第10話

 軍人は高出力の放射型エクシードで男を迎え撃つが、直撃コースのものはすべて簡単に弾き飛ばされ、侵攻の妨げにさえならない。

 このままでは部隊は壊滅してしまう。私は飛び出して、狙撃型エクシードで男を撃った。

 私も波動術者だ。波動を上乗せした私の弾丸は、小銃型でも高出力型エクシードに勝る。

 もちろん攻撃範囲でいうなら微々たるものだが、確実に撃ち抜けるだけの威力があるのだ。

 それを瞬時に見抜いたらしく、男は急停止をして私の波動弾をやり過ごした。

「おもしろい。女! 貴様が指揮官か!」

 男は私を睨みつけると方向転換をして、槍を振り翳してこっちに向かってくる。

「このっ! このっ!!」

私は自分の波動でさらに強化した波動弾で狙撃しながら、肩当てに仕込んであった爆撃型波動弾を撃ち放って男を迎撃する。弧を描いて四方から襲い掛かる爆撃型エクシードを、槍を横凪に振ってすべて爆発させると、立ち上がった黒い爆煙を突き破って男は急接近してくる。

「他国へ侵攻し、無関係なものを苦しめた罪、その身で償え!」

 男が力強く叫ぶと、呼応するように、槍を包む緑の波動の密度が増して巨大化する。

「私にだって、守りたいものがあるんです!」

 私は波動を放出して、私の身長を超える円状の盾を形成し、槍を受け止めた。

「戦いを仕掛けておいて言えたことか!!」

 あまりの威力に衝撃だけで私は弾かれ、私の盾も三秒も持ち堪えられずに砕け散った。

 体制を立て直そうとする私に、男はさらに追撃してくる。

「この暴漢! シュリちゃんから離れろ!」

 ミーナが特攻機らしい猛速度で男の背後から接近し、波動弾で男の背中を撃つと、即座に離脱をした。私が教えた特攻機の戦い方ヒットアンドウェイだ。

 男の被害は軽微だが、私は体制を立て直すことができた。

「一人じゃ適わないなら私たちを頼って!」

 ロルナレンが銃型エクシードで男を追撃しながら力強く言ってくれた。

「そうそう! みんなでまた、あの風景を見るんでしょう?」

 ソシリアが高出力型エクシードを連射させて、さらに男を狙い打つ。直撃を嫌ってか、これにはすかさず、男も一度大きく距離を取った。

 この三人は波動術者にこそなりえなかったが、波動の訓練も受けている。

 知識として認知しているだけでもエクシードを扱うときの差は大きい。同じものを使用したとしても威力に雲泥の差が出るのだ。彼女たちと、軍人たちとでは威力がまるで違う。

 軍人の攻撃には無防備に突き進んだ男も、彼女たちの攻撃は危険だと察したのだろう。

 私は、彼女たちの存在を心強く思った。

「私が前に出ます。短時間ですが攻撃を受け止めますので、三人で攻撃をして下さい」

 私が通信機能を使って短く告げると、三人は三様に私に無茶をしないことを釘刺しながらも、作戦には賛成をしてくれた。

「退けば追撃はしない。向かってくるのなら、撃ち滅ぼすだけだ!!」

 男は声を上げて高らかと叫ぶと、再び正面から突進してきた。あくまでも狙いは私のようだ。

 退きたいのは私も山々だが、戦場に出た以上、指揮権は部隊長にある。

 まだ本隊が要塞に攻撃を仕掛けている以上、私たちだけが離脱するわけには行かない。

 私たちは軍人でないが、軍のため、国のために戦う存在だと教育を受けてきた。軍の命令に背いたら、生きる術も帰る場所もないのだ。

 男との交戦はそれからしばらく続いた。男にはまだ余裕を感じられたが、私たちはもう限界だった。私もミーナもロルナレンも、飛翔しているのも辛く、もう高速では動けない。

「もう! いい加減にしてよ!」

 ソシリアが叫びを上げながら、最後に全力を込めた高出力の波動砲を放った。

 男は鼻を鳴らすと、少し体を移動させただけでそれをかわした。波動砲は要塞に向かって行く。また、あの見えない壁に阻まれて消滅するはずだった。

 しかし、そのときは違った。ソシリアの放った波動砲は、受け止められたように要塞の手前で停滞し、渦を巻きながらさらに膨れ上がっていくと、微かな間の後に跳ね返ってきたのだ。

威力も速度もソシリアが放ったものとは比較にならない。まさに、彗星のような光の渦だ。

「これは!」

あれが直撃したら軍人の部隊は壊滅だ。私は盾を出して受け止めようとした。

「あっ……」

だが、私の作り出した盾など呆気なく砕け散り、抗うこともできずに光の渦に飲み込まれた。

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