、自分で望んでここに来たのだから。
私は溜め息を吐いてそれを受け入れると、鏡の前に立って鏡に映った自分を見つめる。
「大丈夫ですよ! 私ならできます!」
自分に暗示を掛けるように鏡に写る自分に向けて呟き、発破をかけた。
次の依頼は三日後だ。私は荷物をバックに押し込むと、仮の住居を後にした。
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