第5話

 それから十日の間、私は三人と行動を共にすることになった。

 コミュニケーションを取るためと、エクシードの使い方を伝授するためだ。

 武器のエクシードは授業でも教わるし、慣れるようにと普段から生徒全員が持たされている。

 だから、これから三人に憶えて貰うのは、武器以外のエクシードの使用法だ。

 武器以外を授業でやらないのは、値段が高額だし支給される数が少ないのが理由らしい。

 それらのエクシードを装着するのに邪魔にならないように、今は体に密着するインナースーツを、私も含めて四人が装着して訓練場にいた。

「ねぇ、これ……、なんだか恥ずかしいよ……」

 体のラインがはっきりと露出してしまうスーツに、ミーナが前屈みになって、隠すように自分の体を抱くようにして、周囲の視線を気にしてきょろきょろとしながら言う。

「こんなの水着だと思えば余裕じゃん。だいたい、隠すほどないじゃん?」

「はぁ!? 人のこと言えるの? ソシリアだって大差ないじゃない!」

意地の悪い笑みを浮かべてソシリアが言うと、ミーナが声を張り上げて怒り出した。

「それでもミーナよりはあるもん」

 とソシリアが胸を張ったのを見て、胸のサイズの話だとようやく理解した。

 私は自分の胸を見てから二人の胸を見て、ミーナよりは大きいが、ソシリアとは同じか、少し小振りなくらいだなと思った。気にしたことはないけど、平均ってどのくらいなのだろう?

「それにしても随分伸縮性の良い服ね。渡されたときは三人と同じサイズだったから、私には小さいんじゃないかと思ったけど、ぴったりよ」

 成人大人なのではと思うほどにグラマーな身体を披露して、ロルナレンが言った。

 私たちは三人とも、その同年代とは思えないグラビアアイドルのような体つきに仰天した。

「な……、なによ……? みんなしてじろじろ見て。シュリちゃんまで」

 私たちの視線に気付いて恥ずかしくなったのか、ロルナレンが急に顔を朱に染めた。

「あ、すいません」

 無遠慮に見てしまったのを失礼だったと思い、私は慌てて視線を逸らした。

「あ、いいのよ。気にしないで。シュリちゃん」

「そうそう。中一でこんなえっちな体をしているロルナレンが悪いんだし」

「ついつい見ちゃうよね……」

 ロルナレンが私に気を使って言ってくれると、ソシリアがからかうように、ミーナは苦笑を浮かべて庇護してくれた。

「あんたたちは、少し反省しなさい!」

 悪びれた様子のない二人に、ロルナレンが半目で睨んで言い放つが、二人はまったく悪びれた様子もなく、悪戯がばれた子供のような顔で口許に笑みを浮かべている。

 ロルナレンは、こりゃダメだと言わんばかりに肩を竦ませて小さく嘆息をした。

「それでシュリちゃん、私たちが戦場で使うエクシードを今日は見せてもらえるんでしょ?」

 気持ちの切り替えが早いのか、ロルナレンは私のほうを向いて今日の本題を切り出した。

「あ、はい。三人の試験結果に基づいて作られた、カスタム機ができ上がってるはずです」

「ああ、戦場に行くときは、確か武器だけじゃなくて全身を包むヤツになるんだよね?」

「私だけのカスタム機か……。ちょっと楽しみだね」

 私がロルナレンに答えると、ソシリアとミーナが楽しそうに便乗してきた。

 戦争の兵器を与えられるのは分かっているのだろうが、それでも、少しでも今を楽しもうとしているのだろう。私にはない強さを持つ三人が私には眩しかった。

「こっちです」

 私は三人の先頭に立って、学園内で軍隊が駐屯する区画に向かった。

 戦士を育てる学園が、敵軍に襲われないための防衛と、戦士に選ばれたものが装着するエクシードの整備、調整のため、学園内にも軍の基地と開発者の施設があるのだ。

 施設の一部が開放されていて、そこに美術館に飾られる鎧のように四つのエクシードが並べられていた。白、青、緑、黒の四色に塗料されていて、各個人に合わせてあるだけに形も違う。

「わぁ! これが私たちのエクシードなのね? 私のはどれ?」

 ミーナが瞳をきらきらと輝かせて、エクシードを食い入るように見つめながら聞いてきた。

「えっと、青ですね。ロルナレンが黒で、ソシリアが緑です」

「あれか!」

 私が答えると、ミーナとソシリアは小走りで、ロルナレンはその背中を見送ると微笑んで二人を見送ってから、ゆっくりとエクシードの元へ向かった。

「ねぇ、これもう着てみていいの?」

 ミーナが自分のエクシードを見て回って、待ちきれないのか大声で訊ねてきた。

「はい。大丈夫です。普通にアクセサリーやブーツのように身につけてください」

 私が声を掛けると、ミーナとソシリアは嬉しそうにエクシードの装着を始めた。

 私とロルナレンも自分のエクシードの元へ行くと、それぞれ同じように身につける。

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